Kポアイドルで妄想小説書いてみる@すうぇん

自分が好きではないけど、心にもないうわべだけの言葉は吐かない自分は評価してる。それ以外は結構ダメ人間だな私。

1話完結A.C.E小説 [CACTUS]

2017年06月20日 | 1話完結小説

静かな部屋に携帯電話のアラーム音が軽快に響いている。
布団からごそごそと腕だけ出して、ジュンヒはそれを止めた。やがて布団から顔だけを出し、まるで亀のようにゆっくりと辺りを見回してみる。
そして大きくため息をついて唸ると、やっと布団から抜け出しベッドに正座で項垂れた。
そこにいて当たり前の存在が無い。
ドンフンがこの部屋を飛び出してまだ2日しか経っていないのに、もうその空虚さに耐えられそうにない。特別な関係となって3年、一緒に暮らすようになって2年、その間に彼に愛想を尽かされて出て行かれたのはざっと考えても両手じゃ足りない。
些細な喧嘩と仲直りを繰り返し、腐れ縁だとまで言われても、結局お互い必要とし合っている、何とも奇妙な関係だ。

ジュンヒは朝の光を部屋に取り込もうと、ブラインドの紐に手を掛けた。その時、手首にチクリと痛みが走った。

「あ、痛っ・・・。」

出窓に置いてあるサボテンの棘が、ジュンヒの手首を掠めたらしい。抜けた棘が、1本肌に刺さっていた。ジュンヒは勘弁してくれと言わんばかりの表情で、棘を抜いた。赤い血が薄っすらと滲んでいる。
このサボテンの鉢植えは、ドンフンがここに置いたものだ。一緒に暮らすようになった頃、生活用品を買った雑貨屋で見つけて、ドンフンが気に入ったものだった。

『サボテンって、すごい綺麗な花が咲くんだよ。知ってるか?』

ドンフンが少し得意気に言っていたのをふとジュンヒは思い出した。もちろんジュンヒは知らなかった。植物に興味を持ったことはなかったし、実家でも見たことが無い。
あれから2年、未だそのサボテンに花が咲いているのを見たこともない。ジュンヒは、まだ何となくチクチクと痛む手首を擦りながら、携帯電話を手にした。

『ドンフン兄さん、ごめん。帰って来て欲しい。ホント愛してるから。』

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アパートのベランダで洗濯物を干しているユチャンは、テーブルの上に放置してあるドンフンの携帯電話に、何かメッセージが届いたのに気付いた。ドンフンはまだベッドの中だ。ユチャンが目覚めた1時間前から、微動だにしてない。
ユチャンは携帯電話を手にした。ジュンヒからのメッセージを確認すると、小さくため息をついた。

「兄ちゃん。ジュンヒさんからメッセージ来てるよ。愛してるって。」
「勝手に読むな。」

意外にも鮮明にベッドから返事が返って来たので、ユチャンはびっくりしてベッドに走り寄った。

「起きてたの?」
「俺の携帯勝手に弄るな。」
「あっちに放置してたからさあ。もうそろそろ帰りなよ、ジュンヒさん反省してるっぽいよ。」

ユチャンはドンフンの弟だ。元々はこのアパートに兄弟で生活していた。ジュンヒと暮らすために兄のドンフンは出て行ってユチャンの一人暮らしとなったわけだったが、しょっちゅう喧嘩か何かでマンションを飛び出して来ては数日間不貞腐れている兄の扱いには、既に慣れ過ぎていた。

「お前はジュンヒの何を知ってんだ。」
「反省してる風を装ってるってことはわかる。」
「そうだよ、装ってるんだ。アイツは既に病気だ、もう浮気癖は治らない。」
「兄ちゃん。証拠はあるの?見たのか?現場を。」
「アイツが怪しいホテルから女といちゃつきながら出て来るところを見たって知り合いがいるんだ。そいつが嘘ついてるとでも?」
「ジュンヒさんも大変だなあ・・・。ソウル中のあちこちにスパイがいるんだもんなあ。」
「お前、どっちの味方なんだよ。」

いつの間にかドンフンはしっかりベッドに座っている。ユチャンは、呆れたように「俺はどっちの味方もしない。」と言い放つと、洗濯物を干しにベランダに戻った。
5分もしないうちに、ドンフンの携帯電話が鳴りだした。どうやらジュンヒかららしい。が、ドンフンは出る様子もない。

「兄ちゃん。電話出なよ。」
「今度ばかりはマジで怒ってるってとこ見せないとダメなんだ。」
「何回目なんだよ、今度こそ今度こそって。」

持っていたタオルを洗濯カゴに叩きつけると、ユチャンはズカズカとベッドに歩み寄り、鳴り続けているドンフンの携帯電話の通話ボタンを押した。

「はあい、ユチャンです。」
「・・・・・・ユチャンか?」
「ええ、ジュンヒさん、おはようございます。」
「おはよ・・・。ドンフン兄さんは?」
「想像にお任せしますけど。」
「ユチャン、頼みがある。今、この瞬間、すんげえ驚いて慌てて見せてくれ。お前の最高の演技を見せてくれ、今度おごるから。絶対。」
「何ですかその新しい試み・・・。わかりました、驚きますよ?」

ユチャンは呆れたように小声で言うと大きく息を吸った。

「ええええっ!?ほ、本当ですかああっ?」

ユチャンの大声に、ベッドに座っていたドンフンがビクッと顔を上げた。

「・・・どした、ユチャン・・・。」

不安げに言うドンフンに、ユチャンは黙って携帯電話を差し出した。ドンフンは、訝し気にそれを受け取って、言葉を発した。

「もしもし・・・。」
「ドンフン兄さん・・・。どうしよう。」
「どうしたんだよ。」
「血が・・・血が止まんない。」
「は?血?どうして。」
「サボテンが刺さった・・・・俺の手首に・・・・。棘が刺さったんだよ、毒あるの?俺、死んじゃうのかな・・・。」
「ま、待て、落ち着いて、ジュンヒ、待ってろ、すぐ帰るから。なっ?」

ドンフンは受話器を耳にあてたまま、慌ててその辺にある服を着ている。

「それ俺の・・・。」

ユチャンの言葉ももう耳に入らないぐらい慌てている。電話で「落ち着け。」と言っている本人が一番テンパっているのだ。ユチャンは笑いを堪えて洗濯物をまた干し始めた。
激しく閉まった玄関ドアの音を聞きながら、「どっちもどっちだな。」とユチャンは呟いて小さくため息をついた。

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息を切らしてドンフンはマンションの玄関に飛び込んだ。エレベーターすら待てずに階段を駆け上がって来たのだ。

「ジュンヒ?」

丸く盛り上がっているベッドに気付いて、ドンフンは駆け寄った。窓際に、サボテンはいつものように静かに置かれてあった。

「ジュンヒ・・・?大丈夫か・・・?」

布団を剥ぐと、ジュンヒが満面の笑みで両手を広げた。

「おかえりなさーい、ドンフン兄さん、俺のところに。」
「・・・・は・・・・・?」

面食らっているドンフンを、ジュンヒはぎゅっと抱き締めて、頬に何度も口づけしている。血が止まらないなどと作り話をして自分を連れ戻そうとしたジュンヒに、ドンフンは呆れこそしたが不思議と怒りはわかなかった。
ジュンヒに抱きしめられながら、ドンフンは静かに問いかけた。

「・・・・大量出血は置いといて・・・サボテンが刺さったってのも作り話?」
「それは本当。棘刺さって抜いたら血出た。ほら。」

ジュンヒの手首には絆創膏が貼られている。ドンフンはゆっくりとその手首を掴んだ。

「痛かっただろ・・・。」
「実は初めてじゃないけど。俺が悪さしたら刺さるのかな、なんて。あ、でも、浮気は誤解だからな?何度も言うけど。」
「100%は信じられないんだ、悪いけど・・・。お前がモテるのは十分承知だからさ・・・。」
「今までも俺はドンフン兄さんに尽くしてきたつもりだけど、これからもっと大事にするよ。俺が大怪我したかと思って、慌てて帰って来てくれた兄さん見たら、大事にしてあげなきゃって思った。」

それを聞いてドンフンは少し照れくさそうにジュンヒの肩の辺りに顔を埋めた。たった2日間離れていただけなのに、とても懐かしい感触に思えた。嫉妬をするのも疑いをかけるのも、全ては彼を愛しているからだ。改めてドンフンはそれを実感した。

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狎鴎亭にあるダンススクールには、まだ練習生は1人も来ていない。
アルバイトで講師をしているセユンだけが、鏡の前で真剣にダンスの振り付けを考えている。
音楽が止み、セユンがペットボトルの水を取りにスタジオの隅に来たところで、ドアの向こうから覗いているドンフンと目が合った。

「どうした?」
「真剣なとこ邪魔しちゃ悪いかなあと思って。」
「どうしたの?仕事帰り?」
「あ、うん。」

ドンフンはスーツ姿だった。彼は大学を出てサラリーマンをしている。セユンとは大学で知り合い、卒業してからも時々会っていた。
スタジオの隅の長椅子に腰掛けたドンフンは、物珍しそうに辺りを眺めている。

「何度来ても慣れないね、この空間。」
「そう?」
「練習生はまだ来ないんだ?」
「レッスンまでまだ時間あるしね。俺は色々準備あるから早めに入るけど。何か用があって来たんじゃないの?」
「ああ・・・うん。」

ドンフンは持っていた紙袋からサボテンを取り出した。セユンは、引き寄せられるように手を伸ばした。

「どうしたんだ?これ。」
「・・・うちにあったんだけど、良かったらセユン・・・育ててくれないかなあと思って。」
「どうして手放すの?」
「ジュンヒが、しょっちゅう棘にやられる・・・。」
「ああ。」

セユンはふっと笑うと、愛おしそうにサボテンを眺めた。元はというと、ドンフンがサボテンに興味を持ったのはセユンの家で鮮やかに咲いたサボテンの花を見たからだった。
大学生の頃、セユンの部屋に何度か遊びに行った時に、彼がサボテンを好んで育てていることを知った。
『サボテンは簡単に花を咲かせる植物じゃないんだよ。甘やかしたり、厳しくしたりして育てるんだ。太陽をいっぱい当ててやったり、わざと水をやるのを控えたり・・・。何十年も咲かないサボテンもあるしね。』
静かな口調でセユンがそう言いながらサボテンを眺めていたのを、ドンフンは時々思い出していた。

「買って・・・2年ぐらい経つけど、未だに花を見たことないんだ。お前んちで見たような、ハッとするような鮮やかな花が咲けばいいな、って思ってたんだけど。」
「俺が育てたからって咲くかどうかわかんないけど。」

セユンがそう言った時、スタジオのドアが開いて1人の若者が入って来た。セユンの他に見知らぬスーツ姿の男がいることに驚いて、ちょっと躊躇していたがぺこりと会釈して、「こんばんは。」と言った。

「早いね、ビョングァン。」
「あ、ええ・・・。」

セユンが声を掛けると、鏡越しに小さく頭を下げて、はにかんだように俯いてリュックの中を覗き込んでいる。

「練習生か?中学生ぐらいかな。」

ドンフンが言うと、セユンが吹き出しそうになりながら首を振った。

「もう成人してるよ。彼は俺のアシスタントとしてここで練習生を教えてるんだ。」
「あ・・・そうなんだ・・・。随分幼く見えるからさ。」
「見た目はね・・・。精神はびっくりするぐらい大人びてる。」
「ふうん。ああ・・・そろそろ俺帰るね、ジュンヒ待ってるかもしれないし。サボテン・・・頼んだよ?」
「はいはい。」

セユンが優しく微笑んだ。ドンフンがスタジオを出た後、鏡越しにビョングァンがちらちらとサボテンを見ているのに気付いたセユンが声を掛けた。

「気になる?」
「サボテン・・・でしょ?」
「そう。知ってるか?すごく綺麗な花が咲くんだよ。」
「花が?こんなトゲトゲなのに?」

ビョングァンが思わず、勢いよく振り向いた。興味深げにサボテンの鉢植えを眺めている。
セユンは、そんなビョングァンを見つめながら言った。

「育ててみるか?」
「僕が?・・・いいんですか?」

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地下鉄に揺られながらビョングァンは家路につく。
車窓に反射し映る自分と、膝に乗せている紙袋をぼんやりと眺めた。今日、漠然としていた自分の想いが、少しだけ動いた気がした。
レッスン室に入った時に、セユンが誰かと一緒にいるところを今まで見たことが無かった。しかもスーツ姿の男で、セユンとはどんな関係なのかもわからない。
いつも見ている姿は、厳しくダンスを指導する姿と、ストイックに鍛えている姿、そして練習生達に向ける優しい眼差しだけだ。
友人とあんな風に喋るんだな・・・・
ビョングァンは真っすぐにそう感じた。そして、友人の男が託したらしいサボテンが最終的に自分の膝の上にある。勝手にビョングァンは、因縁的なものを感じて小さなため息をついた。

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「サボテンどうしたの。」

ジュンヒがシャワーを浴びたばかりの濡れた髪を拭きながら、ドンフンに問いかけた。ドンフンは帰宅してスーツ姿のまま、コンビニ弁当をつつきながら缶ビールを飲んでいる。
妙なそのくたびれ感がジュンヒはたまらなく好きだった。

「知り合いに育ててもらうことにした。」
「何で?俺が何回も被害に遭ったって言ったからか?」
「んん、まあ。」
「知り合いって誰。」
「大学の時の友達だよ。キム・セユンって前に紹介したよね、街で偶然会って。」
「ああ。彼ね。・・・・てか何で彼に託すわけ?」
「アイツ、サボテン育てるの趣味なんだ。」
「ちょい待って。」

ジュンヒは、ドンフンの向かいに腰掛けた。長い前髪から、滴がぽたりとテーブルに落ちた。

「兄さんがサボテンに興味持ったのってその人がきっかけか?まさか元カレってことじゃ・・・。」
「そんなわけないだろ。」
「そうなんでしょ?おかしいと思ったんだよ、何だってサボテンなんか買うんだろうって。どのぐらい付き合ったんだ?俺より長いの?」
「くだらないとは思うけど、お前がちょっと嫉妬してるの嬉しいね。少しは俺の気持ちがわかったか?」
「はぐらかすなよ。正直に言って。元カレだろ?」
「口の利き方気をつけろ。」

ドンフンは呆れたように言って、緩めていたネクタイを全部外した。たまに年上だということを暗にアピールしてジュンヒを窘める。

「ああ、そうやって話をすり替えようとするんだな?ああ、何かモヤモヤする。いや、ムラムラかな。」
「やめなさい。」

ドンフンが顔を顰めて苦笑いしている。ジュンヒは面白くなさそうに、缶ビールを奪い取って、全部飲み干していた。

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日曜日の昼間は、自主レッスンになっている。レッスンスタジオを開放しているが、さすがに人の出入りは少ない。ビョングァンは、ガラス張りのレッスン室で太陽を浴びながら座り込んでいる。
すぐ傍に、サボテンの鉢植えが置いてあった。
あれから1か月、毎日のようにサボテン持参でレッスン室に来るビョングァンの姿があった。そしてこんなふうに、昼間の太陽を一緒に浴びている姿を見ると、セユンはその背中に愛おしさしか感じなくなってくる。いつかビョングァンにも花が咲くんじゃないかと、馬鹿馬鹿しいことまで考えていた。

「すっかりサボテンの保護者だね。」

背後からそう声を掛けられて、ビョングァンは我に返ったように振り返った。セユンがすぐ傍に腰掛ける。

「いつも一緒にいなくていいんだぞ?」
「でも何か・・・放っておけなくて。」
「ま、俺も家でサボテン相手に喋ってたりすることあるし、気持ちはわかるよ。」
「見た目こんなふうに地味だけど、頑張ってるなあ・・・・って思うようになったんです。誰も触れないように自分を棘で守りながら、必死で頑張ってるのが・・・。どっかセユンさんに似てるかなあって思ったり・・・。」
「俺がそんな風に見えてたのか?」
「僕には。」

ビョングァンはそう言って膝を抱えた。セユンも同じように膝を抱えた。ふと頭を過ったサボテンの花言葉がある。

『秘めたる情熱』

ビョングァンがそれを知っているとは思えなかったが、セユンがサボテンを好んだのには偶然目にしたその花言葉に心が動いたからだ。自分がこうありたいと瞬時に感じたからだ。

「ビョングァン、俺の夢知ってるか?」
「いえ・・・。」

ビョングァンは少し目を丸くして首を振った。

「1つでも多く舞台に立つこと。今こうやってバイトしながらでも、チャンスは確実にモノにしたいと思ってるんだ。どんな舞台でも、自分のダンスを魅せることが出来るダンサーになりたいんだ。」
「僕はそんなセユンさんの背中を見ながらいつも思ってました・・・。セユンさんを目指して行きたいって。」
「お前もサボテンの花目指すのか?」
「え?」
「サボテンの花言葉は秘めたる情熱だ。あと燃える心、とかね。」
「枯れない愛、ってのもありますよ?」
「ん?」

きょとんとした顔をしてセユンがビョングァンを見つめた。数秒沈黙したあと、ビョングァンは徐にサボテンの鉢を抱えて、「帰りますね。」と足早にスタジオを出て行った。
閉まった扉をぼんやりと見つめながら、セユンは困ったように項垂れて、苦笑いした。

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苦虫を噛み潰したような表情でビョングァンは地下鉄の電車に揺られている。
自分でも耳が赤いのがわかる。何であんなことを言ってしまったのか。
『枯れない愛』あのタイミングはちょっと自分でも無いと思ってしまう。セユンの戸惑った顔が頭から離れない。走り出したいぐらい恥ずかしくて、身体を小刻みに揺すった瞬間、すぐ傍から「ああっ、痛っ。」という声がした。隣に座っていた若者が、肘のあたりを摩っている。

「ちょっと!何で電車にサボテンを乗せるんだよっ。」

突然そう怒鳴られ、ビョングァンはびっくりして「すみません。」と頭を下げた。いつも提げている紙袋を動揺のあまりスタジオに置いてきたのだ。揺れた瞬間、棘が隣の若者を直撃したらしい。
若者はしきりに肘を気にしている。

「サボテンって毒ないよな?」
「いや・・・多分・・・ないと思います・・・。」
「どうすんの、これまだちょっと痛いんだけど。化膿したりしたらどうすんの。」
「すみません・・・。治療代は僕が。」
「さすがの俺も中学生に治療費払えなんて言えないよ。それにしてもさ、学校の観察日記だか何だか知らないけど、危険物だから袋に入れろよ。」
「中学生ではありません。」
「・・・じゃ、高校生か?何年生まれだよ。」
「96年です。」

ビョングァンがそう言った瞬間、若者は固まった。慌てて目を逸らしながら「年上かよ。」と呟いている。周りの乗客がクスクスと笑い始めた。


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年下の男に電車内で罵倒されたのが、若干腹に据えかねたのか、ビョングァンはわざと治療費を払いたいから家族に相談させてくれと言ってみた。
若者は、あたふたしながら携帯電話で兄に電話している。

「あ、兄ちゃん。今すぐ地下鉄テチョン駅に来て。お願い。」
「何だよ、急に。」
「サボテン持った変な男に捕まったの。お願い、家族来ないと離してもらえない。」
「サボテン?はあ?」
「来ればわかるから、ねっ?」

人の少なくなった地下鉄出口付近のベンチに、2人は並んで腰かけている。ビョングァンは、黙って脚をぷらぷらさせながら携帯電話を弄っていた。

「あのお・・・。中学生と間違えたのが気に障ったなら謝りますから・・・。兄が来ても電車内で大声出したことは内緒に・・・。」
「僕が悪いから家族に謝りたいって言ってるだけだよ?」
「そこまでしなくても・・・・ほら、棘刺さった場所も、もうわかんないぐらい・・・。」

そうこう話しているうちに、焦った様子でドンフンが現れた。ビョングァンのサボテンの被害者は、ユチャンだったのだ。

「ユチャン、何があったんだ。・・・・・あ?君は・・・。」

ドンフンはそう言って、しばらく指をさしたまま固まっている。ビョングァンも「あ・・・。」と口を開いたまま、呆然としている。

「何?知り合い?」

ユチャンはきょとんとして、2人を交互に見ていた。

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屋台の明かりが温かく辺りを照らしている中、ドンフンとセユンは向かい合って酒を飲んでいた。
こうして2人で飲むのは大学生の時以来だった。セユンは静かに微笑みながら、焼酎の瓶を傾けている。

「そんな偶然あるんだな。」
「だろ?びっくりしたよ。俺のサボテンをお前から受け取ったビョングァンが抱えて電車乗って、それが俺の弟に刺さるんだよ?笑っちゃったよ。」
「ものすごい確率だよな。」
「てかさ、サボテン抱えて電車乗る、ってあの子相当変わってるのか?」
「いやそうじゃない・・・いつもはちゃんと袋に入れてたんだけどあの日は・・・。」

セユンはそこまで言うと口ごもった。どっちにしても、サボテンを持ち歩いていることには間違いないのだ。ある意味変わってると言えば変わっているのだろう。
そんなことを考えながら、ここ何日かスタジオに姿を見せないビョングァンのことが気になっていた。ほぼ毎日のようにスタジオで顔を合わせていたのに、だ。
あの時ビョングァンが口走った花言葉を、セユンはふと考えた。あれから会ってないのか・・・・・
ぼんやりしているセユンに、ドンフンが問いかけた。

「どうした?」
「ああ、いや、何でもないよ。焼酎飲み過ぎたかな。」

セユンが黒い髪をかきあげながら少し笑った。漢江から心地良い風が吹いて来る。ゆっくりとした時間が流れるのを、ドンフンが噛みしめていた時、テーブルに誰かがバンっと手をついた。
びっくりして顔を上げると、ジュンヒが引きつった笑みを浮かべて立っている。

「ジュンヒ。どうしたんだ?こんなとこで。」

思わずドンフンが立ち上がった。セユンも釣られたように立ち上がっている。ジュンヒは、セユンを見つめて微笑んだ。

「どうも。一度お会いしましたよね。セユンさんでしたっけ?元カレだか何だか知らないけど俺に断りもなくドンフン兄さんと酒なんか飲んでもらうと困るんですけどね。」
「ちょ・・・・!お前、何言ってんだよ。」

ドンフンが、慌ててジュンヒの口を塞ごうとするが、寸でのところで交わされた。セユンが戸惑ったように、頭を掻いた。

「あの、俺・・・元カレなんかじゃないけど・・・。」
「んまあ、自信持ってどうも元カレです、なんて言う男はいないっすよね。てか元カレでも何でもいいんです、俺にとっては。ドンフン兄さんと酒飲む時は俺も呼べって話です。」
「はあ。」
「この人酒飲むとどんだけエロくなるか知ってんすか?」
「ジュンヒ!お前いい加減にしろよっ。セユン、ごめん、今日は帰るよ。また今度な。」
「ああ、うん・・・。」

ジュンヒは強引にドンフンに引きずられるようにして、去って行った。セユンは、ふうと小さくため息をつくとまた席に座り、コップの中の焼酎を飲み干した。
携帯電話を意味もなく弄ってみる。画面の明かりが何となく虚しさを増長させる気がした。
その時、突然着信音が鳴りだした。電話の相手はビョングァンだった。

「・・・もしもし?」
「あ、あの、セユンさん?」
「ああ。どうしたんだ?最近・・・・レッスン室来ないけど・・・。」
「今、スタジオに来てるんですけど・・・・。鍵が開いてないから、前にいるんです。」
「え?あ、俺友達と飲んでたんだ。まだ待てるか?今から行くけど・・・。」
「待ってます・・・。」
「すぐ行くから。」

セユンの足はそう言いながらもう走り出していた。

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スタジオがあるビルは通りに面しているが、裏の通用口は街灯もなく真っ暗だ。ビョングァンは、じっと身動きひとつせず待っていた。
どんな顔をして会うべきか、ここ数日迷っていた。あの花言葉に対して、セユンがどんなふうに考えたのかも、想像できなかった。ただ、やはり一つだけ確信出来る気持ちは、セユンに対する信頼と尊敬が大きかった。
時間が過ぎるごとに、緊張感が増した。ビョングァンは自分の鼓動がありえないぐらい早くなっているのを感じる。どのぐらい時間が経ったのか確認しようと、腕時計を見た時、闇に足音が聞こえた。

「ビョングァン?」
「あ、セユンさん・・・。」
「ごめん、待たせて。何でこんな真っ暗なとこで待ってるんだよ。危ないだろう?」
「すみません・・・。」
「スタジオ・・・使いたかったのか?最近姿見せなかったけど、具合でも悪かったのか?心配したぞ?」
「あ、そうじゃなくて・・・。」

ビョングァンは後ろを振り返ると、紙袋からサボテンを取り出した。暗闇でもわかるほど、真っ赤に鮮やかな花が咲いていた。セユンは目を丸くして、ビョングァンを見た。

「咲いたのか?」
「はい・・・咲きました。何日か蕾だったから、咲いた時に突然見せた方がセユンさん驚くと思って・・・。」
「本当に咲かせたのかよ、びっくりだな。」
「もとは・・・・セユンさんの物ですけど・・・花を僕から贈ります。尊敬、って花言葉もあるんですよね?」

ビョングァンはそう言って鉢植えを差し出した。微かに震えているように見えた。セユンは、燃えるような赤を見つめながら、しばらく黙っていたがふと顔を上げた。

「こないだお前が言った枯れない愛、ってのはどこいった・・・?」
「・・・・あります・・・けど・・・。」
「枯れない愛もくれるのか?俺に。」

セユンの言葉に、ビョングァンは白い肌を染めて微かに頷いた。サボテンの花に負けないぐらい、鮮やかで強くて誇らしい存在だと、セユンは改めて感じた。

「俺もお前に枯れない愛を贈ろうと思う。だから俺の傍にいつもいてくれるかな。そうしたら、俺はいつまでも夢を追い掛けて行けるような気がするんだ・・・。」
「僕で良ければ・・・ずっと傍にいます。」
「ありがとうな、ビョングァン。こんなに綺麗な花見せてくれて。ああ、最高の夜だなあ・・・。」

セユンは夜空を仰いだ。
星の瞬きすら、いつもと違って見えた。

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「あのね、兄ちゃん。家出頻度が上がってるよね?」

呆れたようにユチャンは言うと、ベッドに不貞腐れて寝ているドンフンを枕でバシバシ殴っている。『酔うとエロくなる』という発言が、ドンフンの逆鱗に触れたとジュンヒからメールをもらったユチャンは、「そりゃそうでしょう。」とだけ返信した。
犬も食わないとされている痴話ゲンカを、無理矢理食べさせられている気分だ。
動かないドンフンにそろそろ飽きて来たころ、ベッドの上の携帯電話にメッセージが届いた。ユチャンはそっと覗いてみる。

『サボテンの花が咲いたよ。』

という言葉と共に、セユンとビョングァンが並んでサボテンの植木鉢を持って笑っている写真が添えられていた。

「何なのサボテン、サボテンって。・・・・・ふうん、サボテンの花ってこんな綺麗なんだあ。」

ユチャンは独り言を呟いて、その写真をしばらく見つめていた。そして「俺も育ててみよっかな。」などと言いながら、その辺に脱ぎ散らかしているドンフンの服をかき集め、椅子の背凭れにそっと掛けた。




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《作者後記》

今回の発作は連載を思いとどまりました。笑
過ちは繰り返しません。←どうせそのうち連載するだろ。
5/23にデビューしたばかりのA.C.E小説ですので、ほとんどの方が「知らん。」だと思います。
が、これはあくまでも作者の自己満足、作者が自分で残したかった作品ですので今超満足しています。笑

登場人物のプロフを書いておきますね。
あくまで作品内の参考までに。(画像向かって左から)

キム・セユン  1993年生まれ (WOW)
カン・ユチャン 1997年生まれ (Chan)
パク・ジュンヒ 1994年生まれ (Jun)←リーダー
キム・ビョングァン 1996年生まれ (Jason)
イ・ドンフン  1993年生まれ (Donghun)

彼らのデビュー曲【CACTUS(サボテン)】にちなんでサボテンをテーマにお話を書いてみました。
衣装がホットパンツという、ありえない惨状な彼らですが、私的には今では短パン衣装じゃないと物足りないまでになりました。
膝丈は今までもありましたが、ホットパンツは新しいですからね。
ダンスを極める男子の脚の筋肉って、こんな素晴らしいのかあと感心しながら拝んでいます。
ちなみに私は初見「こりゃ16歳かな?」って外見のJasonくんがお気にで可愛くてポケットに入れたいぐらいですが、ここ最近ドンフンさんがグイグイ来てます。←

あ、余談ですが私は数年前、ベランダでさほど手も掛けてないサボテンがある日真っ白な大きな花を咲かせた経験があります。
ちょっとした感動でした。しかしそれから一度も花を咲かせてくれません。
これを機に、もう少しサボテン達を大事にしてみようかなと思っています。

ジャンル:
小説
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3 コメント

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こんにちは👋😃 (月下美人)
2017-06-20 17:42:18
えぇ~~~!続き読みたいっ!(笑)
二人の痴話喧嘩がどうなったのか気になります♪(≧艸≦)

ほんと、すうぇんさんの書く小説ってどれも面白くて、そのグループを知らなくても全然楽しめるから大好き💓♥❤←突然の告白

さっそくチェックしちゃいましたよ~(笑)ジュンヒ君、なまらイケメンじゃないですか!?正統派っていうか…BTOBでいったらミニョク君みたいな超絶イケメン…久しぶりに『格好いい!』って叫んじゃいました(笑)
そして気になったジェイソン君ことビョングァン君❤可愛い!幼い!え?96?ちょ、まって!うりVIXXのバブと一歳しか変わらないの??嘘でしょ…?(震え)

すうぇんさんが『ポケットに入れて持ち歩きたい』って気持ち分かります(笑)
これからが本当に楽しみなグループですね~(*ノ▽ノ)
あ、連投ごめんなさい(笑) (月下美人)
2017-06-20 17:52:19
書こうと思って忘れてた(笑)といってもたいした事じゃないんですが💦💦

🌵の花って咲かせるのそんなに大変なんですねぇ(^_^;)私も若い頃(←ここ大事)小さな🌵を育てた事があるんですが、🌵→砂漠にいる→水いらん…と勘違いしてて枯らした経験が(笑)

昨日、可愛いから育ててみたくて無謀にもおじぎ草を買ったんです。そしたら、玄関先に置いておいたおじぎ草を息子の友達が触りまくって(笑)まぁ、子供からしたら面白い植物だし、仕方ないんですけどね( ;∀;)ショボンとしてたけど、これを期に逞しく育ってくれるでしょう(笑)
1話完結を連続で。笑 (すうぇん@作者)
2017-06-21 22:18:53

月下美人さん

コメントありがとうございます。
定期的に起こる発作(笑)小説にお付き合い頂きまして本当に感謝です。
続き、気になっちゃいます?w ドンフンさんのことだから、何だかんだメールだの電話だのに絆されて結局家出やめちゃうんですけどねえ。
1話完結、って宣言すると気楽なので(笑)このテで単発を繰り返す作戦で行こうかなとか思ってますが・・・←やはりか
突然の告白まで頂きましたし(笑)ホント恐縮です。書いてる私だけが楽しんでるような自己満足感が満載の今回の作品でしたが、ここからド新人クン達に興味持ってくれる人がいると嬉しいなあと思ってます。

ジュンヒさん、超美形ですよね。ミニョクさんにビッポのゴンチャンを足してSF9に混ぜ込んでみたようなお顔立ちで、本当華やかな人だなと思います。
彼、最年長ではないけど芸歴が長いのか何なのかリーダーやってますが、何となく見てると上の3人はふわふわしてて若干頼りなさげですwwww
マンネとポッケの妖精じぇいそんちゃんの2人がものすごくしっかりしてて、兄さん達を仕切ってる感じでした。

それにしても、ビョングァンくん、ヒョギのたった1個下とかありえないですよね。もうNCTdreamにでもいるレベルの童顔なんです。ベンベンやユギョムより年上とか、ええ!?ですよ。でも、ホント見かけによらずしっかりしてます。陰のリーダーなんじゃないかと思ってます。←色々怖い
久しぶりに可愛い新人クン見つけて、萌えハゲ散らかしてます。成長を見守るつもりで頑張りますw

サボテンの花ですが、あんまり手を掛け過ぎるのも良くないみたいなんですよね。でも、砂漠の植物だからと水を全く遣らないと枯れてしまうんですねえ。サボテンって枯れるんだwwww
うちのサボテンが開花したのも全然ノーマークでしたから、本当様々な条件が揃ったんだと思います。とりあえず太陽の光は大切みたいですね。
おじぎ草、可愛いですよね 私もホームセンターとかで見つけるととりあえず全部触って閉じさせて去る派です。←子供か 大きくなるんですかね?あんまり大きくなるのは居住環境のせいで好ましくないのですが・・・
てかうちは強風でほとんど植物育たないです(笑)。サボテンのような逞しいコ達だけが、我が家で生き残ります。

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