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1人の発信者として「『グリット (やり抜く力)』は過大評価されている」という批判について思うこと

2017年03月20日 | 子育て全般

2007年に心理学者のアンジェラ・ダックワース氏が、「学校でも社会でも成功するにはグリットが重要ですよ」と発表した論文は、1000以上の論文に引用され、2013年のダックワース氏のテッドトークは800万人以上が視聴、全米中の教育現場にも、多くの共鳴者を生み出しています。

私自身の身近な体験でも、アラスカの学校で、授業やワークショップなどで「グリットを高めよう」といった試みがされていました:

・現代っ子に欠けている?「やりぬく力」を育むために役立つ7つのヒント

また2015年4月に『オールアバウト』の方へ、こんな記事も書かせていただいてます:

子供が成功する鍵!「グリット」を育む6つのヒント


そして2016年に出版されたダックワース氏の著書『Grit: The Power of Passion and Perseverance』はベストセラーとなっています。

邦訳本『やり抜く力 GRIT(グリット)――人生のあらゆる成功を決める「究極の能力」を身につける』の帯やら振れ込みやらにもあるように、まるで「世紀の大発見!」というような風潮。

 

そこへ、あちらこちらから批判も出てきています。

 

 

「グリットって大切!」という発信をしてきた者&していく者として、「グリットが重要」という考えには変わりはないですが、批判の中には、「注意すべき点」を気づかせてくれるものもあります。そこで、思うことをまとめてみました。

 

ダックワース氏自身こうした批判に触れ、グリットをはかる「スケール」の「パッション」についての項目を改善したりと、より調査研究を深めているようです。

「批判」に揉まれつつ、「グリットについての研究」がより磨かれ発展していくことを願っています。

 

 

まずは批判について、ざっとまとめてみますね。

「学校でも社会でも成功するにはグリットが重要ですよ」という論への批判

・ダックワース氏の陸軍士官学校の調査データの表記の仕方が、グリットの影響を誇大表記している

「グリット・スコア(ダックワース氏研究チームが開発したスケール)」が高いとされた士官の98%が難しいタスクを達成。でも実は全体の95%の仕官も達成しているので、確率的には3%上昇したのみ。それでも「グリットの高い士官の99%近くが達成」と表記されているので、読み手としては、まるでグリットのスコアがそれほど高くない士官に比べ、40-80%ぐらい差があるように感じてしまう。

←ダックワース氏自身、表記の仕方がまずかったと認めています。「それでもデータに間違いはないし、誤解するように意図したものではない」とのこと。

 

 

・ダックワース氏が調査した学校や企業のトップで活躍する層以外に対象を広げるなら、それほどグリットの影響力は大きくないのじゃないか。

←ダックワース氏自身も「グリットのみが、成功の鍵ではない」と認めています。

 

 

・「グリット」とは、心理学で「パーソナリティーを形作る5大要素のひとつ」とされる「conscientiousness(良心的であること・誠実さ)」と同じものなのじゃないか。そしてconscientiousnessとは、生まれもった性質が大きく関わり、後天的に高めることがそう簡単にできるものではないのではないか。

←ダックワース氏曰く、「グリットはconscientiousnessと同じグループに属する(family)。でも『努力の持続性』という面が追加されているので同じとはいえない」とのこと。

 

 

・「生まれ持った資質よりやり抜くことこそが大切」といった考え方は、昔からあるもので何も目新しくないのじゃないか。

← 確かに、「ウサギとカメ」などある意味行き渡ったバリューですよね。社会学での古典でもある「プロテスタンティズムが資本主義を促進したという仕組み」も、こうした価値観がベースです。

 

 

また、「グリットを高める」という働きかけが、子どもにとって悪影響になることもあるのではないかという声もあります。

 

・「努力が足りない」で「全てが解決する」かのようで、追い込まれてしまう子もいる。

← 確かに、環境を改善したり、「個々の特性をみる」といった姿勢がおろそかにならないよう注意する必要があります。

 

 

・「無意味なゴール」にも「思考停止」してしがみつくような態度を促進してしまう

例えばこちらの記事にて、「今度の統一テストで高得点を取るために全校生徒でグリットを発揮しよう」といったある学校の取り組みがあげられています。

←この学校の試みに対し、ダックワース氏自身、「グリットとは持久力とパッションが合わさったものであり、もっと個々の生徒がパッションを感じられる課題に取り組むべき」と言ってます。

 

 

 

 

 

これらの批判について思うこと

1.こうして「グリットは万能!グリットさえあれば成功できる!」といった社会の「流行ブーム」に、「ちょっと待ってよ」という批判が出てくることは「健全」ですね。ある情報が力を持ち「過ぎる」と、必ず対抗する情報が出てくるといったこちらの風土が、私はとても好きです。

確かにグリットは「万能」ではありません。他にも大切なことってたくさんあります。

例えば、「21世紀型スキル」や「21世紀型能力」にもあるように、思考力、創造力、読み書き・数字・情報リテラシー、行動力、共感力、コラボレーション力、問題解決力、成長型マインドセット、柔軟性、楽観性などなど。

 

 

2.これまでも「グリット」と似たバリューというのは繰り返し言われてきているわけですから、「世紀の大発見!」とは確かに言いすぎでしょう。本や情報を売るための常套手段ですね。

 

 

以上の1と2から、グリットは「万能」でもなく「世紀の大発見」でもないわけですが、それでも、「グリットは重要なことのひとつ」ということに変わりはないですよね。

 

 

 

3.「確かに」と思ったのが、「努力すれば何とかなる」ということばかりに目が行ってしまい、環境改善や、特性に目を向ける大切さを忘れてしまわないように、ということ。

また、「適切なゴール」を選択することが大切ということ。そうしたゴールを達成するために方法を創造的に工夫してやり抜くことがグリットであり、「盲目的に遂行する」のと「グリット」とは同義ではないと覚えておきたいです。

 

 

 

4.「ブームになり、批判が出たりブームが去ったりして、見向きもされなくなる」といった流れにならないといいなあと思います。

「グリットは大切な要素のひとつ」であり、子どもに関わる大人として育んでやりたい資質ということに変わりはないですから。批判に切磋琢磨されながら、発展していってほしいです。

こちらに紹介したレンズーリ氏の、「ギフテッドネスを開花するための三輪」のひとつにも、「Task Commitment(タスクへのコミット)」があります。やはりすぐに諦めてしまっては、何も形になりません。

消費するだけでなく創造できる「ギフテッドネス」をどう開発する?教育学者レンズーリ氏の研究紹介

 

 

 

5.極端な情報と現実生活とのギャップに気づいていきたいです。

特に「人気のあるもの」というのは、極端なものが多いです。「世紀の大発見!」など「極端」だからこそ人目をひきつけ、売れます。

情報を発信する側の末席に身をおくものとして、これはもう日々痛感していること。

極端でなきゃ意味がない、とさえ煽る風潮がありますから。

 

でもですね、読み手として「現実生活に当てはめる」となると、注意が必要です。

「グリットさえあれば必ずどんな時でも成功できる!」のではなく、

グリットが最も必要な状況もあるでしょうし、止めることが大切な状況もあるわけです。

 

自分の今の現実の状況にどんな情報がどの程度有効なのか、「情報を活用」していきたいです。

これはもう本当に、子育て情報溢れる中で、子育てするものとして、心に留めていきたいことですね。

 

 

自らパッションを持つゴールに向かってグリットを発揮していきたいです!

「身体よ、ついてこい」というのが課題。

身体筋肉を鍛えることにもグリットを発揮せねばです。

みなさん、新しい週、よい日々をお過ごしください!

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