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西武鉄道 40000系電車~LONG/CROSS可変座席を装備した地下鉄乗入車両

2017-05-12 | 鉄道[首都圏・私鉄等]

3月末に東京メトロ有楽町線・副都心線と相互直通運転実施各線区(みなとみらい線・東急東横線・西武池袋線・東武東上線)でダイヤ改正を実施、その際には東武東上線を除く各線区において「S-TRAIN」と称する有料列車の運行を開始した事は大々的に取り上げられ、特に東急とみなとみらい線にとっては運転日限定ながらも初の本格的な有料列車運行となっています。
(但しみなとみらい線内のみのS-TRAIN乗車は不可)


この「S-TRAIN」は西武鉄道が東京メトロ・東急乗入用に新造した新形式・40000系を用いて運行しており、ホームドアを装備した地下鉄線や同種規格の東急東横線などに直通運転を行う事もあり、有料列車ながらも車体長20m級の両開き4扉車が用いられており、この規格の有料列車は東武鉄道が東上線内で運行している「TJライナー」に次いで2例目となります。

西武池袋線と東武東上線は共に池袋を起点に西へ向かう路線、数㎞程度の間隔で近接している地域も多い上に、共に東京メトロ有楽町・副都心線と相互直通運転を行っていますので、西武の「S-TRAIN」は東武が運行する「TJライナー」の影響を大いに受けたのでは…という気もします。

地下鉄直通運転を行う辺りは、小田急が千代田線直通で運行しているロマンスカーの影響も受けているのでは…と推測され、東京メトロ側も千代田線有料列車である程度の実績を積んでいる事で、有楽町・副都心線でも新たに有料列車(以前不定期で有楽町線内を運行していた「ベイリゾート号」を除く)を運行する事に対し積極的な姿勢を示せたのでは…と感じます。
(この点2つの空港連絡輸送を抱える都内の標準軌架線集電式某線は、有料列車需要が最も見込めそうな路線にも関わらず消極的と言わざるを得ない感もあり、事業者の差異が大きく表れている気もします)

ちなみに40000系は設備的には東武が「TJライナー」で運行している50090系とほぼ同等のLONG/CROSS可変座席を装備した車両で、有料列車以外でも運用される事もありますが、現在有料列車以外での運用は西武線内列車が大半を占めており、他社線内では有料列車以外の列車で乗車できる機会はまだ少ないのが現状です。

ただ他社線内で一般列車としての運用も皆無ではなく、その気になれば有料列車以外で乗車する事も可能で、MAKIKYUは今月初めて40000系に乗車しましたが、その際も東京メトロ有楽町線~西武池袋線の直通列車でした。

 
乗車した列車は全区間各駅停車、MAKIKYUが乗車した有楽町駅から終点所沢まで先着(複々線区間での特急レッドアロー追い抜きを除く)という、西武池袋線ならではとも言えるなかなか素晴らしいダイヤでしたが、急行などの優等列車ではなく各駅停車と言う事で新型車の乗り心地を存分に堪能するには絶好とも感じたものでした。

車内へ足を踏み入れると、中央部が高くなっている天井は独特で、単に既存車両を優等列車兼用にしたのではない事が感じられたものですが、蛍光灯を中央部に寄せて配置している事もあり、地下鉄線内走行中の車内は、場所によって少々暗いと感じたのは難点です。

化粧板は基本的に柄なしのシンプルなモノで、先代一般車の30000系(西武線内専用車)と比べても簡素な印象を受けたものの、車端部分に木目を配しています。

車端部分の木目を引き立たせるために、化粧板は敢えてそれ以外の部分をシンプルな仕上げにしたのか気になる所で、また鳴り物入りで設置した空気清浄機(プラズマクラスター)の存在を引き立たせるためなのか、これを非常に目立つ形で設置しているのも印象的でした。


座席配置は各駅停車での運用で乗車した事もあり、有料列車運用時のCROSSモードではなく、立席空間を広く確保できるLONGモードとなっており、CROSSシート派の方々は渋い顔をするかも…と感じたものでした。

ただ「S-TRAIN」で有楽町~所沢間を乗車すると普通運賃(定期券等の利用も可能)の他に510円の座席指定券が必要となりますので、座席の向きと停車駅が異なるだけで座席指定券不要ともなれば、新型車両試乗としてはかなり乗り得とも感じたものでした。


ドア間にある2人がけのLONG/CROSS可変座席は、構造上クロスモードにした際に窓側の足元がやや狭くなってしまうのは既導入実績のある近鉄や東武などと同様ながら、専ら一般列車として用いている近鉄はともかく、TJライナーでも運用される東武50090系と比べても座席の詰物はやや柔らか目と感じたものです。


車端は3人掛けのハイバック型ロングシート、この配置も東武50090系と同等ですが、車端ロングシートの各座席間とLONG/CROSS可変座席でCROSSモード時の窓側となる壁面には充電用コンセントも装備されており、この辺りは最新型らしい設備とも感じたものです。


このコンセントは西武沿線をはじめ、首都圏各地の電源周波数(50Hz)ではなく西日本向けの60Hz、60Hzである事を示すステッカーが見受けられたのも特徴的でしたが、どの様な経緯で60Hzになったのかも気になる所です。
(さすがに乗客の大半が車内で用いる電化製品が60Hz用だからという事はないと思いますが…)


10両編成の4号車には車椅子対応型のトイレも設置、これは土休日にみなとみらい線~(東急東横線~東京メトロ副都心線~西武池袋線)~西武秩父線に跨る長大列車が設定されている事なども一因かと思いますが、地下鉄線内を運行する両開き4扉車でトイレを装備している車両は、他にはJR九州の303・305系(福岡市営地下鉄空港線に乗入)程度ですので、地下鉄線内を運行する車両の中では、異色の設備とも言えます。

トイレを装備していても、40000系とほぼ同種のLONG/CROSS可変座席車両が活躍する近鉄大阪線の一部列車では、締切として使用できない状況になっている事もありますが、40000系はMAKIKYUが乗車した際は各駅停車ながらもトイレは使用可能な状態となっており、乗車距離や時間を考慮すると必須の装備とまでは言えないものの、使えると便利とも感じたものでした。

 
また新木場/元町・中華街方の先頭車は、乗務員室背後の客ドアと次ドアの間の窓を非常に大きくした上で外側は窓を黄色く囲み、簡易腰掛や車椅子スペースを兼ねたフリースペース「パートナーゾーン」が設置されており、地下鉄線内を運行する一般列車でも用いられる車両としては、極めて異色の設備とも言えます。


パートナーゾーンを際立たせるため、つり革の吊り輪や床材、化粧板などを他の区画とは異なるものにする程の徹底ぶりで、一般列車でたまたまやって来た40000系に乗車した予備知識のない乗客がこの空間を見たら、相当驚くのでは…とも感じたものでした。

40000系は車両自体の異質性に加え、運用形態も非常に特徴的で他に類を見ないものとなっており、非常に特徴的な存在と感じますが、有料列車での運行時は複数社線跨ぎでの運行となり、社線毎(線内乗車不可のみなとみらい線を除く)に座席指定料金を要するため、設備面なども考慮するとワンコイン以上の料金を支払うともなれば…とも感じてしまったものでした。

特に自由が丘(目黒区)~石神井公園(練馬区)間でS-TRAIN乗車ともなれば、23区内のみの移動にも関わらず運賃以外に860円もの座席指定料金を要する事になり、26.3㎞の移動に1440円も費やす事になります。

S-TRAINの座席指定料金を加えてしまうと、ほぼ同距離かつ首都圏の中では極めて高額な運賃事例ともいえる浅草~白井(押上・京成高砂経由)間26.2㎞の1020円をも遥かに凌ぐ状況ですので、複数社線跨ぎ乗車でのS-TRAIN座席指定料金に関しては、座席グレードなども考慮すると今後見直しの余地もあるのでは…と感じたものでした。
(ここで記した運賃額は10円単位のきっぷ運賃・1円単位のIC運賃適用だと若干割安になります)