ビールを飲みながら考えてみた…

日常の中でふっと感じたことを、テーマもなく、つれづれなるままに断片を切り取っていく作業です。

【演劇】DULL-COLORED POP「河童」

2014年07月19日 | 演劇


演劇の魅力というのは、その「生」の空気感にある。物語の良し悪しであれば、演劇でなくても小説でも映画でもいい、役者の演技の質というだけならベストなシーンばかりを集めた映画の方が上かもしれない。しかし「生」であること、役者自身が放つパワーや観客も含めた一体感というものは、映画では味わえない絶対的な魅力がある。

と、同時にこの魅力は、意識するしないにかかわらず、観客に参加することを強要する。役者のエネルギーを受け止めるだけでもパワーが必要となるし、いったん物語に取り込まれれば没入感は相当なものだ。そして残念なことに、それだけ観客に参加することを求めるにも関わらず、すべての芝居が面白いわけではない。

その意味で、役者同士がうまくフィットしていない芝居ほど苦痛なものはない。それぞれの役者は頑張っているのだろうが、バラバラのまま観客にエネルギーを受け止めてくれと言われても、観客の側は感情移入もできないし、噛み合わせの悪さが不快感を倍増させる。初日の芝居がイマイチなのは、役者陣(とスタッフ)の息がもう一つ合わないことが多いから。

長々と書いたが、ダルカラの「河童」の初日を観た感想はそういうことが1つ。うん、まだフィットしてないよね。

そしてもう1つは脚本・演出が消化されきっていないなぁ、ということ。

現代風刺は浅薄だし、それをセリフに頼って表現するために必要以上に冗舌となる。河童たちの合理性精神は「言葉」以外では伝わらず、せっかく哲学者になりたい河童・パックや精神病患者の河童といった魅力的な素材があるのに、もう一つ立ち位置を明確になっていない。全体のもつ暗黙の調和からはみ出すことを「精神疾患」と呼ぶのであれば、個と全体の対比や追い詰められる様が描き切れたとも思えない。

それでも個としては魅力的な役者陣もいたし、歌と踊りは見ていても迫力がある。

二日目以降は息もあってくると思うし、これから!というところでしょうか。


【公演概要】

DULL-COLORED POP「河童」
日程   2014/7/18(金)~7/27(日)
作・演出 谷賢一(DULL-COLORED POP)
原案   芥川龍之介
音楽   岡田太郎(悪い芝居)
振付   伊藤今人(ゲキバカ/梅棒)、中林舞、堀川炎(世田谷シルク)、長谷川寧(冨士山アネット)
出演   東谷英人、大原研二、中村梨那、百花亜希、若林えり(以上DULL-COLORED POP)、天羽尚吾、一色洋平、井上裕朗、今村洋一、岩瀬晶子(日穏-bion-)、内田悠一(レボリューションズ)、港谷順(劇団→ヤコウバス)、小角まや(アマヤドリ)、澄人、平佐喜子(Ort-d.d)、ドランクザン望、ナカヤマミチコ(アロッタファジャイナ)、浜田えり子、東ゆうこ、三津谷亮、山中一美

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