鈍想愚感

何にでも興味を持つ一介の市井人。40年間をサラリーマンとして過ごしてきた経験を元に身の回りの出来事を勝手気ままに切る

たった一人で東電を相手に損害賠償請求裁判に立ち上がった占い師の女性にエールを

2017-02-23 | Weblog
 22日は東京・霞が関の東京地裁へ裁判の傍聴に出かけた。午前10時半から626号法廷で60代とみられる女性が東京電力ホールディングスを損害賠償請求してている民事訴訟裁判を傍聴した。2011年3月11日の東日本大震災以降多発している地震災害の損害賠償裁判かなと思ったものの、一女性が訴えているのも珍しいと思って、法廷に入るといわゆる第3者的な傍聴人はだれもいない感じだった。最近の東電を相手とする損害賠償裁判は原告が多数で傍聴席はぎっしり満員というケースが多いのに全くの想定外だった。

 証人に立ったのは原告一人だけで、まず代理人は原告の出身地を聞くと福島県南相馬市ということで東日本大地震の被害者であることがわかった。続いて家族状況や収入のことを聞き、突然霊魂に興味があることを尋ね、震災以前から九州の浅岡なる霊媒師と知り合いになり、携帯電話経由で恋愛や生活など悩みごとの相談に乗り、アドバイスや占いをするといった仕事をするようになった経緯を原告が説明した。なんでも相談者と1分間話すと50円もらえる約束で、それが郵便局でアルバイトして得る収入をも上回るようになり、震災前の15ケ月でトータル300万円にものぼった、という。

 それが震災に遭ってからは原発の放射能汚染を避けるため震災の翌日に家を引き払いホウホウの態で東京の子供の家に逃れて仕事もみつからなくて生活するのに精いっぱいとなったうえ、目や精神を病み、不眠にもなってしまい、常時医者通いをし、とても人の相談に乗るような気にはならなくなり、浅岡とは一切の連絡を絶ってしまった。つまり、心が折れてしまった、というのだ。損害賠償の額は明らかにされなかったが、仮に東日本大震災がなければこの間に浅岡から得られた収入は1000万円にものぼった、ということになるだろう。それを東電に賠償してほしい、という訴えである。

 これに対して被告の東電側の代理人は原告が郵便局の休業補償としてすでに東電から220万円余をもらっていることや浅岡からもらった300万円が源泉徴収されていないし、確定申告もしていないことことを暴いたり、浅岡からの振り込みが大震災後もあることの理由や、震災後の通院の状況などを質したりした。代理人が「郵便局の仕事はいつ辞めたのか」と聞いたら、原告が「郵便局が津波でなくなってしまったので、当然仕事もなくなってしまった」と回答していたのは衝撃的な場面だった。

 確かに大震災のせいで占いの仕事はなくなってしまったのは明らかであるが、それが東電の責任と問えるかどうかはこの裁判のほかに集団で東電を訴えている裁判の動向も参考にしないと判断できないこともある。ただ、この裁判の水野有子裁判長はほかの東電が訴えられている集団訴訟裁判でも裁判長を務めており、的確に判断できる立場にある。他の集団訴訟は地震の災害の損害のみを訴えているのに対し、この裁判では地震発生前まで得られていた収入がなくなってしまったという点で汲むべきところがある。

 証人尋問を終えて水野裁判長は両隣の判事2人とともの奥へ引き揚げ、しばし協議したうえ、再度法廷に現れ、原告、被告双方に対し、「和解に応じる意向はあるか」と尋ねた。双方とも「内容次第」と答え、次回は和解を協議することとなったが、すんなり和解に至るとは考えにくく、結局は東電が少額の賠償金を出すということに落ち着くのではないか、と思われる。それにしても東電は弁護士2人に任せて一人も裁判に立ち会わず、証人も出さないのはやや傲慢な印象を与える。その意味でも孤軍奮闘している原告にエールを送りたい気になった。
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