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ペイン様番外編 ーjokerー 第8話

2016-10-23 18:23:22 | 日記
ペイン様 番外編 ーjokerー8




 久納は静とカウンター席でコーヒーを飲んでいる。
静はブラック。
久納のはシュガー5本入り。
マスターのタケからは「コーヒーというよりほとんど砂糖水」と毎回言われている。
タケはペドノンヌ脱退後、喫茶店を開いた。
“ひだまり喫茶”という名前の通り窓が多く、開放感に溢れ、日の光がたくさん入るように設計されている。
ぬくもりのある木製のテーブル。
懐かしさを感じさせるアンティークチェアー。
丸っこいフォルムが可愛い こだわりの食器たち。
アースカラーで統一された安らぎの空間。
マスター タケのモヒカン頭。。。。だけは、何故かバンド時代のままである。

ペドノンヌというビッグバンドを経て、新しい人生に踏み出した三人の男たちがここに集結していることになる。




ペドノンヌのハロウィンイベントから一夜明け、久納がライブでの一悶着を彼らに語っているところであった。
「で?久納がアンコール前に用意したクジはどうなっちゃったんだ?」
「そうですよね。コウが箱の中に入れるのを確かに見たんだろ?久納」
ランチタイムが終了し、タケも二人の話に付き合う余裕ができていた。

「それが、箱の天井に両面テープくっ付けてたんすよ、コウは」
コーヒーが苦いのか、話が苦いのか、渋い表情の久納。
「両面テープ!そうか。
じゃあ、久納のクジが天井に付いたままとして、明さんに引かせたクジは?
普通に考えたら、ゴミ箱からまた出してきて箱に入れたってことになるよな?」
「コウがメンバー見てる前でゴミ箱なんて漁るわけないでしょ。」
「ん~?そんなら、コウはクジの中身も知らずにどうやって “メイド” を引かせたんだよ?超能力か?」
「俺がペンを持って袖に走ろうとした直前に、コウが捨てときますよって言ったクジ。それと投げ渡された箱。あれは両方とも既にすり替えられたものだったんです」
「ほう!なんと」
「ちなみに、捨てたクジは白紙で、捨てるっていうパフォーマンスを皆の前でしただけです。
コウは最後まで、書かれていたのが “メイド” だったことも知らなかったそうです」
「なんだ、なんだ?じゃあ、何時すり替えたんだ?」
「話を整理すると、仮に明さんの作ったボックスを箱Aとします。
で、俺は “カボチャ柄 リボン“ のクジを五曲目でトラブルが発生するより前に用意しました。これを、俺が箱Aに入れます。
その後、公演が一時ストップします」
「この時点ではまだ箱には何も起きてないよな?」
「そうです。この休憩時間に、タナダとコウの二人に “カボチャ柄 リボン” が箱Aに入っているのを確認してもらいます。
そして、メンバーがステージに戻って6曲目の準備が整ったところで、俺は控えに戻って、本当は引かせたい “メイド” を箱Aに入れ、“カボチャ柄 リボン” を抜きます」
「うんうん」
「そこから本編が終了するまで、俺はずっと袖にいました。
だから、不二子が控えに来て、こっそりと箱Aを箱Bと入れ替えるとしたら、この時間だと思われます」
「箱Bっていうのは、天井に両面テープが付いたやつね。
そしたら、共犯の不二子は当然、持ち去った方の箱Aに入ってるクジの中身を確認するわな」
「普通はそうするでしょう。でも、中身が何であるかをコウに報告する時間はなかったと思います。俺もアンコールまでは袖にべったり張り付いてましたから。
箱Bというのがクセモノです。不二子は、控え室に来て箱Bを持ってきたものの、クジは持ち出しません」
「んん?そうなのか?」
「箱Bを持ってくると、不二子は箱Aに入っていたクジを、Bの天井に貼り付けて、空になった箱Aのみを持ち去ります。
何も知らない人間が上から覗き見れば、箱Bは一枚だけ入っているように見えます。底に入ってるのは例の白紙。
本当は張り付いているもう一枚があるので、実はこの箱B、この時点では二枚入ってることになるんです。
そしてさっき言ったように、コウはアンコールの前、皆の前で底に入っていた一枚を捨てます」
「その後、“メイド” が天井に張り付いたまんまの 箱Bを久納に投げ渡すわけだな」
「はい。本人もこのあたりでバレるのを予測していたらしいですが、思いの外うまくいってしまったらしいです・・・」
「ぷっ・・・」
「笑うな!」
「はい・・・」タケは片手で口を押さえ、もう片方の手で「続けて」と促した。
「あとは、ステージの袖で俺から箱を奪って、俺の持っていたクジを箱Bの天井に貼り付け、逆にそれまで張り付いていた “メイド” を箱の底に落とした。
そしてそれを、ステージ上で明さんが引いたと。
そういうことです」
「へ~、コウって器用だな。そのクジの入れ替えを一瞬でやったんだろ?」
「感心してる場合ですか!」
「しかし、あれだな。アンコールの時に客席に走ったことでコウに怪しまれたと思ったけど。
不二子が箱をすり替えたタイミングから考えると、だいぶ早い段階から、何か仕掛けようとはしてたんだな、コウは」
「まぁ、そういうことになっちゃいますね。
まんまとハメられましたけど」

「なーんだ。アイツなかなか面白いことするなぁ」
「静ちゃんまで感心してどうすんの、俺は騙されたんだよ??」
俺たちの未発表曲まで欲しがって!
ああいうやつは、一回痛い目みないと!」
そう言ってレザーのバッグから大事な譜面を取り出した。
「俺たちの・・・これからが、これにかかってるかも知れないって時なんだから!・・・」
カウンターの上に広げた。

「・・・あ・・・」
「どうした?」
静が譜面を覗き込んだ。
「・・・これなんだ?『タナトス・ヒュプノス・ヒポクラテス』?」
「ええ?」
タケが逆さになっている譜面を手に取り、ひっくり返して見た。
「これ、俺の曲じゃん!なつかしーなオイ。
あれだろ?サロンパスがどうのって曲だろ?」
「自分の曲じゃないんですか?タケさん」
「ま・・・また騙されたー!!!!!!!!!」
「なんだって!?」
「わかったぞ!あいつの目的は明さんじゃなくて、こっちだったんだ!」
久納は立ち上がって頭を抱えた。
「俺の注意を会場内に向けさせて、その隙に譜面をすり替えたんだ!なんってやつだ、あんにゃろー!!」
突っ伏して落ち込む久納。
「待て待て久納。話がよく見えないぞ」
と静。

昨日のコウの言葉が久納の頭の中でリプレイさせる。
「注意を他へ逸らしておけば、すり替えるのなんて容易いのよ」
「欲しいと思ったものはなんでも手に入れますから」
どうも何か引っかかっていたが、これで繋がった。全ては己の野心のための演出だ。
関係者にプレゼントはマメに贈るくせに、目の前の妊婦には配慮しない。
ファンのためのイベントで「テキトーに理由つけて辞退」などという言葉が平気で出てくる。
慕っている素振りを見せながらも「オヤジさんは男の涙に弱い」などという。
つまりはボロが出たということだ。
思惑丸出しのそんな男を、このまま のさばらせていいものか。

では、ギターソロを作る暇がないほどの忙しさとは一体なんだ?



「おい・・・あれ」
タケが天吊のテレビを指した。
噂のコウが映っているではないか。
「アイツー!!!!」
ブラウン管に向かって敵意を丸出しにする久納。
「落ち着けって」
テロップには「人気バンド ペドノンヌ独立」の文字。
「独立?昨日ペドノンヌと一緒にいたんだろ?何も聞いてないのか、久納?」
強張った表情で思い切り首を横に振る久納。
コウの両脇には、遊と明。彼らの背後には金屏風まで。バブル期の結婚記者会見でも見ているようだ。

記者が問いかける。
「ペドノンヌだけが独立って、事務所と何かトラブルがあったということですか?」
コウがにこやかに答える。
「とんでもありません。むしろその逆です。」
するとコウは立ち上がった。記者たちからフラッシュが一斉に焚かれる。
「俺たちペドノンヌは、ファンの皆さん、応援してくれる家族、スタッフ、関係者の皆様に支えられ、ここまで大きくなりました。
本当にありがとうございます!」
コウは体を90度に畳んで頭を下げた。
事前の打ち合わせがなかったようで、コウを見て 遊と明も慌てて立ち上がって頭を下げた。
間の悪さにおかしみを感じさせられる。
十分に時間をとった後にコウは頭を上げる。目と鼻が赤い。
急に芝居がかった口調で語り始めた。
「そして、俺たちをここまで育ててくれたアカシックレコードの社長に、この場を借りてお礼を言いたいです。
オヤジさん・・・見てますか?」
鼻をすするコウ。涙が落ちないようにするためなのか、瞬きが多くなった。

久納は画面を見上げながら呆れた。
「なんじゃあ?ありゃ・・・」

コウは続ける。
「俺たちは・・・すぐお客さんと揉めて楽器投げたり、ラジオ番組の生放送中にDJと喧嘩したり、心配かけっぱなしの連中でした」
照れたように鼻の頭をこすって少し笑うコウ。
「それ、どっちも俺のことじゃねーか!」
テレビにツッコむ久納。

「でも、そんなどうしようもない俺たちを、オヤジさんはいつもかばってくれて・・・
公私ともに本当にお世話になりました。
・・・オヤジさんの話聞いてて、俺思ったんです。
俺も、オヤジさんのような男になりたいって!!
それが、きっと最高の恩返しになるって!」
強い決意に満ちた表情に、またフラッシュが焚かれる。
「・・・そのためには、大きな戦艦の中で守ってもらってる立場じゃなくて、小さな頼りない小舟でもいいから、自分たちで漕ぎ出そうと決めたんです!」


「昨日 オヤジさんは男の涙に弱いとか言ってたぞアイツ!
こんなキツネの猿芝居、誰が信用するかね!なぁ!?」
久納は振り返った。
まばらに店内にいる客の女性たちは皆、真剣にコウの話に食いついている。
「あ・・・あれ?」


「俺たちは!この場所から!自分たちの足で歩み始めます!!
どうぞこれからもペドノンヌを宜しくお願いします!!」
再びペドノンヌの面々は深々と頭を下げた。
次の瞬間、どこかで聴いたことのあるメロディーが流れた。

先に気づいたのは静だった。
「こ・・・これ!『僕に射す光』じゃないか!!」
「なにっっ!!??」
流石にバンドサウンドではなく歌も入ってなかったが、何度も何度も確認し頭の中で再生した曲だ、気づかないわけがない。



テレビの中のコウは、方々のカメラに向かって頭をペコペコ。
ペドノンヌの背後に不二子がツカツカと出てきた。
「独立記念シングル “僕に射す光”11.30発売」と書かれたポスターを持って。

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