◆『裏庭』梨木香歩 /新潮文庫
▽あらすじ
すっかり荒れ果て、近所の子どもたちの遊び場となっていた英国風の古いお屋敷。
照美たち家族の関係がおかしくなったのは、その庭で双子の弟を亡くした時から。
ある日、屋敷に伝わる秘密を聞いた照美は、すっかり足が遠のいていたこの屋敷を再び訪れる。
「フーアーユー?」
「テ・ル・ミィ」
不思議な大鏡の前に立った照美に問い掛ける声。
それに応えて、彼女は秘密の「裏庭」へと迷い込んでしまった。
三つに分かれてしまった王国。鳴り響く崩壊の音。
裏庭に広がる世界は、主を見失い破滅へと向かっていた。
この裏庭から元の無事世界へと戻るため、枯れた川に釣り糸を垂らす謎の釣り人"スナッフ"と、双子の片割れを亡くし、両腕も失った"テナシ"とともに、照美は冒険の旅に出ます。
▽コメント
子ども向けのファンタジーだろうと軽い気持ちで読み始めたのですが、これがなかなかに手強い。
ほのぼのとしたテンポでいながら、ただ可愛らしいだけのお話では決してなく、何気なく現れる鋭い言葉にはっとさせられ、醜い部分も時に衝撃的すぎると感じる程に、複雑な少女の心の動きが描かれています。
読後は、いい意味で裏切られた気分でした。
様々なキャラクターや事柄が象徴的に表現され、感覚的な言葉で語られる部分も多いので、ちょっと読みにくいなぁと感じる人も多いかもしれません。
私も最初は、少女の「裏庭」に突然引きずり込まれ、???と戸惑ってばかりでした。
しかし読み進んでいくうちに、並行して進む「現実」と「裏庭」の関わりや、娘と母、そしてそのまた母と3代にわたる繋がり、照美にとっての「裏庭」とそこで出会うモノたちの役割など、その壮大で複雑なストーリーに驚かされます。
自分でも気付かぬうちに、ひたすら感情を押し込める事が習慣になってしまった照美。
「傷を恐れるな」
「傷に支配されるな」
「傷は育てていかねばならん」
心の底に溜め込んできた感情の奔流を川の水に、あるいは気持ちによって姿を変える不思議な洋服というアイテムに託した表現はわかりやすく、興味深いなぁと思いました。
作者はキャラクターの名前、特に「呼び名」についてこだわりがあるようですね。
裏庭の世界で照美は、自らをテルミィと呼びます。可愛い響きだなぁとお気に入りでしたが、もちろんそれだけではありません。お話を読み終わった時には自然と、この"照美"と"テルミィ"という名前に込められた何重もの意味に気付かされるのです。
その他にも、スナッフという名を聞いた時に感じたなんとも嫌な予感。
ナナシでいるよりは"テナシ"という名がある方がいいと言ったテナシの思いを知った時の、なんとも言えない気持ち。
こんな風に、あらゆるキャラクター、あらゆる道具、あらゆる現象に、作者の象徴的意味が込められているのだろうなぁと感じながら、正直、私もすべて理解できたとは思えません。
もっと歳を重ねればわかるようになるかな?とか子どもの頃に読んだら、どんな風に思ったのだろう?と何度も思いました。
そんな風に、自身の成長とともに何度も読んでじっくり味わいたい。そう思える作品です。
先日紹介した『夏の庭』が仲間とともに新しい世界へ飛び出す"男の子"の冒険なら、この『裏庭』は、たった一人で自分の内なる世界へと入り込んでいく"女の子"の冒険。
図らずも、この生と死をテーマに「庭」での成長を描いた2作品を近い時期に読んだことで、だいぶ受ける印象も違っていたのではないかなぁと思います。
この記事は、以下の記事にトラックバックさせていただきました。
yukiwarisou さま 「裏庭 梨木香歩著」 (BLOG名 『本の海 航海記』)
▽あらすじ
すっかり荒れ果て、近所の子どもたちの遊び場となっていた英国風の古いお屋敷。
照美たち家族の関係がおかしくなったのは、その庭で双子の弟を亡くした時から。
ある日、屋敷に伝わる秘密を聞いた照美は、すっかり足が遠のいていたこの屋敷を再び訪れる。
「フーアーユー?」
「テ・ル・ミィ」
不思議な大鏡の前に立った照美に問い掛ける声。
それに応えて、彼女は秘密の「裏庭」へと迷い込んでしまった。
三つに分かれてしまった王国。鳴り響く崩壊の音。
裏庭に広がる世界は、主を見失い破滅へと向かっていた。
この裏庭から元の無事世界へと戻るため、枯れた川に釣り糸を垂らす謎の釣り人"スナッフ"と、双子の片割れを亡くし、両腕も失った"テナシ"とともに、照美は冒険の旅に出ます。
▽コメント
子ども向けのファンタジーだろうと軽い気持ちで読み始めたのですが、これがなかなかに手強い。
ほのぼのとしたテンポでいながら、ただ可愛らしいだけのお話では決してなく、何気なく現れる鋭い言葉にはっとさせられ、醜い部分も時に衝撃的すぎると感じる程に、複雑な少女の心の動きが描かれています。
読後は、いい意味で裏切られた気分でした。
様々なキャラクターや事柄が象徴的に表現され、感覚的な言葉で語られる部分も多いので、ちょっと読みにくいなぁと感じる人も多いかもしれません。
私も最初は、少女の「裏庭」に突然引きずり込まれ、???と戸惑ってばかりでした。
しかし読み進んでいくうちに、並行して進む「現実」と「裏庭」の関わりや、娘と母、そしてそのまた母と3代にわたる繋がり、照美にとっての「裏庭」とそこで出会うモノたちの役割など、その壮大で複雑なストーリーに驚かされます。
自分でも気付かぬうちに、ひたすら感情を押し込める事が習慣になってしまった照美。
「傷を恐れるな」
「傷に支配されるな」
「傷は育てていかねばならん」
心の底に溜め込んできた感情の奔流を川の水に、あるいは気持ちによって姿を変える不思議な洋服というアイテムに託した表現はわかりやすく、興味深いなぁと思いました。
作者はキャラクターの名前、特に「呼び名」についてこだわりがあるようですね。
裏庭の世界で照美は、自らをテルミィと呼びます。可愛い響きだなぁとお気に入りでしたが、もちろんそれだけではありません。お話を読み終わった時には自然と、この"照美"と"テルミィ"という名前に込められた何重もの意味に気付かされるのです。
その他にも、スナッフという名を聞いた時に感じたなんとも嫌な予感。
ナナシでいるよりは"テナシ"という名がある方がいいと言ったテナシの思いを知った時の、なんとも言えない気持ち。
こんな風に、あらゆるキャラクター、あらゆる道具、あらゆる現象に、作者の象徴的意味が込められているのだろうなぁと感じながら、正直、私もすべて理解できたとは思えません。
もっと歳を重ねればわかるようになるかな?とか子どもの頃に読んだら、どんな風に思ったのだろう?と何度も思いました。
そんな風に、自身の成長とともに何度も読んでじっくり味わいたい。そう思える作品です。
先日紹介した『夏の庭』が仲間とともに新しい世界へ飛び出す"男の子"の冒険なら、この『裏庭』は、たった一人で自分の内なる世界へと入り込んでいく"女の子"の冒険。
図らずも、この生と死をテーマに「庭」での成長を描いた2作品を近い時期に読んだことで、だいぶ受ける印象も違っていたのではないかなぁと思います。
この記事は、以下の記事にトラックバックさせていただきました。
yukiwarisou さま 「裏庭 梨木香歩著」 (BLOG名 『本の海 航海記』)










「裏庭」を読んだときは、おおー、すごいぞお、という感動が先にたって、内容の意味を考えるまではしていなかったな。
とにかく、梨木作品は、日本の児童文学というか、ファンタジーとしては別格な存在だと思う。
やはり再読か?
いったい、どれだけ課題図書があるのやら・・・
時間を経たり環境が変わったり、自分の感じ方も変化したかなという頃に、また読んでみたいですね。
再読だから、軽く読めるかなと思っていた自分。
なんて浅はかな。
私も、うまく言葉にできているか疑問ですが、とりあえず記事をアップしましたのでTBさせてもらいました。
またサーバが混んでるのかな?
あまり時間がたっても表示されていないようでしたら、よければもう一度してみて下さいね。
2重になってしまったら私の方で処理しますから。
くろにゃんこさんの記事、楽しみだなぁ♪
これからさっそく見に行ってきます!!
そして、かなりよかったです。
早速ブログに上げましたよ〜(^^
私は梨木さんの作品はまだこの「裏庭」しか読んでいないので、次も早く読みたいです〜(>ω<)
いまはちょっと別のを読んでいるので、この後くらいかなぁ。
実は、読んだあとに本屋で平積みにされてるのを見て、評判を知ったと言う状態でしたが、あれなら確かに、ですね。
ホントにいい作家さんの紹介があって、よかったです。
この調子で何かオススメがあれば教えてくださいね(^^
最近ちょっと停滞気味ですが、これからもいろんな作品を紹介していきたいと思っていますので、どうぞよろしくお願いします。
「西の魔女が死んだ」を始めとして、「エンジェル エンジェル エンジェル」「家守綺譚」と読んでしまいました(^^
今日も「りかさん」「からくりからくさ」「マジョモリ」をGETしました。
これからどんどんいきますよ〜。
私はまだ「西の魔女が死んだ」も手に入れてないです(>_<)
大学生協には置いてなくて、別の本を衝動買いしてきてしまいました。
ちなみにその時買ったのは鈴木清剛さんの『消滅飛行機雲』。
作家さんも作品も知りませんが、夏!という感じの青空と緑の表紙に惹かれて…。
お気に入りの作家のファンがたくさんいることを知って、とてもうれしい気分です。
また、別の記事にもトラバさせていただくかもしれません。
その機会にはどうぞよろしくお引き立てのほどを。
縮小傾向だったウチの記事に目をとめて下さって、感謝感謝です。
こちらこそ、よろしくお付き合いお願いします。
トラバ大歓迎です♪
コメントなしでも全然構いませんので、どんどんつないでやって下さいませ。
今まで読んだ梨木さんの作品の中で、一番ぐさりと来た気がします。
自分の心の中って覗いてみたいようで、怖くて深く覗きたくない部分です。
照美はそれと戦って裏庭から戻ってきたのだからすごい・・・。
何度も読みたい作品の1つです。
TBさせてもらいます。
私の方からもTBさせていただきますね。
>覗いてみたいようで、怖くて深く覗きたくない
私自身、この作品を読みながら感じたことが上手く言葉にできず、もどかくしくざわつく気持ちを抑えながら読んでいました。
この「裏庭」という作品を読むことそれ自体が、自分の心の中を覗くようなものなのかもしれませんね。