月下に杯を重ね

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切れ味と業物位列

2005-11-07 22:44:43 | コラム
 日本刀の切れ味をランク付けするものに、業物位列があります。
 これは、「懐宝剣尺」「古今鍛冶備考」によってランクづけされた物で、切れ味上位の物から、最上大業物(14人)・大業物(84人)・良業物(210人)・業物(803人)の4段階に分けられます。
 ただし、これは切れ味の絶対的上下関係を示す物ではないようです。
 この位階の算定の基準は、最上大業物が10振りのうち8振りから9振りが大切れするもの、大業物はうち7振りから8振り、良業物がうち5振りから6振り、業物がうち2振りから4振りまでのものとなっています。
 つまり位階が上の物ほど、はずれが少なく大切れする物が多いというわけで、大切れする物の中での順位付けではないところがおもしろいところです。

 「懐宝剣尺」は、寛政9年(1797)に遠州浜松藩士柘植方理が須藤五太夫・山田朝右衛門の協力により著したもので、当時の一般武士の教書本として出版されました。
 そのためか、当時の武家が入手可能な新刀をおもとした代表刀工を載せている物に過ぎませんでした。
 その33年後の文政13年(1830)に山田朝右衛門吉睦が「古今鍛冶備考」全7巻を著し、「懐宝剣尺」における業物位列を追加再編しました。その刀工数は、実に1111人に及んでいます。
 代々斬首刑の執行にあたる山田家の経験を下に編纂されたこの二編の著作は、やはり世間に与える説得力が大きく当時から現代に至るまで刃味に関する貴重な資料となっているようです。
 当然ながら、文政13年(1830)より後の刀工については業物位列はありません。ゆえに、業物位列がないからといって、切れ味という点で凡工であるというわけではない点に十分注意してください。

 なお、各位列の著名刀工の簡単な表を載せておきましたので、そちらも参照ください。

業物表