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ペイン様の悩み多き日々 第36話

2016-10-16 15:19:55 | 日記



2000年7月16日

久納は怒るとベラベラと喋り続けるタイプだが、コウは怒るとムッツリして黙るタイプのようだ。
タナダの運転するハイエースに乗って移動中、コウはずーっと黙っている

助手席に遊、一つ後ろの座席に、右から明・コウ・久納の順に座っている。そして、さらにもう一つ後ろの席に、三上という男が、撮影機材と一緒に乗っている。
三上は、数日前から同行しているドキュメンタリー番組のスタッフだ。これまでも何度か顔を合わせているのだが、彼がカメラマンだということを、メンバー全員、今回はじめてわかったという不思議な男。


「コウ…、これから楽しい場所に行くってときに、そのテンションでいいの?」
遊が優しく話し掛けたが、返事をしない。この日、ペドノンヌは、シングル100万枚突破のご褒美に、社長に“おねーちゃんのいるお店”に連れてってもらえることになった。

「三上さん。さすがに、ここからは撮影しないですよね?」
明が尋ねる。
「え?一応、お店の許可がもらえたら、カメラまわすつもりだけど」
「え!ちょっとカンベンして下さいよ~、今日は仕事と違いますから!」
「え~?面白い画が撮れるかと思ったんだけどなぁ」
「ダメダメ絶対!お願いしますよ!」
「はーい」
三上は、しぶしぶカメラをしまおうとした。車は交差点で信号待ちの状態になった。

そのとき、黙っていたコウが、急に思い立ったかのように
「ペインさん!あそこにあるプリン屋さん、激ウマなんすよ!」
と話し掛けた。
「え?なんだよ急に。プリン屋~?どこにあるんだよ?」
と、窓から覗き込むが、それらしいものはない。
「いいから見て来て下さいよ!」
と、強引に扉を開け、蹴飛ばすように久納を車外へ追い出した。
「三上さん、カメラ回して!」
「え?ああ!」
三上も、突然のコウの指示に戸惑いつつも、カメラを回した。

車の外には、なんと修学旅行中の中学生たちが、見渡す限りいた。コウは、久納を閉め出して窓を開け
「ペドノンヌ、ペイン様が、15分限定のゲリラサイン会でーす!みんな急いで集まれー!!」
と叫んだ。

「なっ!!!まずいよ!それ!中に入れろって!」
車外から久納が取っ手を握ったが、中からカギをかけられた。
「コウ!お前、バカ!開けろって!」
窓を叩いたが、コウは久納に向かって、舌を出した。

そうこうしている間に、女子中学生達が、黄色い声と共に、一気に押し寄せてくる。取り囲まれた久納。交差点は騒然。コウは車内でひっくり返って大爆笑。

明と遊は「コラ!!」
と言ったものの、だんだん“サインハイ”になってきた久納を見て、ちょっと笑ってしまった。久納には、サイン20枚も書くと、だんだん楽しくなってくる習性があった。

すだれハゲの中年教師が、恥ずかしそうに握手を求めてきたとき、久納が肩を抱き寄せてあげると、箸が転んでもおかしい中学生たちは、四クラスまとめてドンと、大爆笑の嵐。

タナダだけは、冷や汗を拭って、
「ど、どうしよう?どうしよう?」
と呟いていた。


時間が来ると、久納を三人で引っ張り戻して車はその場を去った。
「あー、スカッとした」
とさわやかなコウに対して
「ふざけんな!」
と、久納。明と遊も
「コウ、ホントお前は手に負えんやっちゃなぁ」
「怒られたばかりで、よくあんな大胆なことするよ。どうしたもんかホントに…」
と困り果てた様子。

「ところでお前さ、なんでリクさんに怒られたの?」
明の問いにしらばっくれて答えるコウ。
「別に~。怒られてなんかいませんけどぉ」
「嘘つけ!こいつ、ガレットさん達が目の前横切ってるのに、ゲームやってて気づきもしなかったらしいんすよ!」
久納がすかさず告げ口した。
「…えー、それはちょっと…」
明と遊は、ちょっとひいていた。
「ムカつくぜ、リクのヤツ!先輩風吹かせやがって!」
コウが生意気な発言をするので、三人一斉にコウをポカリと殴った。
「いてっ!!」

頭をおさえながら、さらにコウは続ける。
「いまどき縦社会?そんなのスマートじゃないぜ!ファニーじゃないぜ!BADだぜ!」
結局、また三方向から同時に殴られた。
「素直に非を認めなさい」
「お前がちゃんとしてれば、リクさんだって怒らないの!」
「BADはお前だ!」

久納は、もっとコウを責めていい立場だったが、それ以上は言わなかった。コウがゲーム中、ガレットとリク達がそこを通り過ぎた問題の時間、久納はトイレにいた。
外からリクの声が聞こえたので、慌てて出てくると、コウがリクに叱られていた。教育係の久納も、叱られた。

「気を緩めるなと言ったはずだ、ペドノンヌ」
なぜかいつもは関西弁のリクに、東京弁で怒られたのが、余計恐ろしかった。静の事件で、事務所を巻き込んで大迷惑をかけた上に、このていたらく。久納もペドノンヌ代表として情けなかった。

叱られている間、コウの足が、小刻みに震えているのを久納は見逃さなかった。
口では、あーだこーだと言っているが、かなりこたえているに違いない。
現に、いつもテンション高めのコウを、移動中ずっと黙らせるほどの威力を、リクのお説教は持っていた。
「オレも、もう少しコウに厳しくしていかなきゃ」と思うのだが、すでに振り回されている。

すっかり機嫌のよくなったコウは
「オレ、おねーちゃんのいる店って初めてなんすけど」
と楽しそうに話しはじめた。
「俺も」
「俺も」
「え、みんな?」
「みんな初めてなんすか?」
「だってさー、バンドマンて金ないから、そういう遊びできないじゃん」
「ペドノンヌなら、もうそれくらい、とっくに稼いでるでしょ?」
「いやいや甘いよ、コウ君。まともに生活できるようになったのだって、まだつい最近の話だよ」
「そーなんだー。
でも、遊さん絶対お店でもモテモテですよね!」
「そんなことないよー」
「意外と久納とか、人気ありそうじゃん」
「またまたー!」
などとお互いを冷やかし合った。
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