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ペイン様の悩み多き日々 第30話

2016-10-16 15:02:35 | 日記



「またアイツか!?」
もう二度と来れないようにキツめにいってやろう。包まっていた毛布を跳ね退けて玄関まで行き、勢いよくドアを開け
「いいかげんにしろよ!」
と怒鳴った。

するとそこには、目を丸くしたMJが。
「あ…」
「ご…ごめん。なんか大変だろうと思って来てみたんだけど」
「す…すいません。オレ、てっきり嫌がらせだと思って」
「ううん、アポなしで来た私が悪いから、気にしないで。プリン、持ってきた」
「え、すいません。気、遣ってもらって」
「ううん。ちょっと、外出ない?」
「オレ…外出たら騒ぎになりますよ」
「大丈夫だよ。帽子とサングラス持ってきた」
そう言って、目つきメガネと目だし帽を差し出した。彼女なりのユーモアだろうか。

「………ぜんっぜん、笑えませんけど」
「ごめんなさい、調子に乗りました」


MJがタクシーをつかまえ、個室の居酒屋へ入った。リョージとあのあとどうなったのか、気になってはいたが、きけないままだった。
「ここなら、誰の目も気にしなくていいでしょ?」
「…こういう所に出てくるのは久しぶりで…」
久納は少し、オドオドした様子。

「堂々としてればいいのよ。あなたは何も悪いことしてないんだから」
「……」
「あ、ごめん。別に静君の悪口いってるわけじゃないのよ?」
「……オレ」
「なに?」
「高校のときからずっと一緒だったのに、何も気づいてあげられなかったんです」
「うん。静君は、なんていってるの?」
「……ムリしてくっついてるヤツがいたら、足を引っ張るからって」
「うん、それで?」
「オレらには言えなかったけど、もうずっと前からムリしてたみたいです」
「うん。それで?」
「それでって…それだけです。それ以上に詳しいことはきけなかったです」
「うーん。…でも、一番大事な所はハッキリしたよね」
「え」
「静君はもうムリだって自分で判断してるんでしょ。じゃあ、もう次のギタリストを探すことにエネルギー注いでいかなきゃね」

MJの言い方に、久納は腹が立った。
「あの…MJさんはバンドやってないからわかんないかもしれないですけど、そんな簡単なもんじゃないですよ。“ダメならすぐ切り捨てる”みたいな言い方ですよね」

「バンドだろうとなんだろうと一緒でしょ」
「は?」
「逆に私がききたいよ。静君は、大麻に頼らなきゃいけないほど追い詰められてて、それに気づけなかったと。でもそこで、あなたがクヨクヨしてることで何が変わるの?
静君の罪が消えるの?ファンが喜ぶの?
起きてしまったことは仕方ないんだから、これからファンのために何ができるかじゃない?
そういう意味じゃ、バンドもアイドルも違いはないって言いたいのよ」

反発したくなった。だか、反論する言葉を知らない久納は、結局、感情に走ることになった。
「おっしゃってることはわかります!でも、人生で1番幸せのあなたと、どん底のオレでは、状況が違いすぎます。お互いここで、どんなに話したところで、わかり合える気がしない!」
立ち上がった。

「なに?幸せって。なんでそんなこと言い切れるの?」
「……フィナンシェのリョージさんと…いい感じなんでしょ?」
「え?」
「オレは大人じゃないし、強くもないんです!」
捨て台詞を吐いて、久納は個室を出た。

店を出た瞬間、カメラマンと目が合った。どこかの週刊誌だろうか。カメラマンを睨み付けて、久納は歩き始めた。
後ろから
「ちょっと待って!」
とMJの声がした。店の外まで追いかけてきたようだが、久納はそのまま歩みを止めなかった。

「あたしリョージさんとは別になんでもないんだけど!?」
久納は振り返らず、その場で立ち止まった。
「何が言いたいか知らないけど、私15年も前にフラれて、今はただの後輩ですけど!?」

MJもいつになく感情的になっている。ツカツカと歩み寄って、久納の正面に回り込んだ。

「彼のことだけ考えて、彼に会うためにこの道以外は全部捨てて、それでフラれた気持ちなんて、そりゃ、わかんないわよね。私だって強くなんかないわよ!」

この様子を見ていたカメラマンは、近づいてきた。
「お二人って、どーいう関係?もしかして…」
とカメラを構えたまま話しかけてきた。

突然、MJは久納の胸倉を掴んだ。殴られると思った久納は、とっさに目を閉じた。飛んできたのは、拳ではなくキスだった。

あまりの出来事に、久納は目を開けてしまった。信じられないほど近いところにMJの顔がある。

カメラマンはここぞとばかりにシャッターを押しまくる。久納は固まって動けない。写真を撮るには充分過ぎる時間を与えた。周囲の人も、立ち止まってこちらを見はじめた。

やっと二人の唇が離れたが、カメラマンはボー然と立ち尽くしていた。
MJは
「こーいう関係!どう?ご満足!?撮ったならさっさと現像しに行きなさいよ!」
と一喝。カメラマンは逃げるようにその場を走り去った。
周囲の人達は、何事もなかったかのようにまた、歩きはじめた。

久納はまだ動けない。MJは下を向いていた。
「あなたは、バッシングに形があると思ってる。
今撮られた写真も、あちこちで人の目に触れる。でも、その次の日にはみんな忘れてるわ。
努力したことだって、泡になって、全て投げ出したくなることもある。だけどそれも、一瞬のことなのよ」
それだけ言い残し、コートを翻して行ってしまった。
久納はしばらくボー然とした。
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