同僚の留美子とは同じ大学の出身で、学生時代に接点はなかったが、
同じ部署で仕事をするようになって、留美子が1年先輩だということが分かった。
一年先輩でも干支が一緒で、つまり同い年ってことなのだ。
入社当時同じ部署の留美子は何だか理系女子の代表みたいで堅い感じで近寄りがたい、
そんな雰囲気を感じていた辰雄だったが、
プロジェクトチームの暑気払いの席で先輩後輩の関係だと分かってから敷居がなくなり、
今までが嘘だったかのようにフレンドリーな関係になった。
留美子は辰雄に敬語は止めるように言い、辰雄ももちろんそれを喜んで受け入れた。
職場の目の前にあるコンビニでコーヒーを入れながら留美子が言う。
ねぇ辰雄君、いろいろな病気や疾患を治療する医療技術は日進月歩でさ、
心臓や脳なんかメスを入れたりできないところでもカテーテルを通して薬物やステントを入れるよね、
細胞をつまんで採取してくることだってできるし、
放射線や磁力線を使った検査設備で体のあらゆる部分を立体的に見られるようになったわ。
僕の子どもの頃のレントゲンといったら検査ごとにフィルムを取替。感光、現像してから見るという方法だったし。
大きなフィルムをライトボックスに挟み医師かそれを見ながら患者に説明したでしょ、
その姿がいかにもお医者さんって感じがしたなぁ。
今じゃ、田舎の小さな診療所でも映した画像をそのままパソコン画面に表示して、
お医者さんとリアルタイムで確認できるようになってるし。
ねぇ辰雄君、今日一緒にご飯食べ行かない?