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ペイン様の悩み多き日々 第2話

2016-10-16 12:40:19 | 日記
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1994年5月25日

久納と静は高校の同級生だった。二年生のときに静が、大学の学園祭に行こうと誘った。そこが、久納が第一志望にしていた国立花婿大学だったので、二つ返事でOKし、二人は学生服のまま出掛けた。

憧れのキャンパスに久納は「すっげー広い!すっげー人!すっげー道!」と、とにかくすっげー連発。ボキャブラリの少なさは、当時まだ高校生だった彼にはたいした問題ではない。が、プロのミュージシャンを目指す今となっても、たいしてレベルは上がっていない…。


この学園祭でバンド演奏をしていたのが、ペドノンヌだった。明がドラム、遊はベースボーカル、そしてモヒカン頭のタケという男がギターを弾いていた。

当時のペドノンヌはまだ、上手いとか下手とかではなく激しさでハッタリかましとけばOKという集団だった。どちらかというと男ウケしそうな音に女性が群がってくるのは、遊の容姿のためだろうか。

演奏が終わるなり、静は再び久納の腕を引っ張った。久納は大学を見るのが目的だったが、静はバンドを見るのが目的だった。シャイでなかなか話せない静のために、かわりに「メンバーに入れて下さい」というのが、今日のもう一つの目的だった。


ギターパートの男の逆立てた髪を目印に、人波をかきわけ、たどり着いたのはダンボールの積まれた狭い通路。こんなところを彼等の控室にするなんてという目で静が無言で怒っていた。

「まぁまぁ」となだめ、「彼等のプレイは確かにすごいけど、まだ音楽だけで食べてるわけじゃないんでしょ?こういう扱いも仕方ないよ」というと、静はさらに「それは違う!」といいたげな目で訴えてきた。

そうこうしていると通路の向こうから、ついさきほどギターを弾いていたモヒカンの男が、ギターを担いで歩いてきた。

「よぅ!」と、初対面なのに男は気軽に話してきた。「ど…どうも!」と頭を下げる久納。静も態度で「どうも」を表現した。

「もしかしてオレらになんか用?」
「あ、そ、そうなんです!彼をメンバーに入れてほしくて!」
「へー、ちなみにパートは?」
静とアイコンタクトをとり「ギターです!彼、高校生だけど結構弾けるんですよ!」久納は静のかわりにアピール。

「……」男はなぜか黙るので、二人とも気まずい。

「そりゃあちょうどいい!オレ今日でやめるんだわ」思わぬ言葉に二人とも廊下に響き渡る大きな声で「えーーーーー!!!」

「うん、ま、くわしい話は中の二人としなよ。じゃ、後はよろしくな!」といってギターの男は去っていった。

静の中では、このモヒカン男とカッコよくツインギターとしてステージに立っている妄想が膨らんでいたのだが、その夢は絶たれてしまった。

なんとなく、どんな顔をしていいかわからないまま、おずおずと二人は扉を開けた。

「すみませ~…ん…」中は思っていたよりきれいな視聴覚室だった。さきほどドラムを叩いていた男がこちらを見た。

「何?あ、さっき見ててくれた子だ!」とすぐに気づいてくれた。女だらけのオーディエンスの中に、長身と小さい学生服が混ざっていたのはステージから見ても目立ったのだろうか?

静は、自分を覚えてくれただけで嬉しくて赤面している。「あの…さっきギターさんが抜けたって…」 「ああ、そうそう、そうなんだよ。今日を最後にね」明は最初から気さくな男だった。

一方、歌っていた美青年はというと、まるでふてくされているかのように、壁にピッタリくっついたベンチの上で、体を向こうに向けたまま動かない。

なんとなく切り出しにくい空気だったが、思い切って「あの、メンバーにして下さい!」と二人で頭を下げた。

「………

ほら!な!オレがいった通りじゃん!」明のテンションが急に上がった。「いった通り」とは、はて?喜ぶべきかわからないまま、二人は微妙な表情を浮かべる。

「なに?もしかしてギター?」
「あ、はい」
「うぉっしゃー!で、君は?」
「え!?ボク!?ボクは…」
久納はあくまで静の代弁者のつもりだったが、さきほど「彼をメンバーにして下さい」といったつもりが、「彼を」をぬかしていたことに今ハッと気づいて焦った。

「そりゃあ、ベースでしょ」という声がきこえた。ベースボーカルをつとめていた美青年が、ようやく振り返った。「お腹すいた。何か買ってきて、ベース君」

「はい!!」と返事して、走り出した…

…なぜか久納だけ。「あれ?なんでオレだけ?」と思ったときにはすでに遅かった。
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