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ペイン様の悩み多き日々 第27話

2016-10-16 14:59:53 | 日記



ペドノンヌとサブレー達の移動中、『リーズン』は通路にも音が漏れてきていた。控室に入るタイミングは、フィナンシェとほぼ同じだった。
充実感に満ちた汗だくのフィナンシェが戻ってきた。ギターのリョージは、通路の反対側から来たリクをみつけ、
「おー、リク!サブレーみんな来てくれたか」
と手を挙げた。
「おつかれっしたー!」
リク達は足早に歩み寄る。サブレー達が、久納達に手招きする。ペドノンヌも慌てて駆け寄り
「おつかれっしたー!」
と挨拶。
「あー、リクが言ってたのは、この四人?」
「そうっす。ペドノンヌです」
リクが紹介してくれた。
「そっかー、今日は来てくれてありがとう」
大物ほど腰が低いというが、まさにそんな感じだった。
正直、ステージを見るまで、フィナンシェなんてなんぼのもんじゃいと思っていた久納は、自分を恥じた。

フィナンシェ、サブレー、ペドノンヌの四人がゾロゾロと控室に入っていく。そのとき、もう一人、招待された人物がいた。それがMJだった。無邪気にフィナンシェに話し掛けようとした久納は、立ち止まった。

リョージがMJの存在にいち早く気づいた。
「お!じゅんこちゃん来てくれたのかぁ」
「お疲れ様でした」
MJは、いつになく緊張した様子。本名はジュンコというらしい。
リョージは親戚のおじさんのようにMJの頭を撫でた。
「しばらく見ないうちに、ちょっと大きくなったか?」
「え!そんなことないですよ。もう年ですから。まあ、初めてお会いしたときもすでに大人でしたけど」
「ええ?そっか。いや~、でも、大人っぽくなったよね。俺達も年とるはずだよなぁ」
と笑った。
「そうだ、ペドノンヌって、フィナンシェのコピーからスタートしたんですよ」
リクが言った。リョージは
「おお、そうなんだ。ちなみにそのときは学生?」
明が緊張しながら
「はい!初めてコピーしたときは中学生でした」
と答えると
「うわー、ひくなぁ!俺達オッサンどころかジジイじゃん」
とメンバーと顔を見合わせて大笑いした。
「そんなことないっすよー!今日のステージだって…」
明がフィナンシェにくっついて奥へ。タイミングが合ってしまい、入口でMJと久納が隣に並んだ。
MJは何か話したそうな顔をしたが、久納が先に目をそらしてしまった。そして目を合わせないまま
「お疲れ様です」
とだけ言った。

そのあと、入れ代わり立ち代わり、フィナンシェファンのV系アーティストや俳優、アナウンサー、作家など、著名人が楽屋を訪れた。

久納達にとっても、ちょっとしたパーティーのようなこの楽屋は、新しい出会いの場だった。中には
「この人たち誰?」
という目で久納達を見てくる人もいたが、ワイドショーのコメンテーターで有名なユナなどのように
「来てたんだあ!新しいアルバムきいたよー!」
と、すでに顔見知りのように話しかけてくれる人もいた。

ステージで全力を出し切った後で皆と話すのは、さぞかし大変だろう。久納はフィナンシェの様子を、いろんな人と話す傍ら、チラ見していた。

リョージなどは、特に笑顔を絶やすことがなく、パワーのある先輩だと尊敬した。
そのうちに、リョージがMJに話し掛けに行くのが見え、とっさに背を向ける久納。

たくさんの人が、同じ部屋の中で、バラバラに会話する雑音の中にもかかわらず、久納の耳には二人の会話がハッキリと聞こえてしまう。

「なんか、わざとらしい?」
「いえ、大丈夫。自然です」
「すごくキレイになってて、ビックリした」
「いえ、そんなことないです」
自分と話すときと、声のトーンが違った。
「その後…大丈夫?」
「はい、もうすっかり」
「久しぶりに会えたことだし、今度ゆっくり話せないかな?」
「……」

MJの返事がきこえない。モジモジしているのか、ジェスチャーで答えたのか、後ろ向きの久納にはわからない。
ただ、二人がただならぬ関係であることがわかった。

次の瞬間、久納は気分が悪くなり、よろめいてテーブルに手をついた。リクがいち早くそれに気づいて、駆け寄った。
「どうした?」
久納の顔色を見て、リクがそのまま外へ連れだし、車で送る流れになった。

助手席で、落ち着きを取り戻した久納。
「すみません、もっとフィナンシェと話したかったですよね?」
「まあ、ゲストさんもたくさんいたし、あのくらいのタイミングでちょうどよかったやろ」
「何から何までありがとうございます」
「食事制限もわかるけど、気をつけんとな」
「はい…」

車は、等間隔に並んだ、無機質な街灯たちの下を走り抜ける。
「あの…」
「なに?」
「MJって人とリョージさんて、そういう関係なんですかね?」
「ああ~。普通に話しとったな。二人とも大人なんやろなぁ」
「昔の恋人同士?」
「いや、俺も詳しくは知らんけどな。そうか、久納ちゃんは知らんか」
「え!?」
「15年くらい前かな。リョージさんと、仲間数人とおるとき、MJさんが襲撃されたとかいう話はあるな」
「はあっ!?なんすかそれ!」
「突然、女が現れて、MJさんに切り付けたとかいう」
「!!」
「リョージさんの熱狂的なファンの仕業やって表向きはなっとるけど、実はリョージさんもMJさんも面識ある人やったとか…」
「そんな…」
「でも、そんなことがあっても仲良く話しとったからな。二人とも過去のことやと思ってはるんやろな」

リクは知らないだろうが、さっきの口調から察するに、二人は過去のことだとは思っていない。胸のムカつきが晴れない。
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