Kポアイドルで妄想小説書いてみる@すうぇん

今更ながら[花郎]を懸命に見てる。あの中で一番美形から遠いパク・ソジュンさん。なのに可愛い。

1話完結A.C.E小説 [CACTUS Ⅱ]

2017年07月07日 | 1話完結小説

もうあと数分で日付が変わろうとしている。
ドンフンは、部屋で1人ソファで寛ぎながら本を読んでいる。ジュンヒの帰りを待っているわけではないが、なかなか寝付けないでこうして起きているのだ。
ちらりと壁の時計を見て、『飲みにでも行ってんだろうな。』とドンフンが本を閉じた瞬間、玄関のドアが開いて途端に賑やかな男の声が響いた。

「ただいまあ~っ、ただいま帰りましたよ、パク・ジュンヒ無事生還致しましたああ、ハハハっ。」

ドンフンは呆れたように立ち上がると、玄関に向かう。靴を脱いでドアに投げつけながら、ジュンヒが満面の笑顔を見せた。

「あっ、そこにいるのは俺の可愛い恋人イ・ドンフンさんですねえっ。ただいまあっ、待ってた?俺のこと待ってたでしょ?」
「近所迷惑だ、ちょっと静かにしろ。」
「またまたドンフン兄さん、安定のツンデレ。俺のこと待ってたくせに。あ、ドンフン兄さん、部屋まで連れてって、おんぶでいいから。」
「自分で歩きなさいよ。」
「でしょうね。そう言うと思った。はいはい、パク・ジュンヒさんは自分で歩きます。」

ふらつきながらジュンヒはリビングに入る。ソファに倒れ込むように座ると、着ていたシャツを脱ごうと格闘を始めた。見かねてドンフンが手を貸すと、おとなしくじっとドンフンを見つめ始めた。

「飲むのはいいけどさ。人に迷惑かけちゃダメだろ。」
「ドンフン兄さん以外にはかけてない。」
「人、ってのに俺も含まれてんだよ、バカ。」
「こうやって兄さんが面倒見てくれるのが幸せで仕方ないのにさあ。それを俺から取り上げるわけ?ドンフン兄さんは可愛い顔して鬼だな。」
「そうかもね。」

ドンフンはそう言いながら、立ち上がった。袖を抜いてTシャツ姿になったジュンヒが、立ち上がりかけたドンフンの手を急に引っ張ったせいで、ドンフンはソファに倒れ込んだ。

「何だよ、危ないだろ。」

怒ったドンフンの唇が、ジュンヒのキスで塞がれた。ドンフンはすぐに唇を離して、ジュンヒの胸を叩こうとしたが、その振り上げた手はがっちりとジュンヒに掴まれてソファの背凭れに押し付けられる。
少し荒っぽく始まるキスに、ドンフンも抵抗する気持ちも消えてしまう。漂う空気感で、彼が本気で自分の身体を欲しているのかどうかは、長い付き合いでわかるのだ。

「ジュンヒ・・・ここでするのか?」
「うん。」
「ベッドの方が・・・。」
「ここがいい。」

ソファに押し倒され、ドンフンの上にジュンヒが馬乗りのような形になった。そしてドンフンの着ているTシャツを捲りあげ、覆いかぶさった。
ドンフンは、目を閉じてジュンヒの髪の毛を指で梳くように撫でている。早く次の行為に移って欲しいと少し身体を捩ると、ジュンヒの動きがぴたっと止まった。
少しずつ彼の身体の重みが増すように感じた。

「・・・ジュンヒ・・・?」
「・・・。」

ドンフンは、身体を少し起こしてジュンヒの顔を覗き込む。スイッチが切れてしまった子供のようにあどけない表情で、眠っていた。

「は?」

思わずドンフンは小さく声を上げる。途中で寝るか?少々乱暴に彼の身体をどけてみたが、起きる気配はない。寝息だけが虚しく部屋に響いた。
言いようのない屈辱感に、ドンフンはジュンヒを蹴り飛ばしたい衝動に駆られたが、自分は大人だという理性がそれを何とか抑えた。
何度もソファの上のジュンヒを振り返ったが、全く動かない。ドンフンは、天を仰いで自分の部屋に入った。

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ピンポン・・・ピンポン・・・

10数回目のチャイムでようやく玄関のドアが開いて、ユチャンが半開きの目を擦りながら顔を出した。

「兄ちゃん、いい加減にしてよ。1時過ぎてんだけど・・・。どうしたの?」

ドアを開けると現れた泣き顔の兄を見て、ユチャンは眠気も一気に吹き飛んだようだ。目を丸くしてドンフンを招き入れた。

「どうしたの、何かあったの?何で泣いてんのさ。」
「タクシー乗ったら急に悲しくなって・・・俺も自分でわかんない、何でこんな泣けるのか。」
「悪いもんでも食べたの?とりあえず座って。」

椅子に座らされ、ドンフンは何度も手の平で涙を拭ったが、あとからあとから零れる涙を止めようもなかった。
ユチャンがドンフンの前に水の入ったコップを置いた。

「飲んで、落ち着いて。」
「いらない。」
「今度は何なの?ジュンヒさんの浮気だったら半分諦めたってこないだ言ってたじゃん。」
「浮気の方がまだマシだ・・・。」
「はっ!?ジュ・・・ジュンヒさん何やらかしたのっ。」

大概の喧嘩の原因を何年も聞いてきたユチャンにとっても、浮気の方がマシだとドンフンが思うような悪さをジュンヒがしたのは驚きでしかない。もしかして今回は、笑って済むようなくだらない原因じゃないんじゃないかと、自然とユチャンも力が入ってしまった。

「け、警察沙汰とかないよね?え、まさか妊娠させたとかそんな・・・えっ?」

勝手に想像してパニックになりかける弟を見て、幾分ドンフンの涙も治まった。ドンフンは、一口コップの水を飲んで、ぽつりと呟いた。

「アイツ・・・。最中に寝やがった。」
「・・・と言いますと?」

ユチャンは、半笑いの顔でドンフンを覗き込んだ。予想していたのとは全く違う次元の答えが返って来たせいで、若干笑いそうになっている。

「だから・・・。途中で寝ちゃったんだよ、ジュンヒが。」
「何の途中・・・。」
「言わせるのかっ、弟相手にこんなことっ。」

ドンフンが突然怒りだしたが、ユチャンこそキレたい気分だ。深夜に起こされ、泣いている兄を心配した挙句、結局くだらない話を聞かされそうになり、怒鳴られたのだ。
ユチャンは、黙って大きく息を吐くと、そのまま自分の寝室に入ろうとした。

「あ、待てってユチャン。俺の話終わってないだろ。」
「そんな生々しい話聞きたくないし、兄ちゃんもしたくないでしょ。」
「しばらく俺ここに住むから。」
「お断り。」
「何でだよ、お前さっきあんな心配してくれたじゃないか。」
「忘れて。」
「ユチャン。」

ドンフンの制止も聞かず、ユチャンはドアをバタンと閉めてしまった。ドンフンは、唇を尖らせて椅子の上で膝を抱えた。思い出すとやっぱり悔しい。
酔っていたとはいえ、途中で眠ってしまうほど俺の存在は軽いものなのか。
そんなに魅力が薄れたのか、俺は。
高を括ってたけど、そろそろジュンヒは俺に飽きてきたのかもしれない・・・。
ぐるぐると頭の中を良くない考えばかり浮かんで回って行く。ドンフンの目からまた涙が零れた。何の涙なのか自分にもよくわからなかった。

結局膝を抱えたまま少し眠って、明け方ドンフンはユチャンの家を出た。いつものように数日世話になっても罰は当たらないと思っていたが、昨夜のユチャンの態度には少し自分も反省すべき点があると思ったからだ。
そもそも兄の威厳は今の段階で皆無なのは、よくわかっていた。

タクシーに乗って自宅に帰ると、東の空からちょうど太陽が現れた。
部屋のソファにはまだジュンヒが眠っている。Tシャツ姿で、半分ずり落ちそうになりながら眠っているジュンヒを見て、ドンフンは何となく微笑んでしまう。
寝室から持ってきたブランケットを、そっとジュンヒの身体に掛けてやると、「ドンフン兄さん・・・。」と小さく呟いた気がした。
金色に染めたジュンヒの髪の毛を、ゆっくり撫でてみる。
俺はジュンヒからの愛を受けて当然だとどこかで思ってるのかもしれない。
ジュンヒが俺にくれる愛情の半分も、俺は表現していないというのに・・・。

ドンフンはふとそんなことを思いながら、いつものように朝食を用意して、洗濯を始めた。
ジュンヒはカフェ勤務のために朝はさほど早くない。それでも、朝の支度はすべてドンフンの役割だった。
ジュンヒのために、朝からチゲを用意していると、背後でジュンヒが目を覚ました気配がした。ソファで寝ていることに自分で驚いて、「どうした?」と独り言を言っている。

「おはよう。」

ドンフンがそう言いながらソファに近づくと、ジュンヒが焦ったようにきっちり座りなおした。

「ド、ドンフン兄さん。俺、昨夜相当飲んでた?」
「ここで寝てた、って時点で想像つくだろ?」
「ああ、ごめん。また記憶ない。俺自分で帰って来た?」
「うん。」
「ああ、よかった。またドンフン兄さんに仁川まで迎えに来いとかわけのわからない電話してたかと思った。」

ホッとしたようにジュンヒが言う。そして何気にドンフンの顔を見たジュンヒは、心配そうに聞いた。

「兄さんも昨日飲んだの?」
「いや。」
「顔パンパンだよ。」
「・・・泣いたからね。」
「え?」

ジュンヒの顔色が、さっと変わった。ホッとしたのも束の間、ドンフンが泣くようなことを俺はやってしまったのか?と全く無い記憶を懸命にほじくりだそうと努力している。

「ど・・・どうして泣いたの?」
「お前が途中で寝たからだよ。」
「何の途中で?」
「ここで。ソファでお前がしたいって言うから、俺はベッドに行こうって言ったのに聞かなくてそれで・・・。まあいいか、ってなったのにお前途中で全く動かなくなって、見たら夢の中だったわけ。よく眠れるよね、ああいう状況で。」
「気のせいじゃ?」
「何の気のせいだよ。」

呆れたようにドンフンは笑って、キッチンに立った。慌ててジュンヒが飛びついてくる。背後からぎゅっと抱きすくめられて、ドンフンは身動き出来なくなった。

「ごめん。ごめんなドンフン兄さん。」
「いいよ、俺の中ではもう消化したから。俺にも悪いところはあるんだよね・・・。」
「ないないないない。悪いのは全部俺。」
「お前が泥酔してたのもあるけど・・・俺も飽きられても仕方ない態度だったかも。」
「飽きるとかそんな、兄さん。俺一回もドンフン兄さんに飽きたことなんかないよ。それどころかさ、昨日より今日の方がもっとドンフン兄さん可愛いなって思うんだから。」

ジュンヒの言葉にドンフンは笑った。たとえ嘘でも、信じたい言葉だった。ドンフンは、胸の前でぎゅっと組んでいるジュンヒの腕を解いて、くるりと振り返った。

「俺も好きだよ。ジュンヒ。」
「え?」
「1回しか言わない。」
「えっ、もう一回だけ。お願いしますっ。」
「聞き逃したお前が悪い。」

情けない笑顔で顔の前で手をこすり合わせるジュンヒを見ながら、ドンフンは心の底から彼を大切に思っていた。

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レッスンスタジオの床をモップ掛けしながら、ビョングァンは何度も入り口のドアを見た。
いつもならセユンが先に来て、鏡を拭いたりモップ掛けをしたりしたあと、自らダンスの確認をしているはずだ。
何かあったのかと電話してみようかと思った瞬間、ポケットの中の携帯電話が鳴って、ビョングァンは慌てて通話ボタンを押した。

「もしもし?」
『ああ・・・ビョングァン?』
「ええ。どうかしましたか?今日遅いなって思って・・・。」
『ごめん。今日お前が代わりにレッスンしてくれないかな。』
「どうしたんですか?」
『熱出てて・・・行けそうにない。』
「熱?病院は?」
『寝てれば治るんだけどね・・・。悪いけど、頼んだよ。』
「わかりました。あの、レッスン終わったら僕、行きます。」
『いいよ、来なくて。風邪だったらうつるといけないだろ。』
「大丈夫です、行きますからセユンさんの家の住所をメールしてください。」
『じゃ、一応送っとくけど・・・。来いって意味じゃないからね。心配しないで。』

電話はそれで切れた。
ビョングァンは、心配そうにしばらく携帯電話を眺めていたが、レッスン生がそろそろ来る時間だと気付いて、慌てて準備に取り掛かった。

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スタジオを出るとすっかり夜も更けていた。ビョングァンは非常口の施錠もしっかりとして、足早に階段を降りる。
携帯電話にはセユンから、住所がメールで届いていた。
ビョングァンは、そこにたどり着くまでにどこで何を買っていけば効率がいいかを瞬時に考えながら、歩き始めた。セユンのアシスタントとしてレッスンスタジオに来るようになってもう1年以上になるが、セユンの家には行ったことがない。
セユンに預かったサボテンの花を咲かせたのがきっかけで、2人の距離は縮まったかのように思えたが、セユンとはやはり夢を追う同志のような関係といった方が良かった。
それ以上の想いがあるにも関わらず、お互い何も口に出来ないまま、ただ一緒にいる時は楽しかったし、幸せだと思っていた。

ビョングァンはスーパーの袋に大量の食料品や薬を買い込んで、セユンの住むマンションにたどり着いた。狎鴎亭から地下鉄を乗り継いだ舎堂という街にある。
エレベーターで5階まであがり、きょろきょろしながらビョングァンはセユンのメールの通りの部屋番号を見つけた。
インターホンを押してみるが、応答は無い。何度か鳴らしてビョングァンは、セユンの携帯に電話を掛けてみた。が、留守電モードに切り替わってしまった。
ドアの暗証番号に指を伸ばしてみるが、番号を知る由もなければ想像もつかない。ふと考えれば、ビョングァンはセユンの誕生日すら知らなかった。
玄関ドアの前で、途方に暮れながらビョングァンはまた心配を募らせる。
もしかしたら、セユンさん高熱で倒れて意識が無いのかも・・・!
咄嗟にビョングァンはドアを拳で何度も叩いた。

「セユンさん!?大丈夫ですかっ?開けてくださいっ。」

大声で呼びながらビョングァンはドアを叩いた。しばらくして隣のドアが開いて、お婆さんが顔を出した。

「こんな時間に何だい、騒々しい。」
「すみません。僕、ここに住んでるキム・セユンさんの友人なんですけど、セユンさん体調が良くないって連絡があって、それで心配で来てみたんです。」
「セユンは私の孫だよ。体調が悪いって?」
「あ、お祖母ちゃんでしたか、すみません。僕、キム・ビョングァンといいます。」
「ちょっと待ってなさい、鍵持って来るから。それよりアンタ、こんな時間にウロウロしてちゃダメだよ、学生でしょう?」
「あ、いえ、僕は・・・。」

ビョングァンが身分証明書を見せようとしたが、セユンの祖母は鍵を取りに部屋に戻ったようだ。そしてすぐに戻って来て鍵を開けた。

「ったく、暗証番号を勝手に変えるもんだから。はい開いたよ、セユン。いるのかい?どこが悪いの?」
「お、お邪魔します・・・。」

ビョングァンも祖母の後について部屋に入った。
寝室のベッドで、布団を首まですっぽりかぶってセユンは眠っている。耳にイヤホンを突っ込んでいるせいで、外の音が聴こえないようだ。

「セユン。大丈夫かい?」

セユンの祖母が、セユンの頬をぽんぽんと撫でた。薄っすらと目を開けたセユンは、目の前に祖母とビョングァンが心配そうな顔を並べているのに気付いて、慌てて身体を起こした。

「お、お祖母ちゃん。」
「熱があるのかい?まったく心配させないでおくれよ。この子、心配して来てくれたんだよ。お前が教えてるレッスン生だか何だかの子供だろう?親が心配してるから、家まで送り届けた方がいいのかい?」
「あ、あの、お祖母ちゃん、僕、もう20歳過ぎてるんです。」
「ああ?大人かい?」
「ええ。一応・・・。」

祖母とビョングァンのやりとりが面白くて、セユンは熱に浮かされながらも笑ってしまった。

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黙々と冷蔵庫にドリンクやプリンなどを詰め込んでいるビョングァンを、セユンはソファに座って眺めている。額にはビョングァンが買って来た解熱用のシートを貼られていた。

「寝てなきゃダメですよ。」
「お前が来てくれたから、何か楽になった。」
「心配しましたよ・・・。電話にも出ないし、チャイム押しても反応ないし。」
「ゴメン。」
「隣にお祖母ちゃん住んでてよかったです。」

ビョングァンはドリンク剤を1本セユンに手渡して、傍に腰かけた。

「改めて思ったんですけど・・・。僕、セユンさんのこと何にも知らないんだな、って。」
「え?」
「玄関のドアの暗証番号、誕生日だったりするのかなって思ったけど。それすら知らないんですよね、僕。」
「5月15日だよ。覚えといてね。あ、でも暗証番号はそうじゃない。こないだ変えたんだ。」
「お祖母ちゃんが言ってました。」
「お前の誕生日に変えたんだ。」

セユンはそう言って少し頬を赤らめた。

「僕の誕生日知ってたんですか?」
「知ってるよ。アシスタントになる時履歴書みたいの書いただろ。」
「ああ。職権乱用ですよ?」
「聞いたら何で?って変に思うかなと思って。」

セユンは照れくさそうにそう言って頭を掻いた。改めて部屋を見回すと、至る所にサボテンの鉢植えが置いてある。珍しい形の物もあって、ビョングァンは興味をそそられた。

「こんな形のサボテンもあるんですね。」
「珍しいの集めてるんだ。」
「あ、これ・・・。」

ビョングァンは窓辺に置かれたサボテンを手にした。自分が一心同体のように一緒に生活して咲かせたあのサボテンだった。植木鉢に何かマジックで書かれてある。

『大好きなビョングァンが咲かせてくれたから、一生大事にする。』

ビョングァンは振り返った。セユンは、ソファの上でうとうとしているようだ。さっき飲ませた解熱剤が効いて来たのかもしれない。
静かに傍に座って、しばらくセユンの寝顔を見つめる。初めて見る寝顔にビョングァンの心臓は激しく音を刻んだ。
僕の誕生日を玄関ドアの暗証番号にしてくれた・・・
大好きなビョングァンって書いてくれた・・・
小さな事実を集めれば、セユンの大きな愛が伝わって来る。普段なかなか本当の気持ちを表現してくれないセユンに少しの不安を抱いていたビョングァンは、そんな自分を愚かだと思わず微笑んでいた。

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日曜の午後。
部屋の掃除をしていたセユンは、ふとビョングァンの育てたサボテンの鉢植えを手にした。
植木鉢に何か書き足されている。

『セユンさん、僕も大好きです。』

セユンの顔が思わず綻んだ。耳が赤くなるのが自分でもわかる。
俺も結構いい歳なんだけど、これって恋って言えるのか?
セユンは心の中で自問自答している。こんな悩みを解決してくれそうな男が1人いることを思い出し、セユンは携帯電話を手にした。

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「ああ、セユン、元気か?」

カロスキルにあるカフェ[A.C.E]のカウンターで珈琲を飲みながら、ドンフンはセユンからの電話を受けた。
カウンターの中で仕事をしているジュンヒの眉がぴくりと動いた。彼は一流のバリスタだ。
腕はもちろんビジュアル目当てでたくさんの女性客がカウンターに連日群がるのだが、ドンフンが来店している間は、何故か女性客が近寄らない。
目に見えない妙なオーラが出ているんだ、とジュンヒはいつも嬉しそうに笑った。

「今から?いいよ、じゃあ俺が今いる店においでよ。地図送るね。ジュンヒの職場なんだけど。ん?ビョングァン?誰それ。ああ、あのサボテン咲かせた子?いいよ、連れて来いよ。じゃあな。」

電話を切ったドンフンは、ちらりとジュンヒを見て笑った。

「ここに呼ぶんだから問題ないでしょ。変に隠れて会うとお前が元カレだ何だってまた騒ぐからね。」
「自ら監視下に入るとはいい心がけで。」
「お前に疑われるようなこと微塵もないから。てかお前と一緒にすんなよ。」
「いらっしゃいませ。」

都合が悪くなるとジュンヒは、来店して来た客や、遠巻きにぽーっとした表情で自分を見ている女性客に愛想を振りまいている。ドンフンは呆れたように笑って、ジュンヒの淹れた珈琲を大切に味わった。


しばらくすると店内にセユンが現れた。

「セユン、こっちこっち。」
「ああ、いたいた。オープンカフェが気持ちいいのに、何でカウンター・・・・ああ、どうも。」

セユンがカウンターの中からいつかの夜に浴びたような殺気立った視線を感じ、視線を移すと最高の作り笑顔でカップを磨いているジュンヒがいた。セユンは戸惑った笑いを浮かべてぺこりと頭を下げた。

「いらっしゃいませ。ご注文どうぞ。」
「じゃ、カフェラテを・・・。」

セユンはドンフンの隣の椅子に座りながら、言った。ドンフンの恋人が何の仕事をしているかなど聞いたこともなかったセユンは、物珍しそうにカウンターの中のジュンヒを見ている。ドンフンが夢中になるのも頷けるぐらい、やはり非の打ちどころのない美形だった。

「一緒じゃなかったのか?ビョングァンと。」
「うん、ここで待ち合わせすることにした。」
「ふうん。デート?」
「え?そんなんじゃないよ。何でだよ。」
「サボテン咲いたって送って来た写真、いい感じだったからさ。あ、ジュンヒ、あのサボテン花咲いたんだよ、言うの忘れてた。」
「俺特に興味ないわ。」

ジュンヒは真顔でラテアートを作りながら答えた。何度もあの針の餌食になってるジュンヒは内心相当な恨みとトラウマがあるのかもしれない。


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携帯電話の道案内アプリを見つめながら、ビョングァンは歩いている。

「A.C.E・・・?確かこの辺だけどな・・・。あ、これか。」

店の前で立ち止まって、ビョングァンは中を覗いてみる。オシャレなカフェに1人で入ることはまずないので、何となく緊張した。が、カウンターに座っているセユンの姿を見つけると、その気持ちも吹き飛んだ。
店内に入ろうと足を踏み出した時、向こうから歩いて来た若者と目があった。

「あ。」

ビョングァンが思わず声を上げると、若者も目を丸くして「うわっ。」と驚いてみせた。
地下鉄の車内でサボテンが腕に刺さったと揉めたユチャンだった。
あまり関わりたくない様子で、ユチャンは苦笑いしながら近づいて来る。

「こんにちはあ。」
「どうも。」
「偶然にも程がありますねえ。」
「そうだね、この店に来たの?」
「ええ、まあ。あ、デートか何かの待ち合わせですか?」
「そ、そんなんじゃないよ。」

ビョングァンは大げさに手を振って否定している。

「まあ、頑張ってください。俺、ここのバリスタに用があるんで。」

ビョングァンに興味を示すでもなく、ユチャンは勇んで店内に入って行った。

「いらっしゃ・・・おお、ユチャン久しぶりじゃん。」

ジュンヒの言葉に、ドンフンがびっくりしたように顔を上げて、店の入り口の方を見た。ユチャンが笑顔でカウンターに近づいて来たが、目は笑っていない。
すぐ後から入って来たビョングァンに気付いて、セユンは小さく手招きをした。
ドンフンが動揺を隠すように、立ち上がった。

「な、何でか俺の弟まで登場したけどせっかくだから紹介しとくよ。えっと、コイツが俺の弟のユチャン。セユンお前会ったことなかったよな?」
「あ、うん。話はよく聞いたけど。俺はキム・セユン。ドンフンとは大学時代の友達で・・・。」
「はじめまして、兄が、こんな兄がいつもお世話になってます。」

ユチャンはぺこりと頭を下げた。『こんな』と強調されたことにドンフンは気付いてないのか、ニコニコしている。
セユンは振り返ってビョングァンの腕を引いた。

「彼は俺と一緒にダンスを教えてる、キム・ビョングァン。えっと、ドンフンとユチャンは知ってるんだよね。あ、バリスタの彼はドンフンと一緒に住んでる・・・」
「パク・ジュンヒです。よろしくな。ちなみにただの同居人じゃないよ、深い仲だから。深い仲。」

嬉々としてジュンヒがビョングァンに耳打ちするポーズをして言う。ドンフンは咳払いをして赤くなった顔を手のひらであおいでいる。
しかし和気藹々としそうな雰囲気を、一掃するようにユチャンが話を切り出した。

「ちょっと。そんな楽し気に深い仲とか言ってる場合じゃないから、ジュンヒさん。」
「何が?」
「深い仲ならそれなりに兄ちゃんのこと大事にしてもらわないとっ。」
「これ以上俺に何を?」
「こないだ夜中に泣きながら俺んち来たんだからね?もしかして無かったことになってるの?」
「泣きながら?何の話だよ。」

ジュンヒはびっくりしたようにドンフンを見た。ドンフンは慌ててユチャンの手を引っ張って制止しようとした。
しかしユチャンは、その手を振り払って前のめりになる。

「ジュンヒさん、浮気は100歩譲っても、最中に寝るとかやめてくださいよ。そんな話兄貴から泣きながら聞かされる俺の身になったことあります?深夜ですよ、深夜。」

ドンフンが真っ赤になって、店内の客に平謝りでぺこぺこ頭を下げて、必死でユチャンを黙らせようとした。

「ドンフン兄さん、あの夜ユチャンの家に行ったのか?俺が酔っぱらって寝てる間に?」

本気でびっくりしたようで、ジュンヒは呆然とドンフンを見ている。
カオス状態の3人を、セユンとビョングァンは引きつった顔で見つめていた。彼らと友人だという事実を無かったことにしたいと一瞬思うほどくだらない内容の話と勢いに、制止しようとしてもタイミングがわからずセユンは眉間に皺を寄せて固まった。
ちょっとした恋愛相談に乗ってもらおうかとドンフンに連絡したものの、そんなレベルなどとうに超越したカップルが目の前にいる。
しかも話の内容がビョングァンの教育上どうもよろしくない。

「俺も我慢してたけど、今回のは頭来たから直接言わなきゃ、って店に来たんです。てか兄ちゃん!あんなに泣いて浮気の方がまだマシだあなんて喚いてたのに、結局休みの日までジュンヒさんの顔見に来てるじゃないかっ。あと数時間したら帰って来るのに家で待ってりゃいいじゃないかっ。」
「だってバリスタの制服着てるジュンヒも見たいもん・・・家で着てくれないしさ。それに俺がここにいると悪い虫がつかないんじゃないかなあって。」
「そういうとこ!兄ちゃんのそういうとこがこのバリスタを図に乗らせてるわけっ。」
「ちょ、ユチャン、そのへんにしとこうか。店内がざわついてる。」

ジュンヒがカウンターの中であたふたし始めた。セユンはそっとビョングァンの手を引いて、「で・・・出ようか、とりあえず。」とその場を離れた。

黙って数百メートル歩いたところで、2人はずっと手を繋いでいたことに気付いてびっくりして飛び退いた。

「僕まだ注文もしてなかったのに。椅子にも座れなかった・・・。」
「俺のカフェラテも出て来なかった。」
「何を揉めてたんですか・・・?あの人達。」
「くだらな過ぎて俺もよくわかんない。」

セユンはそう言って微笑んだ。さっきまで繋いでいた手の感触がまだ残っている。

「別のカフェ行きましょうかあ。」

とキョロキョロしているビョングァンの横顔の純真さに、セユンは改めて甘い気持ちを抱く。ドンフンを反面教師に、ゆっくりと2人で歩いて行くのもいいよね、と薄っすらと暮れていく空を見上げながらセユンは笑顔を見せた。



END

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[作者後記]

またやっちゃったあ。笑
あー楽しいー。ストーリー考えなくていい単発楽しいー。
このバカバカしさ感が、新人さんの初々しさやほのぼのさと相まって・・・←営業妨害
名誉のために言うと、ジュンヒさんはこんな人じゃないはずです。きっと。
ただ顔が綺麗なせいで、私が全力でイジりたいだけです。
すべては愛です、愛。

てか無駄に長い。笑
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小説
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