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ペイン様の悩み多き日々 第15話

2016-10-16 13:58:33 | 日記
15


二人のやりとりをきいているかと思われたMJ。話に入ってこなくなったので、久納が顔を上げると、後頭を向けている。

「ちょっと、きいてました?」
少し怒り気味に話しかけたが、MJは返事をしない。さらに大きな声で
「ちょっと!」
というと、ようやく
「あっごめん。何?」
と慌てて振り返った。

タケがMJの見ていた視線の先にテレビを見つけた。
「あー、そうなんだ…」
タケもテレビにくぎづけになった。MJもまた視線を戻す。一体なんなのかと、MJの後頭をよけて、天吊りのテレビを覗き込むと
“フィナンシェ再結成”という見出しのワイドショー。
「あー、復活するんすか」
ペドノンヌはフィナンシェのコピーバンドからスタートしているので、タケや遊や明は思い入れも強い。が、久納が入った時点で、ペドノンヌはオリジナルをメインで演奏するバンドになっていたので、久納はフィナンシェに対して三人ほどの思い入れはなかった。

「そうかぁ、海外で再始動すんのか~、やっぱやることが違うなぁ」
タケも感慨深く見つめている。

しかし、MJがここまでロックバンド フィナンシェに引き込まれているのは、意外である。ファッションも若いOL風で、V系の追っかけっぽくもない。
音楽的にも、ロックで有名な女性だったらば、自分も名前くらい知ってるはずだ。MJは何系のミュージシャンなのだろう。

「フィナンシェ好きなんすか?」
久納が質問したが、またテレビに引き込まれてしまって返事をしない。なんだかすごくモヤモヤした。

画面では、スポットライトを浴びたギタリストがヒラヒラした衣装をひるがえしている。
コメンテーターの声が大きいために、バックでうっすら流れているライブの音はきこえない。
だが、ライブ会場の熱気とメンバーの存在感が確かに画面を通しても感じられた。久納は嫉妬した。
だが、フィナンシェの一体どんなところに嫉妬しているのか、久納自身もわからずにいた。ワイドショーは政治の話にうつった。くるりとMJは振り返って
「ごめんごめん、なんだっけ?」
ときいたが
「もういいです」
と、ふくれる久納。

「私、彼らに憧れてこの世界に入ったんだ」
「…へー」
「実際に会ったこともあるんだ」
嬉しそうなMJを見ても、共感してあげることはできなかった。
「ペドノンヌも危険な男って感じだけど、フィナンシェの危険さって、なんていうかこう…人を引き込むっていうのかな…」
フィナンシェと比べられたことに久納は腹が立った。
オレ達はオレ達だ。どんなにすごい先輩バンドがいようと関係ない。
そう言おうとしたが、
「でも、ラジオのときの君、すっごくよかった。やっぱりロックはああでなくちゃ!」
急に持ち上げられたが、悪い気はしなかった。

「弟には内緒にしておいたの。ペドノンヌがあなた達だってこと。だからすっごくビックリしてたでしょ?」
とイタズラっぽく笑った。
少し考えてはっとした。
「弟?きんちゃんて弟なんすか?」
「ああ、そうなの。仕事のときはMJさんて呼ばせてるから、わかんなかったよね。ラジオ出演させてって、私が話つけといたの。あの後すぐ電話がきて「騙したなー」って怒られちゃった。ちょっと楽しかったけど」

「ふざけないで下さい!!」
久納が突然大きな声を出すので店中が手を止めて注目した。
「あ…ごめん、嫌だった?」
「オレらは、自分たちの実力でのし上がってきたんです!これからもです!余計なことしないで下さい!」
そういってドカドカ足音を立てて店を出ていった。



「久納ちゃん、どうした?」
ビーズクッションにうつぶせになっている久納に、風呂あがりの遊が話しかける。
「ほれ!」
遊が水鉄砲をかけた。
「うほっ!つめてっ!」
久納が仰向けにひっくり返った。
「何するんすか!」
「ふふふ」
久納は何かきいてほしいことがあるとき、決まっていつもこの場所でこのポーズなのだ。
「…きんちゃんとMJは、きょうだいだったんす」
「ええ!そうなの?兄と妹?」
「いや、それが姉と弟。
そうなんすけど、大事なのはそこじゃなくて、オレ達のラジオ出演は、MJが話をつけてくれたってこと」

「あぁそうなの!?ちゃんとお礼言った?」
「お礼?なんでですか?オレ達そんなことしてくれなんて、一言もいってないじゃないですか?オレ達のこと面白がってるだけなんすよ、あの人」

困った様子で眉をハの字にした遊。
「オレ達は実力でラジオ出演を手にしたと思ってたのに…」
うつむく久納に、しゃがんで静かに話しかける遊。
「久納…。
MJさんとの出会いは、お前が服を汚しちゃったことでできた。そのMJさんが、たまたまオレ達を面白がってラジオに出してくれたと。
まぁそれは確かに、実力とは言わないのかもしれない。
でも、偶然の出会いとか縁を手にできるか、それも実力の内だって、オレは思ってるよ」

「…オレには、そうは思えません」
「うん。
お前の理想とは違う形かもしれない。だけど、ラジオ出演ていう立派な出世をとげたことを、お前は喜べないのか?」
「…それは、嬉しいっすけど」
「大事なのは形じゃない。そっちだろ?」
といって久納の胸を手の甲でドンと押した。
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