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ペイン様の悩み多き日々 第4話

2016-10-16 12:42:35 | 日記
1998年12月4日

ペドノンヌは、都内にある複数のライブハウスに出演するが、中でもライブハウスYOKOSHIMAは、店のスタッフさんと仲がいいので、すっかり馴染みの出演者になっていた。

「この日はメンツが足りないから出てくれよ」と頼まれることもある。だが、ビジュアルのイベントばかりがあるわけではない。出演してみたら“初心者歓迎!高校生コピーバンド大会”で、浮きまくってしまい 「波さん騙したでしょー!オレたちのこと!」 なんて、つめよることもしばしば。

そんなとき波さんは決まって「違うよ!お前達はビジュアル系というジャンルを越えて評価されるやつらだって思うから、あえて他ジャンルにも誘ってんだよ!」などと、言い訳にもならないことをいう。

しかし、ピュアな久納などは、すっかりその言葉を信じて「そこまでいうなら、今日はさらに気合い入れるぞ!」と意気込んでしまう。そんな日に限って、化粧のケの字もない汗くさいイベントで、怖いお兄さんたちが客席の前列を固めていたりする。

突然客席からコーラの瓶が投げられたことがあった。それを遊はマトリックスのように優雅によけて、真後にいた明に直撃した。などという話も、このライブハウスでの語り種になっている。その後、明は反撃することもできずにひっくり返って悶えたが、ベースをコーラの兄ちゃんに投げ付けて反撃するやつがいた。久納だった。

あとはもう、客席もステージも関係なくもみくちゃになった。真冬のYOKOSHIMAの前で、ペドノンヌ四人並んで正座をさせられたとか。

誰になんと言われようと「オレは悪くない。何も悪いことなんてしてない!」と言い張って仏頂面していた久納。だが、たった一言、普段は無口で全く言葉を発することのない静が、「楽器は投げるためのもんじゃない」と言ったのにはグサリときた。

そのあとは静かに正座していた。店に迷惑をかけたのは自分なのに、他の三人も一緒にここにいてくれるありがたさに初めて気づいた。

お向かいのコンビニから出てくる人達が、いぶかしげに彼等を見て去っていく。コンビニの自動ドアが開く度に中からきこえてくるのは、アイドルユニット“チェリーキス”の『抱きしめてクリスマスナイト』だった。



二日後の練習で

「どうした?久納」
「妹さんのことでしょ?杏雅(あんが)ちゃんだっけ?」
「…はい」久納は元気なく答える。
「なんだなんだ、それくらいのことで」
「何をお願いされたんだっけ?」
「たまきちゃんに会いたいって」
「もしかしてアイドルのチェリーキスの?」
「はい。なんか最近、抱き上げてもチューしてくれなくなって…」
「あら~、ラブラブだったのね。ちょうど自我が芽生え始める頃だから、色々主張もするかもね」
「自我が芽生えたっていうならいいんですけど、なんか、怒りっぽくて。どこ行くの?なんで昨日遅かったの?って、実家に帰ればそんな調子で…。杏雅をおぶりながらハードロックばっかり聴かせてたのが、まさか影響してる!?」

「考えすぎだろ!妹っつーか嫁じゃん、それ」明は笑ったが、遊は
「できるだけ長い時間、一緒にいたいんでしょうね。彼女なりの表現なんだよきっと」と、同情の眼差し。

「女の子って、あんな小さいうちから、難しいもんなんですね。」ため息をつく久納。
「久納ちゃんは女を知らないからね」ケケケと明がからかう。
「そこはほっといて下さいよ!!」
「あら?久納ちゃんまだだったの?」遊の慈愛に満ちた顔の方が、なぜか明の言葉より傷付く。

「一昨日、杏雅のダンスを見てあげる約束だったけど、あんなこともあったし、実家に帰るの遅くなっちゃって。たまきちゃんに会わせてくれたら許してあげるって」
「完全に杏雅はお前の弱点だな。会わせてやりゃいいじゃん!」
「どうやって?」
「オレ達プロになるんだからさ、いつかは会えるに決まってんじゃん!」
明は本当にそういうことをあっさり言うやつだ。


「オレはチェリーキスだったら、たまきちゃんより、れおなちゃんの方が好みかな…」と、遊が遠い目をしている。遊がこう言うと、本当にれおなちゃんがこの男の手に落ちそうな気がするからすごい。

「遊さんてスゴイっすよね!どうしたらそんなにモテるんすか?」早く彼女の一人でもほしい久納は切実だ。

「遊にそれをきくかね」明はすかさずつっこむ。呼吸をするように自然に新しい女性が次から次へと現れる遊に、極意なんてあってたまるかといいたげ。

遊は静かに微笑んで言った。「僕の好きな本にこんな言葉があって…この世の全ての女性が自分のものだと思えば、何も不自由に感じることはない…と」

「マ・ジ・ひ・く・わー!どんな本読んでんだよ!」と明は大爆笑。久納はメモをとらんばかりに熱心にきいている。
「久納ちゃん、君のほしい女性はすでに、君の手の中にいる」 遊先生から指南のお言葉。
「まじっすか!?うっそー!!」

生まれつきモテる男と、生まれつき女心のわからない男は、このまま平行線をたどって、互いの気持ちなんて永遠にわからないんじゃないだろうか…と、明と静は仏のように目を細めて見守った。


「久納ってさ、例えばチェリーキスのメンバーだったら、どの子が好みなんだよ?」
「えー、かれんちゃんもカワイイし、のんちゃんも好きだなぁ」
「お前ロリ系好きなんじゃね?AVとかも妹系とか幼妻系ばっかり借りて、ビデオ屋に顔覚えられてそー!」 といってまた明大爆笑。つられて遊と静も笑った。

「なんでそこで爆笑なんだよ!いいじゃん幼顔っ!」
「そんじゃあさ、逆に幼顔なら、結構年いっててもいいの?」遊がのってきた。
「そりゃあ…まぁ確かにそうかも…」
「じゃあ、こないだの飲み屋の女は!?久納が服汚した人!!」
「っっはぁ!!?」
「あー、今なんか反応よすぎたよね?」遊もなぜか嬉しそう。
「お前あの女タイプなんだろ!?」
「ちげーよ!!」
「うそつけコノヤロー、そうかそうか、あの人か」
どれだけ否定しても余計冷やかされるので抵抗をやめた。なんで顔が幼いというだけでタイプだとかいわれなきゃいけないのか…


でも待てよ。オレ実はあの人のこと…?いやいや!!そんなことはありえない。そんな久納がいた。
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