ビールを飲みながら考えてみた…

日常の中でふっと感じたことを、テーマもなく、つれづれなるままに断片を切り取っていく作業です。

「iTunes」が「i-mode」に接続される日

2005年07月01日 | コンテンツビジネス
携帯先進国・日本を見てか見ざるかは知らないけれど、携帯と音楽プレイヤーを共通化したいという思いは世界共通のもののようだ。cnetの記事によると「iTunes」の最新バージョンには携帯を意識した機能が搭載されているとのこと。

実は携帯電話対応済み?--iTunesの新バージョンに隠されたヒント

「携帯を音楽プレイヤーとして利用する」と言っても、こういう形ですというのが決まっているわけではない。個人的には3っのパターンに分類して考えることができるのではないかと思う。1つ目が、通信キャリアのNWを通じて携帯電話に直接楽曲をダウンロードするもの。所謂「着うたフル」のようなモデルだ。これの特徴としては、「携帯」単体で完結できるというところ。また「通信料金定額化」の流れの下、通信キャリアにとっては新しい収入源となるし、そのためのイニシアティブを握ることができる。

これに対して、「携帯」を再生プレイヤーとして位置付け、流通経路を切り離したモデルがある。あくまで楽曲などのファイルは、インターネットからPCにダウンロードさせ、PCから携帯に転送する。いざ携帯で再生しようとすると、通信キャリアの課金・認証システムが作動し、課金されるというもの。

これだと「楽曲ファイル」をダウンロードするのため通信料は実質上発生しない。但し利用するためにはPCとの接続が必要となる。日本ではボーダフォンが「ボーダフォンライブ!BB」として動画コンテンツをこのモデルで提供している。

同じようにPCにダウンロードし携帯に転送して利用するモデルではあるものの、課金・認証については通信キャリアを利用しないモデルがある。つまり再生する時に課金するのではなく、インターネットからPCにダウンロードする際に課金するというモデルだ。2番目のものとの一番の違いは「楽曲配信」のイニシアティブを通信キャリアではなく、PCへダウンロードさせる側が持っているということ。

ではiTunesはどのモデルに近いのか――普通に考えれば3番目のモデルであろう。CDへの書き込みと同じように、携帯電話のメモリーに対して行うのだ。

以前、「携帯向け音楽配信サービスの日本的事情」「「iTunes携帯」を巡るそれぞれの思惑」でも書いたが、iTunes互換の携帯電話がもう1つ進まないのは、この3のモデルで進めたいapple社とイニシアティブの握りたい通信キャリア側の事情の違いだろう。

携帯向け音楽配信サービスの日本的事情
「iTunes携帯」を巡るそれぞれの思惑

実際、3のモデルでは通信キャリアは(独占的にそのキャリアでのみiTunesを提供できない限り)なんのメリットもない。

しかし8月、もしくは秋口にでも日本上陸を果たすであろう「iTMS」が日本でも欧米ほどに成功できるかというと、そこには大きな障壁がある。「日本は携帯先進国である」ということだ。

「iTMS」も「MSN Music」も日本では成功できない?!

これは「iTMS」だけの問題ではなく、基本的に2のモデル、3のモデルで提供する場合の共通の課題として、日本では「PC」中心ユーザーと「携帯」中心ユーザーとの間の「隔たり」があげられる。「携帯」ユーザーと言うのは「PC」ユーザーに比べ、コンテンツ購入への意欲が高い。その一方でPCを利用せずに「携帯」のみ利用するユーザー意外と多い。この「デジタルコンテンツにお金を払う」有料顧客を、2のモデル、3のモデルでは取り込むことができないのだ。

しかし1のモデルが万全かというとそうでもない。「音質」「使い勝手」いずれも決して言い訳ではない。まして、これからの潮流として、利用するデバイス・メディアに関わらず「コンテンツ」そのものの「ライセンス」を個人が購入するという形態が中心となっていくのであれば、「携帯」でしか使えない1のモデルというのは、一時的なものでしかないのかもしれない。

個人的には、ネットワークを1つのHDDとしてあるゆるメディアやデバイスにダウンロードが可能な形態、コンテンツに対しての「ライセンス」を管理する形態というものを整備しない限り、1、2、3のモデルのいずれもが成功しないのではないかと思う。そういう意味では、3は野心的な取組みではあるが、日本では難しいのだろう。

と、ここではこのように書いたが、実は大番狂わせがある可能性も感じている。

つまり1のモデルはauが率先的に実現し、2のモデルはボーダフォンが目指しており、iTunes携帯の実現は難しい。しかし既にすっかり「音楽」分野に出遅れてしまった「ドコモ」が「音楽」分野で巻き返しを返すとしたら、「課金」諦めた上で、携帯にiTunesとの接続機能を追加するという可能性はあるのではないだろうか。つまり「楽曲」というコンテンツ課金での収入はappleに譲るものの、その代わりシェアの獲得を目指すという考えだ。

そうは言ってもドコモ陣営にはSDカードの普及を目指す「松下」もいるし、未だにATRAC3を諦めきれないSONYもいる。まぁ、一筋縄ではいかないのだろうが、いずれiTunesとの接続をどうするかというのは悩ましい問題となるのではないだろうか。