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ペイン様の悩み多き日々 第7話

2016-10-16 12:47:00 | 日記
1999年4月1日

ちょっと気が向いて、またモヒカン頭をおがみにタケさんの店に寄った。
「こんちは」
「いらっしゃいませ!」
と出迎えたのは見なれないボブの似合う清純派の女の子。

「あれ?ここバイト雇ったんだ」
「はい、二日前から働いてます」
とハキハキと女の子は答えた。なかなか明るくてカワイイ子だなと思いながらカウンターについた。
「カフェ ラテお願いします」
「はい、かしこまりました」
と女の子がカウンターに入っていくと、タケが振り向いた。
「おう!いらっしゃい」
「どうも!タケさん、あの子名前は?」
「おい、さっそくうちの大事な看板娘に手つける気かよ」
「人聞きの悪い言い方しないで下さいよ!」
女の子は、そんなやりとりをニコニコしながらきいている。そしてカフェ ラテのカップのセッティングをしている。

「はい、お待たせしましたカフェ ラテです。私、かすみっていいます」
タケとの会話は全部きこえていたようだ。

「かすみちゃん。オレは久納桜っていいます」
とカウンターに軽く手をついてペコッと頭を下げた。女の子と話すのは決して得意ではないのだが、彼女の醸し出す明るい雰囲気で、すぐに打ち解けられた。久納自身、なぜこんなに自然に話せるのか不思議なくらいだ。タケが二人を見ながらニヤニヤしている。


かすみ目当てで通ってくるだろうというタケの勘は大当りした。次の日も
「ちーす!」
と開店早々に久納は入ってきた。
「おう、今日もうちの娘にちょっかい出しにきたか」
「ちょっと、なんてこというんすか」
ところがこの日、かすみは休みだった。
「…ちーす」
といってUターンして引き返していった久納。
「バカヤロー、ビンボーバンドマンめ!一杯くらい何か注文してけー!」
というタケの怒鳴り声をかわすように、すごすごと店をあとにする。


その次の日、かすみは出勤だった。
「いらっしゃいませ!」
前回とかわらない明るい笑顔で迎えてくれた。会うのは二回目だというのに、調子よく
「いつもの」
と注文する久納。だが、かすみは覚えていた。
「あ、カフェ ラテですか?かしこまりました」
これには久納も思わずニヤけた。そしてタケも振り返ってニヤけた。それに気づいて久納は真顔に戻った。

「はい、カフェ ラテです」
「ありがとう~」
かすみに話し掛けようとしたそのとき、五人組のサラリーマングループが入ってきて、奥に案内しに行ってしまった。かすみの、笑顔を絶やさず接客する姿に、ステキな子だな~とボーッと眺める。あんな明るい子が彼女だったら、きっと毎日楽しいに違いない。と、また妄想が始まった。

やはり店で彼女に話し掛けるのは、仕事のジャマになってしまう。そうだ!仕事帰りに話し掛けよう、その計画を思い付いた久納は、また自然とニヤけていた。それを見たタケもニヤけた。だが、タケの視線に全く気づかないほど自分の世界に入り込んでいる久納を見て、タケは真顔に戻った。


「かすみちゃん!」
仕事場から出てきた私服のかすみをつかまえた。清純派でありつつも、流行を取り入れた膝丈のスカートが似合っていた。
「久納君!待っててくれたの?」
「うん」
「そうなんだ、ありがとう!」
店の中と外で、かすみの態度がガラッと変わったらどうしようかと内心不安もあったが、かすみの笑顔は店の中も外も同じだった。裏表のないその性格が、ますます気に入った。

「久納君、私、家すごく近いんだ!よかったらうちでご飯食べていかない?」
思いもよらぬ誘いにビックリした。
「え!家!?」
おいおい、いきなりかい?いや、それはまずいっしょ。まだ正式に恋人同士でもないし…と思っているうちに
「行こう!」
とかすみは強引に腕を引っ張る。なんて積極的な子なんだろう。これほどまでに迷いのない行動、彼女の方も運命的なものを感じているのではないか。そうこうしているうちに彼女の家に着いた。

「我等にパンを与えて下さった主に感謝します。アーメン」
「アーメン」

長いテーブルを10人くらいの人が囲んでいる。一人、どう見てもホームレスだろっておじちゃんが混ざっている。老若男女問わず、入り混ざった不思議なメンツだ。

久納もなぜか席について一緒にアーメン言っている。
『最後の晩餐』を思い出した。イエスの弟子の名前とかはよく知らないけれど、髭とロン毛のホームレスのおじちゃんが、イエス的なムードを醸し出している。パンをかじりながら、おじちゃんをジーッと眺めていた久納に、ふいにかすみの父が話し掛けた。

「いやぁ、久納君といったかな?はじめまして、かすみの父です」
「ああ、はじめまして久納です。」
「久納君、主はね、いつだってあなたを見守ってくれているんですよ」
と笑いジワをつくって優し~~い声で話してくれる。
「あ、は、はい」
つい昨日スタジオで
「神などいねー!!ファッキンファッキン」
と四人で叫んだばかりだった。

「人はパンのみにて生きるにあらず。久納君、パンばっかり食べてないでサラダもおあがんなさい。なんつって!アーハッハッハッ」
と父は陽気に笑いはじめた。つられてかすみも
「いやだ、お父さんたら意味が違うでしょー、もう」
といって大笑いした。
久納はまっっったくそのノリについていけず、ナハナハ笑った。

「いやぁ、久納君。うちのかすみはね、困ってる人や寂しい人を見ると、すぐうちに連れ帰ってくるんだよ。
そしてこうやって楽しい食卓を囲んでいるんだけどね。若い男の子を連れてきたのは初めてでね。見た感じ、困ってる風でもないし…もしかして、かすみと共に神に仕えていきたいっていう考えかな?ハハハ!」

「え!神に仕える!?」

「もう、お父さんたら!ごめんね、久納君。うちの父は私を絶対に牧師夫人にするってきかないのよ。お父さん、私の心は、ずっとイエス様のものだっていってるでしょ」

ショックで久納は泣きそうになった。かすみの笑顔や優しさは、男女の愛でなく、無償の人間愛だったのだ。だから久納も、女の子相手なのに緊張せずに話せたのだろうか。

「お父さん、久納君はね、お世話になったタケさんのために、お金がないのに毎日お店に通って下さっている大変義理堅い方なのよ」
えっ!違うし!とも言えない空気だった。

「なんと!それは素晴らしい!ああ神よ…あなたはこの青年を通して、私達に愛を教えて下さっているのですね。アーメン」
指を組んで、親子は祈りのポーズ。

ナハナハでもいいから笑うしかねー。最後の晩餐が終わると、うちひしがれた久納は、早足で家路を急いだ。この悲しみを遊にわかってもらおうと、玄関のドアを開けると雑に靴を脱ぎ捨て、「もー、ちょっときいて下さいよー!」
と遊の部屋のドアを乱暴にあける。


「Oh!ジーザス!」
本日のお客様はボンキューボンのブロンドギャル。
「こっちが“ジーザス”言いたいわー!!」
部屋を飛び出していつものコース。
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