たそがれオヤジのクタクタ山ある記

主に北関東の山を方向音痴で歩いています。山行計画の参考にされても責任は負いかねます。深慮せず軽く読み流してください。

備前楯の北東尾根は意外にも楽しめる尾根だった

2011年12月26日 | 足尾の山
◎2011年12月24日(土)―ハイトス氏と

 先月、本口沢から備前楯山に登り、これで備前楯のバリエーションルート歩きもお終わりするつもりでいたが、足尾のRR氏より、睡眠不足の折に北東尾根をよく歩かれる旨のコメントをいただいた。備前楯の山頂から見下ろす北東尾根は何とも危険極まりない様相で、ガレ場の急峻な岩場歩きが連続するようにも見え、自分には命がけと判断し、RR氏のような歩きは出来かねると思っていた。ところが、この北東尾根を虎視眈々と狙っている御仁がいた。ハイトス氏だ。中倉山のナイフブリッジや奈良部山の大岩壁をスイスイとはいかずとも無傷で歩かれる方でもあるし、北東尾根もそりゃ平気だろうと思っていたが、割りと強気に誘われるので、顔には出さないものの、内心渋々の同行となった。クリスマスイブには縁のないくたびれオヤジの2人連れ。何とも絵にもならないが。

(あんな所にどこから取り付くのやら)


 ハイトス氏とは舟石駐車場7時半の待ち合わせだ。水沼の沼田分岐あたりから、後続の赤い車が気になっていたが、やはりハイトス号だった。同時に到着し、ハイトス号で鉱山神社前に向かう。1061mピークに連なる尾根が眼前に迫っている。いったいどこから取り付けばいいのやら。用水路が通っているところからだろうか。7時44分出発。取りあえず、橋を渡って本口沢に向かう。すぐ右手にヤブが薄くなっているところがあった。ここから入る。ヤブを越えると岩場に出た。いよいよお出ましか。最初はしっかりしたものだったが、やがてガレ場の急斜面になった。出来るだけ生気のない潅木が付いている中を歩いて尾根に出た。

(一気に高度が上がる)

(左の沢筋が大田沢。右に隠れた部分に本口沢)


 こういう急斜面は高度を稼げるといったメリットがあるが、下を覗くと怖い。真下がまず見えない。本山小学校の裏手の岩場を直登した時もこんなものだった。ただあの時はずっと四つんばい歩きで、尾根に着いた時にはかなり腰が痛かった。駐車したハイトス号が遠くぽつんと見え、鉱山神社の高さもすでに越えた。後ろ正面の男体山がどんどん大きく姿を現す。どうしたことか、雪は山頂部だけ。社山にいたっては雪が付いていない。日本海側の積雪は猛烈なのにこちらは少ない(翌日、石裂山を歩かれた「中年からの山歩き」氏の記事には、白い男体山の写真が出ていたが)。左手を見ると、大田沢が石垣山に突き上げている。本口沢とはえらい違いの斜度だ。やはりあそこは無理。フリーで歩けるわけがない。前方にトンガリが見えてきた。まさかあれが1061mピークではないよな。早過ぎる。潅木が次第に消え、ガレ場歩きになってしまった。上で景色を見物している間に、ハイトス氏は2回ほどズルッといったようだ。がたいの大きいハイトス氏、失礼ながら、こういった所は不利な体形ではなかろうか。歩いても、踏み跡がしっかりと残る。20kg少ない自分のは残らない。いつも重い荷物を背負い、ザイルまで持参されている。自分の今の荷物に、体重差を加えた、少なくとも30kgの重さが加わったら歩けない。

(あれが1061mピーク?ではなかった)


 トンガリは巻いた。そして、1061mピークが見えてきた。ようやく傾斜が緩んできた。高所歩きも一種の慣れだろうか。それほどの怖さは感じなくなりつつある。感覚がマヒしたということだろうか。左斜面は急で、崩壊しているところもある。本口沢から見上げた時は、ケルンを積んだのがそのまま大きくなったような危うい山容をしていたが、実際に歩いているところは脆いところもなく、しっかりとしている。踏み跡さえ見え隠れしている。右斜面もやや切れ気味ではあるが、こちらはガレてはいず、土壌がむき出しになっている。ただこれも、下に行けば、すとーんと落ち込むようになっているのだろう。

(ここから石を落としたら、ハイトスさんはアウトだな)

(男体山が大きくなる)

(1061mピーク)


 1061mピークの直下でまた潅木が出てきた。このまま尾根伝いに行くのは控えたいところだ。ヤセ按配になっている。おあつらえ向きの潅木の沢が脇にある。ここに入って、巻いて登る。ピーク直下の左手は崩壊していた。ハイトス氏が上がって来るのを見下ろしながら、ここで、中くらいの石を落としたら、とんでもないことになるだろうなと変なことを考えてしまった。決して、睡眠不足では歩けないルートだ。9時ちょうど、1061mピークに到着。

(奥に袈裟丸山)

(踏み跡がある)

(備前楯も近い)

(山頂はそこ。目の前にケルン)


 1061mピークからの眺めはいい。ちょっとした小高い丘になっている。松の木とケルンが印象的だ。やはり、ここを歩く人はいるようだ。男体山はすっかりと大きくなり、雪をかぶった袈裟丸も顔を出した。備前楯も近くなった。次第に平坦になり、ガレ場も抜けた。低い潅木の中を歩く。薄い道形を追っていく。少しばかりだが雪が残っている。皇海山の頭が見えた。男体山の後ろに女峰山も見えてくる。いずれも白くなっている。ここに至れば、あとは普通の尾根道の歩きになる。この先、どうなっているのか。どこに出るのか。地形図では「楯」の字に隠れ、よく分からないところだ。備後楯の方に出るのかとも思ったが、上に行くにつれ、行き先がはっきりしてきた。そのまま山頂に至っている。北東尾根は最終的に備前楯山頂の北東斜面に吸収されていた。三角点の脇のケルンの裏が真正面にあった。9時43分山頂到着。

(このケルンの裏に出た)

(北東尾根の様子。下は見えない)


 山頂から見下ろす北東尾根は、どうやってあの尾根に乗るものなのかと不可解だったが、山頂からは意外にもなだらかな尾根が下っていたわけだ。短時間ながら、おもしろいバリエーションルートを楽しめた。岩峰を歩くわけでもなく、下部の急斜面もガレ場登りも決して危険なものでもなかった。これまでのルートの中でも大満足に近い。ベテランの段階なら、確かに睡眠不足の状態でも歩けるだろう。そんなことを思いながら山頂で20分くらい過ごした。タバコも2本吸わせていただいた。散発的に銃声が響いてくる。

(二股は左に。前回は右)

(沢に出て、少し下る)

(一般コースに合流)


 10時5分、北西尾根を下る。あとはハイトスさん、ヨロシクだ。風が出てきた。そういえば、北東尾根の下部は、風があったら厳しいかもしれない。この北西尾根、一か月前は尾根の二股から右尾根に逸れ、鉱山神社方面に向かった。滝にも出会った。決していいルートとはいえなかった。今日は車を舟石峠にデポしてあるから、左の尾根に向かう。この下り、ハイトス氏は早かった。距離が離されていく。ところでこの尾根、顕著な尾根かと思ったが、こちらもまた、間もなく沢に落ちてしまった。沢床には落葉がどっさりと堆積していた。下には水も流れ、雪も残っている。この沢はおそらく、前回歩きの沢の本流ではなかろうか。正面に尾根が横切っている。あれは通常コースの尾根だろうが、登るのはちょっとしんどい高さ。しばらく沢を平行して下ると、尾根も大分低くなった。適当なところで尾根に上がる。振り返ると備前楯が樹間に見えた。コースに出た。そこには標識が立っていた。そして、すぐに舟石の駐車場に到着した。10時46分。あっけないものだった。

(舟石の駐車場に到着)


 風が冷たかった。正面の男体山が、この冷気の中で、大きく見えた。ここで食事となったが、風のため、うまく火が回らず、せっかくの鍋焼きウドンも半生の状態で食べた。方やハイトス氏のカップラーメンも、スープを半分近く飛ばしてしまい、半端な味だったのではなかろうか。その間、写真撮りに上がって来た方のみが本日の出会いだった。鉱山神社に行って、その先の尾根の様子を下見に行くというハイトスさんと別れる。帰りの車の中、今日のルートを、今度は本口沢から取り付いてみようかとも思ってしまった。何だかキリがないなぁ。

(ハイトス氏の記事も併せご覧ください)
⇒http://www.netplaza.ne.jp/~hitos01/Nikkou/BizentateyamaKitaOne.htm
ハイトス氏記事では「北北東尾根」としているが、尾根は幾筋もないので、ここでは分かりやすく「北東」と記している。

※本ブログに実名・中嶋で登場し、顔写真まで掲載した中嶋茂が25日クモ膜下出血で死去したとのこと。彼とは5年前の6月に鳳凰三山、そして4年前の同月に霞沢岳に行っただけだが、高校時代の同期でもあり、一緒に酒を飲む機会が多かった。そして、私の愚かなブログの良き愛読者でもあった。ここに彼の死を悼み、哀悼の意を表し、冥福を祈るところである。

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6 コメント

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追悼 (俺だ)
2011-12-27 10:45:08
中嶋をもっと連れ歩けばよかった。冥福を祈る。
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「俺だ」へ (たそがれオヤジ)
2011-12-27 22:30:42
さっき、通夜で会って話をしたばかりだから、返信は省く。ただ、久しぶりに一緒にドタバタコントな歩きをやっていれば、ヤツのいい供養にもなるんじゃないのか。
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備前楯山 (ハイトス)
2011-12-27 22:51:24
今回は同行有難うございました。
御友人への追悼とのこと、クモ膜下ですので突然だったのでしょう。
色々コメントと思いましたが控えましょう。
最近友人達の親の訃報ではなくて本人の訃報を聞くことがままあります。そういう年代になってしまったということでしょうか。
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ハイトスさん (たそがれオヤジ)
2011-12-28 05:55:27
お気遣いありがとうございます。
最初、「俺だ」から悪い冗談を聞いたと思っていましたが、新聞の死亡欄に出ていたのを見た時は何とも複雑な思いがありました。
そういう年代というのは確かですね。この年になるまで、中学、高校、大学と、同級生がすでに10人近くは亡くなっています。日常的なものとも言えますかね。
自分の番も、いつやって来るかわかったものではないですから、今の内に、やばそうなものはどんどん処分しておかないことには。
コメントをいただけないのは、そんな事情とは思っていました。気になさらずでいいのですよ。本当に日常的なものですから。仲間だったので、いささかショックだっただけですから。
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備前楯山北東尾根 (足尾のRR)
2011-12-31 22:02:27
こんばんは、ご友人の事はお悔やみ申しあげます。
備前楯山北東尾根、早速行かれたのですね。次は本口沢から北東尾根ですか?隣のヤブ尾根は出だしの岩稜を越えたら見た通りのヤブ尾根です。上部はザレており全体的に眺めも悪くあまり面白くありませんでした。大田沢出会い右手(本口沢左岸)の岩稜は技術的にはあまり難しくありませんが両側とも切れており、かなり高度感もあります。(コケたら死にます)最上部には狸掘りがあり入口には漢字で何か書いてあります。(本山小学校裏の岩稜を登られたのですから大丈夫かも)
ちなみに本口沢と大田沢の間の岩稜も似た様な内容です。
他にも本口沢右岸の無名峰(頂上までは何処から行ってもかなりデンジャラス!)も石垣山まで赤土の斜面でかなり居心地がいいです。(どこか象山の頂上を彷彿させます)鷹の巣沢からも備前楯山頂上に抜けられますし、たかが備前楯山、まだまだバリエーションはありますよ。
それではまた足尾のレポート楽しみにしております。
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RRさん (たそがれオヤジ)
2011-12-31 22:45:40
こんばんは。ありがとうございます。
またまた難題をいただいてしまいましたね。困ったものです。
いろいろと情報ありがとうございます。貴重なアドバイス、一つ一つ検討させていただきます。狸掘り跡もかなり興味がありますし。
RRさんが触れていらっしゃいますが、とりあえず象山を済ませますよ。あそこ、途中まで行って引き返して来ていますから。
実は、同行のハイトス氏に、今回の歩きは数時間で済むだろうし、その後は象山とでも思っていましたが、ハイトス氏が鉱山神社裏手の尾根の偵察を口に出されたので、象山の件は黙っていたのですよ。
近いうちに早速行って来ましょうかね。
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