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ペイン様の悩み多き日々 第34話

2016-10-16 15:18:20 | 日記



2000年5月20日

「おー、これは!キタなぁ!!」
「ドーモっすー!」
キツネ目の青年コウは、晴れてペドノンヌの前でギターをお披露目することができた。
「事務所から紹介された、どの人よりもいいよ。存在感が違う」
「お前、こんなギタリスト、どこで見つけてきたんだよ?」
「え!それは…うーん…その…」
久納がうろたえていると、コウが代わりに
「それは…」
と説明しようとしたので、久納が口をおさえて阻止した。
「まぁ、色々ね」
目で訴えると
「そうっす。色々っす」
と、空気を読んで答えた。

こうしてコウは、ペドノンヌの正式なメンバーに加わった。しかし、このコウという男、歌番組に出れば、女という女すべてにアドレスを聞いてまわり、ちょっと目を離すと、そのへんにあるものをつまみ食いする問題児だった。

メンバーに引き合わせた責任感から、久納が正していこうとするが、全くいうことをきかない。

夏の特番収録で、大ベテランのロック歌手“キバラシ☆龍星”が、本番前に必ず飲むというミルミルを、コウが勝手に飲んでしまい、後で謝りに行ったのも久納だった。

「もー、ホントにアイツは!!」
久納がイライラしていると、明と遊はニコニコしている。

「ちょっと!二人からもアイツになんか言ってやって下さいよ!!」
「あれぐらいが、元気があっていいじゃない」
「いい弟分ができたって感じだな!」
といって、コウを受け入れている。


コウには、アイデアマンという面もあった。加入してすぐの段階から、
「ゲリラライブしよう」
「これからの衣装は引き算っすよ。露出を必ずどこかでしないと」
などなど、どこかで聞いたようなアイデアもたくさんあるが、とにかくめげずに、新しいことを、どんどん提案してくる。
その遠慮のなさが、三人には嬉しくもあった。

これまでペドノンヌは、音作りに関して言い合うことはあっても、プロモーションの仕方で、言い合う場面などはなかった。

ペドノンヌは、この業界の中でも、おっとりした集団といわれていた。
プロデューサーと対立するタイプでもないのだが、事務所の伝統的にセルフプロデュースが当たり前になっていたので、ペドノンヌも、わからないなりに自分達を売り出してきた。そして、事務所から具体的な指示があったからといって、そこでぶつかることもなかった。

だが、ここへ来て、コウの出現で変化した。
「この曲は、このタイミングで出すべきじゃない。カップリングに入れるくらいなら、カップリングなんて、なくていい」
などなど、思ったことは誰が相手だろうとズバズバいうので、事務所と意見が対立することも。

そんなときは決まって
「成功したガレットにしても、サブレーにしても、たまたまアカシックレコードと相性がよかっただけ。ペドノンヌは、やり方次第で、もっと上を狙える。ずっと、こういう状況が続くくらいなら、俺は自分で会社を立ち上げる」
とまで、コウは言う。

そして、ペドノンヌのメンバー三人で、それをなだめる。事務所あっての…という発想は、コウにはまるでない。そういうところも、教育係の久納としては、ヒヤヒヤものだった。

コウはペドノンヌを愛している。だが、それだけではなく、外から見てきただけあって、客観的な見方もできるので、妙に説得力があった。

無邪気なだけの子供に見えたコウだが、実は、純粋に音作りだけに没頭してきた自分達の方が、子供だったのかもしれないと、教えられることもあった。


ヒールを演じろという抽象的な指示で、困惑してしまうようなペドノンヌも、コウが入ってからは
「じゃあ、こういう演出をしてみたらどうか?」
と、具体的なアイデアが、メンバーの中から生まれるようになった。

遊や明は、面白がって受け入れることが多いが、久納にとっては受け入れがたいアイデアも多かった。


「俺達は芸人じゃないんだ!」
「なんの話っスか?」
遊と明は、ラジオでのコウのトークにバカウケだった。久納は一人、ムキになって怒っている。
「あのDJさぁ、コウがムチャぶりされても、何でもやるヤツだって、すぐに見抜いてたよなぁ!アハハ」
明は今日も大爆笑。
「アニメのモノマネしてくださいなんてリクエスト、まず来るとは思ってなかったよね。あ~、お腹痛い…」
遊も涙を出して笑っている。
「あれやって!」
「アンソニーって叫ぶやつっすか?」
「違う違う、ギャルのパンティおーくれ!」
明が、番組終了後も、まだコウにふざけさせているので、
「いいかげんにして下さい、明さんも!」
と久納が怒った。
「何怒ってんだよ~。あれは?あれ!薬師丸ぴろこ!」
「チャン・リン…」
シャンを聞き終わる前に久納は部屋を出た。


面白くないのは久納だけ。静なら自分の苦労をわかってくれるかもしれないと、面会に行ったとき、ひたすらコウの愚痴を静にぶちまけた。
すると静は、いきなり
「アーハッハッハッ」
と笑い出した。
「ちょっ…静ちゃん?なんで笑うの?」
「ひぃ…ひぃ…。すげぇじゃんそいつ。今までペドノンヌを振り回すのは、お前だったのに、今じゃ、お前が振り回されてんだ?くくく」
「静ちゃん…」
「そいつ、きっとペドノンヌを、もっとデカくしてくれるよ」

コウには腹が立つのだが、ずっと暗い顔しか見せてくれなかった静が、大声で笑った。それが久納には嬉しかった。

それにしても、明日は雑誌の取材か。あー、アイツまた何をしでかすやら…。
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