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ペイン様の悩み多き日々 第12話

2016-10-16 13:55:21 | 日記
12


建物の角に位置するスタジオは、窓からの見晴らしもよかった。四人は二人ずつ向かい合って座り、お誕生日席のような位置に、きんちゃんは座るらしい。

四人が席につき、ほどなく、ドアの向こうからさっきのアシスタントの声で
「きんちゃん入りまーす」と聞こえた。

四人が立ち上がると、そこへ入ってきたのは、どこかで見たことのある大男。居酒屋のみならず、今朝も電車でもめたばっかりのあの大男だった。

「はぁー!!!?」
久納が大声をあげる。
「お前…」
大男…いや、大男改め、きんちゃんの方は、驚きのあまり逆に小声だった。静、明、遊の三人は
「どうしよう?」とでもいうように目で会話した。

しかし、きんちゃんは流石プロ。すぐに気持ちを入れ換え、しかしそれでも腹に一物抱えた様子で
「今日はよろしくお願いします」
と、ややわざとらしく言った。
三人は、あまり揃わない声で
「お願いします」
といった。

久納だけは相変わらず口をきかず、男を見上げている。するときんちゃんは、ずずいと久納に歩み寄って
「…何か?」
と威圧した。体の小さい久納は、目線の高さが違うので、きんちゃんの胸あたりを睨み付けて
「いいえ、別に」
と返した。

「距離近い!近い!」
と、久納と同じ窓際席の明が、久納を引っ張った。

「間もなく本番でーす」
というアシスタントの声。五人は一度、席に着いた。

アシスタントがガラス越しに3・2・1と指で合図する。
「はいどうもー、本日もやってまいりました、きんちゃんのごきげんラジオ。みなさんいかがお過ごしですか?
今日はな・ん・と、人気急上昇中のビジュアル系ロックバンド、ペドノンヌのメンバーが来てくれています!」
慣れた口調で、流暢に話すきんちゃんの低音に、四人は思わず聞き惚れた。そして三人は、少しぎこちなく
「よろしくお願いします」
と頭をペコッと下げる。

久納は、きんちゃんがしゃべり終わるまでは、しゃべりに引き込まれていたくせに、しゃべり終わると同時にケッと我に返ってよそ見をし、仕方なさそうに頭を下げた。

そして、その様子をきんちゃんは凝視している。あー、頼むから本番中くらいは、しおらしくしててくれよと、明は苦笑い。

静はトトロのようにニッと歯を見せて、久納を見守っている。彼なりに場の空気を壊さないよう、気を遣っているようだ。

遊は相変わらず、仕方ない子だといいたげに、細い体をしなっとさせて微笑を浮かべている。

「じゃあ、一人ずつパートと名前をきいていきますよぉ。じゃあ~、時計と反対回りでいこうかな」
きんちゃん、わざとなのか、久納が最後になる順番で指名した。きんちゃんだって、番組が何事もなく進んだ方がいいと思っているはずだ。

「はい、えーっと」
「落ち着いて。深呼吸しとく?」
きんちゃんの一言に、久納以外のメンバーは和んだ。
「あははっ。大丈夫です。えー、ギターの静です」
「はい、そして…」
「ボーカルの遊です」
「おー、セクシーボイスですね」
この言葉に、さらに和んだ…久納以外。
「はい!ドラムやってます、明です!」
「おー元気だ。そして最後は?」
きんちゃんは明らかに他のメンバーとは違う目線を送っているが、声のトーンは同じなので、リスナーにはおそらく、何も感じとれないはずだ。大人って怖ぇ…そう感じざるをえない技術だった。

「ペインです。ベースやってます」
「え、一人だけ名前がカタカナなんだ!」
そういわれて久納は、きんちゃんの方を目だけギョロっと動かして見た。

あーもう、せっかく思いがけず久納がちゃんと答えたのに、何ケンカふっかけてんだよオッサン!と、明と静は変な汗をかいた。遊は
「あらあら」
というように口が半開き 。

「そうなんす、みんな本名なんすけど、オレは入ってすぐに付けてもらって」
どうやら、向こうがラジオ用の大人テンションでくるなら、こちらもそれで対抗してやろうと、久納も腹をくくった様だ。ほっとメンバーが肩を撫で下ろしたのもつかの間
「えー、苦痛とか苦悩って意味だよね?そこからきてるの?」
きんちゃんの質問に、今度は明が答えた。
「そうです!結構、悩み屋さんなところがあるんで、まんまそのようにつけました!」
「へー、そうなんだ。あんましそういうふうにも見えないけどねぇ」
と、明るいトーンでイヤミを炸裂させるきんちゃん。汗をかくメンバー。ピクッと動きの止まる久納。

もはやこれまでか。ところが久納は、またしても落ち着いて
「実はね、そうなんです、こう見えて。あんましファンの子には知られたくない面ですね」
と答える。が、目だけはポロッと飛び出できそうなほど大きく開けている。
「そうかー、意外な一面をリスナーのみなさんにお届けできたんですねー。じゃあ、結成のときのこと、きいていこうかな。どんな風に集まったメンバーなの?」
久納の攻撃をさらりとかわす男、きんちゃん。悔しいけど何もできずに歯を食いしばっている久納。
きんちゃんの質問には明が答えた。
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