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ペイン様の悩み多き日々 第26話

2016-10-16 14:29:06 | 日記



1999年11月24日

三人がお見舞いにきた。
「お!意外と元気そうじゃん!」
「ビックリしたよー、急なことで」
静もなんども頷いている。
「みんな、ごめん。迷惑かけて」
ベッドから体を起こして謝った。
「いやいや、取材とかはなんとかオレ達で盛り上げといたからさ、ゆっくり休め。オレもちょっとここで寝てこうかな!」
明が冗談を言った。四人で笑ったが、他のメンバーも体力の限界はとうに越えている。ちょっと休みたいというのは本音だろう。声は明るいが、顔は疲れきっている。

「お、そうだ!久納にいいお土産があるよ」
そういって遊がポケットから取り出したのは、フィナンシェの日本公演チケットだった。MJが言っていたのと同じ日だ。久納は素直に喜べず、
「あ、ありがとう」
と棒読みぎみに返事をした。

「どうだ?すごくね?やっぱ業界のコネっていいよなー。リクさんが、楽屋招待されるらしくてさ、勉強になるからって、俺達も入れるようにお願いしてくれたんだよ!ホント持つべきものは先輩だよなぁ」
明も嬉しそうだ。久納以外の三人は、改めてフィナンシェに会える喜びを語り合っている。せっかくのはからいなので、久納もチケットを受け取ったが、正直、気がすすまなかった。




1999年12月23日

「楽しい気分のときにごめんな。一つだけええか?ペドノンヌ」
リクがいつになく厳しい顔つきで言った。
「はい…。なんでしょう?」
「今日はガレットさんも来てはるんや」
「ガレットさんですか!」
「せや。あの人達は、協力やなくて、社長と戦いながらここまでアカシックレコードを大きくした人達や。そこだけは忘れんといてな」
「はい!」
タバコの煙をはいて、リクが呟いた。
「ペドノンヌは、おっとりしてて俺は好きや。けどな、CDが今みたいな勢いで売れる時代は、そう長くは続かんていわれとるわ」
「ええ!まさか。そんなこといってる人います??」
リクの表情は堅い。
「どういうところから揚げ足取られるかわからん。今一度、気を引き締めてな」
「はい」

すぐにガレットに挨拶しに行った。あの社長と張り合うだけあって、オーラの強い集団で、ペドノンヌ四人は、縮こまるより他なかった。その様子が横から見ていて可愛かったようで、リクは笑いをこらえていた。
ガレットとわかれ、会場に入るなり
「そないビビらんでもええやろ!」
とリクは笑った。
「だって!怖いですもん!」
「まあ最初はしゃーないな。せや、たぶんシメの曲は『リーズン』なんや。終わりまでステージ見たいやろうけど、『リーズン』が始まったら、またこの出口に集合してや」
「え!最後まで見ないんすか?」
「俺も見たいけどな、他のお客さんに巻き込まれてしまうからな」
「そうかぁ…」
「まぁ、その後の楽屋を楽しみにしといてや。じゃ、あとで」
「今日はありがとうございます!」
自分の席に向かうリクを四人は見送った。

スタジアムは五万人を動員した。男女比はほぼ半々。全盛期の活動を知らないと思われる若い世代も多い。音楽というのは、その時代だけでなく、受け継がれていくものだと、若い来場者の存在が教えてくれる。『芸術は長く人生は短し』ヒポクラテスの言葉。

ペドノンヌは仲良く四人並んで座った。三人の盛り上がりようは、すごかった。どんな衣装だとか、舞台装置はどうだとか、細かいことを色々と嬉しそうに話している。だが、久納にはピンとこない。

「ああヤッベー、俺トイレ行きたくなってきたぁ!」明はいつも以上に、落ち着きがない。
「ええ、今?もう始まるよ?」
「いや、でも今行っとかないと!」
明が立ち上がった瞬間に客電が落ちた。明は
「あちゃー!!」
と叫んだが、五万人の凄まじい歓声に掻き消された。はしゃぐ三人を、少し冷めた目で見ていた久納だが、こんなにもたくさんの人が待ち望んでいるライブとは、一体どんなものなのか、見届けたいと思った。

始まってしまえば、すっかり引き込まれ、我を忘れた。なるほど確かに、音もパフォーマンスも伝説と言われるに相応しかった。

アンコールの大合唱の間、ついさっきまで無口だった久納は、機関銃のように隣にいた静にフィナンシェの魅力を語り始めた。明は、そんな二人を突き飛ばす勢いでトイレに走る。あんなおかしな走り方して、周りの人達にペドノンヌだってバレたくないと、二人は心底思った。

アンコール前には、明はなんとか戻ってこれた。
「じゃ、第二回戦といこうか」
と、急に凛々しい顔になった。

アンコールのラストが『リーズン』だった。イントロが始まったとき、久納はリクとの約束をすっかり忘れて魅入っていた。静に肩を叩かれ、思い出す。
「見たい」
「ダメ!ビデオ出るからそれで見なさい」
「やだ!いま見たい!」
とタダをこねる久納。それを無理矢理引っ張って出口に連れていく三人。

出口で、苦笑いのリクに軽く叩かれた。
「見たいのはみんな同じやで」
五万人が巻き起こすうねりを感じながら、五人は会場を出た。スタッフ用の通路に案内され、フィナンシェの控室に向かった。このままいけば初対面のフィナンシェにも
「すごかったっすよー」
と明るく話しかけることができそうだった。しかし、それはできなかった。
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