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ペイン様の悩み多き日々 第25話

2016-10-16 14:28:18 | 日記



杏雅がいなくなると、また不安が襲ってきた。こんなところでじっとしていていいのだろうか。
きっと会社やみんなも、自分がいないことで大変なのではないだろうか?
やはり今は、こんなところで休んでいる場合ではない。
体を起こすと、今度は気分の悪さもなかった。スリッパを履いて、ナースステーションを探した。
すでに日は落ちていて、廊下も非常灯しかついていない。夜の病院は独特の恐ろしさがある。手摺りにつかまり、一歩ずつそーっとそーっと歩き始めた。

そこで突然
「どうされましたか?」
と声をかけられ
「ひ------!!!」
と恥ずかしい悲鳴をあげてしまった。振り向くと懐中電灯で自分の顔を照らした太ったナース。

「ほぉっ!!!」
心臓をおさえてて久納は壁にもたれかかった。
ナースは懐中電灯を下に下げ
「もう消灯時間過ぎてるんでお静かにお願いしますね」
と注意してきた。
あんたがおどかすからだろうよ!とツッコミを入れようとしたとき、なぜかナースに懐かしさのようなものを感じた。だが、なぜかはわからずにいた。

「おトイレですか?」
「い…いえ」
「じゃあ部屋に戻りましょうね」
と、ガタイのいいナースは、久納の襟首を子猫のように掴んで、病室にほうり込んだ。

「ごふっ」
布団に頭から突っ込んだ。しかしすぐに起き上がり
「ちょっと!」
と声をかけた。
「なんです?」
「僕、ここで休んでる暇ないんです。今すぐ退院しますので」
久納はベッドの上に正座していた。
「…フッ。馬鹿なことを…」
ナースは嘲笑って去っていった。


なんじゃありゃあ!?キャラ濃すぎだろ、あのナース。などとツッコんでいる暇に、退院の手段を考えねばならない。
正面から頼んでも、ここを出してはくれないようなので、これはもう…脱走しかない!?

病室の窓から下を見下ろす。四階だった。飛び降りたら怪我をするが、何かにつたって降りれば、いけそうだ。
ちょっと怖いけれどこれしかない。窓の下に雨樋がある。そっと足をかけた。幸い、誰も脱走に気づく様子はない。
そーっと一歩、また一歩と、ゆっくりおりていく。徐々にに地面が近くなり、よし着地!と思った瞬間、足がフワリと浮いた。

「はいゲットー!」
さきほどのガタイのいいナースが、いつの間にか先まわりし、またしても久納の襟首をつかまえていた。
「え------!!いつの間に!?」
目が飛び出すほど驚く久納。このナース、ただ者ではない。

「はい、風邪ひきますからねー。中に入りますよー」
襟を掴んだまま院内に入り、エレベーターに乗って再び病室にポイッとほうり込まれた。

こうなりゃ強行突破だ。ナースの順路と反対方向へ裸足で猛ダッシュ!
しかし、どこから取り出したのか、ナースは投げ縄を振り回して、見事久納の首をとらえた。
「うぐっ!!」
そのままグイッと縄を引き、
「はい、無駄な抵抗しないのねー」
といってまた病室にほうり込まれた。
「あんた本気で首絞まったぞ!殺す気か!」
と文句を言おうとしたが、口にタオルを押し込まれた。
「消灯時間過ぎてますので、お静かにお願いしますねー」
そういって去っていこうとした。
「看護婦さん!」
タオルを抜いて話しかけた。ナースは振り返る。
やはり、以前どころかで会ったことがある。

「…なんですか?」
「あの…どこかで会ったことありませんか?」
するとナースは、これまでとは全く違った、落ち着いたトーンで話し始めた。
「…私だけじゃなく、たくさんの人が、あなたの回復を待ってるんです。一体どれだけの人が、あなたたちの曲やライブを楽しみにしてると思ってるんですか?」

そういわれて、やっとのことで思い出した。静の前でいつもライブをみているヤマンバメイクのファンだ。

「あ!」
と声が出たが、ナースは続けた。
「今ここで、体をつぶすなんてことしないで、きっちり治してから出ていって下さい」
ナースに怒りを爆発させるはずが、逆に諭されてしまった。
「はい、わかったらさっさと寝る!」
そういって、頭を枕にぶつけるようにこずかれた。静ちゃん相手だったら、絶対こんな雑な扱いしないはずだと、小さく文句を言った。


後できいた話だが、久納が体を休めるのに邪魔になりそうな人間は、このナースが全て独断で追い返していたという。

彼女の気持ちをわかっていなかったと、よせばいいのに久納は、退院後、ナースの連絡先を突き止めようとした。
「ねぇ、タナダ」
「はい」
「ファンクラブに酒井さんて人いるでしょ。その人さぁ…」
「…え…」
「なに?その顔は?」
「いくら寂しいからってファンに手出そうなんて、事務所は絶対許しません!!」
「ちげーよバカッ!!!」

アーティストの送迎もまともにできないタナダにものを言われて頭にきて、結局わからずじまいだった。
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