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ペイン様の悩み多き日々 第16話

2016-10-16 13:59:36 | 日記



1999年8月27日

「しっかしラジオ出演てのはすごいもんだな。突然二社から連絡がくるなんて」
「まあ、一社はタレント事務所って感じだったけどね」
四人は歩きながら話している。
「タレント事務所でもなんでもさぁ、バンドが入ったことで会社の体制が大きく変わるとか、そういうのあるんじゃないの?それをさぁ…」
明は何かいいたげに久納を見た。
「なんスか?」
「お前はホント、気が短いよなぁ。
オレ達はタレントじゃありません失礼しますとか言って席立たれたら、オレ達だって立つしかねーじゃん」

「じゃあ、あの事務所にしとけばよかったって本気で思います?」
「オレがいいたいのは、これから行くアカシックレコードでもヘマやらかさないかってことだよ」
「オレは、ここも合わなければインディーズのままでいいと思いますもん」
「おいおい、サブレーの所属事務所だぞ?V系で食っていくなら、これ以上はないぞマジで」

久納は結局、メジャーへの切符を手にしたきっかけが、ラジオ出演だったことが気にくわないので、あれやこれやといちいち文句を言う。遊と静は、それがわかっているので、特別口出ししない。
「そんなの見てみなきゃわかんないっすよ。サブレーの後輩になったら、永遠にサブレーの弟分て世間から言われかねないっすよ」

「まあまあ、その辺にしておいて。もう着くよ」
遊がようやく口をはさんだ。

アカシックレコードは、こまっしゃくれタワーの上にオフィスがある。
四人は横に並んで、せーので一歩を踏み出した。
美人秘書が出迎えた。が、この秘書、ロングヘアーをかなりキツめに巻き、くっきりと谷間が見えるほど胸の開いたスーツを着ている。
手つきもいちいちいやらしく、口に出さねど四人の中でこの人のあだ名は「不二子」に決まった。
「あ・・・ペドノンヌの皆さん?」
「はい、おはようございます」
こういう挨拶でよいのかどうかも疑問になるような雰囲気。
「うふふ」
そういって久納にウインクした。
お色気の洗礼を受けて、立ちくらみ。
「奥へどうぞ。社長がおまちかねです」
じっと目を見据えられるので、そらすこともできず、何度も何度もペコペコしながら入室する。
100畳はあるかと思われるオフィスには、30人ほどのスタッフが忙しそうに働いている。
電話をとったり、パソコンに向かったり、普通の会社となんら違いはない。
「失礼します」
と四人が入っていくと、各々のタイムングで「こんにちは」と返してくれた。

奥の個室に案内され、
「社長、ペドノンヌの皆さんがお見えです」
といって秘書がドアを開ける。遊、明、静の順に中へ入り、最後の久納は、上目遣いの秘書の目線をやっぱり無視することができず、ずっと目を合わせたまま部屋に入っていったので入り口にあった背の高い観葉植物のプランターに足をぶつけた。
社長は一体どんな人だろうか?
これまた口に出さねど、社長のあだ名も決まった。「ジャバザハット」
おいしいものをたくさん食べて出来上がった見事なメタボ腹。何かを企んでいそうなタレ目。マフィアが好んで着そうな派手なストライプのスーツ。そして葉巻。
社長は
「おう」
とだけ言った。


こ・・・怖い。久納は思った。
「ペドノンヌです!はじめまして!」
先陣をきって一歩前に出た明。
「・・・・・・・」
社長の返事はない。この沈黙が耐えがたいほど恐ろしかった。もしもこの社長と契約を結んでしまったら、もう永遠に逆らえない。下手したら海に沈められるかも・・・
それくらいの迫力を持っていた。
「おう。指出せや」
「ええっ!!!?」
指?これが映画でよく見る“指をつめられる”というやつか?いきなりなんで!?
やっぱりヤクザの事務所なのか?もうヤダ!!帰ろう。お母さーん!!と叫びたくなったとき、秘書が久納の手をとって、朱肉をつけた。

「・・・へ?」
「社長、えらくお気に入りのようですね、ペドノンヌ」
秘書が微笑んだ。相変わらず社長は葉巻をふかしてるだけで、返事をしないのだが、秘書には社長の気持ちがわかるらしい。
どー考えても気に入られてるようには見えないので、久納たちはオロオロするしかなかった。
「あの、一応、僕がバンドの代表者なんですけど・・・」
明が勇気を出して言う。
久納は、注射器を見ないように顔をそむける子供のように、ガッシリと目を閉じていた。
目を開けてみると、自分の手の先には契約書があった。
話し合いうんぬんではなく、契約の権利はすべて向こうにあるといった雰囲気だった。
「あら、ごめんなさい。順番があるのね」
秘書は遊び終わったおもちゃのように無造作に久納の手を捨て、今度は明の腕に自分の手を這わせた。
拇印を押すだけのために、わざわざ秘書さんに手を添えてもらう必要はまったくない。本来ならば。
蛇が枝に絡みつくような、もったいつけた動き、これも意味はない。
だが、ツッコめる人間もまた、いない。

いちいち秘書に手を添えられて、一人ずつ拇印を押して、ここに契約が無事(?)終了した。
秘書が、今度は四台の携帯電話を持ってきた。
「お仕事用の携帯です。今日からこちらを使っていただきます。アカシックレコードから着信があった場合は、いなかる場合もとるようにして下さい」
四人は「いかなる場合も」というワードにひっかかり、あまり元気に返事できなかった。

退室の際も、扉が閉まる最後の最後まで秘書は無駄に胸をよせて、こちらを見ていた。
四人が、扉を静かに閉め、ほっと一息というとき、後ろから
「あ、もしかしてペドノンヌ?」
という声がした。
振り返るとサブレーの面々。
サブレーの弟分になるのはごめんだとか、さんざん偉そうなことを言っていた久納は
「ああ!ほんものだぁ!」
と、大興奮していた。
サブレーはみな微笑んだ。
「一応、今日から先輩だけど、そういう上下とか関係なく、楽しくやろうな!」
といって、握手してくれた。

社長があんなんだから、四人は不安で仕方なかったが、先輩たちの明るい表情に、一気に気持ちがほぐれた。
メンバーの中でも、ベースのリクは、とても初対面とは思えないほど気さくに話してきた。
「俺、音源きいたで。あれ、めっちゃよかった!!『情熱』」
「えー、聴いてくれたんすか!?マジでー!?」
久納が一番うれしそうだ。
「特に、イントロのベースがな・・・」
と、ベース話になったので、久納とリクがペアになって熱く語り始めた。
他のメンバー同士も、これからよろしくと挨拶した。
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