たそがれオヤジのクタクタ山ある記

主に北関東の山を方向音痴で歩いています。山行計画の参考にされても責任は負いかねます。深慮せず軽く読み流してください。

松木川から国境平~皇海山~六林班峠

2007年11月04日 | 足尾の山
◎2007年11月3日(土)-1人

 国境平から皇海山を目指すのは8月以来の2回目。今回は1回目の雪辱を晴らすつもりで出かけた。前回は暑さで国境平からいさぎよく退散した形になってはいるが、実のところ、ネットのレポを読むと、こぞって「国境平から500mの登り。時間は2~3時間」と、さも大変な重労働として記されている。自然、こちらも「きつそうだな」といった先入観が入り込み、この500mを克服するのがみんな大変だと言っているし、まして暑いし、やめた方が無難かなといったところであっさりと断念した。ところが、戻ってから昭文社の地図を見ると、この500mは標準タイムで1時間半になっているじゃない。その時は地形図しか持って行かなかった。これだったら、暑くてもオレも無理すれば行けたんじゃないかと、後悔することしきり。まして、ハードなもみじ尾根経由。できれば2度も行きたくないルートだが、敢えて再挑戦をもくろんでいた。この時期、暑くはないし、木枯らしが吹きつける季節にはまだ早い。山歩きには最高の時期。今日は祝日で子供たちの学校送迎もない。ここのところ、出過ぎだと女房から苦情を言われているが、反省をする時間も惜しみ、いそいそと出かけた。

 4時前に家を出た。銅親水公園に車を駐め、歩き出したのは5時30分。暗いがランプをつけずとも歩ける。ほぼ同時に乗り付けた車から、1人歩き出し、しばらく、オレの後ろを歩いてきたが、途中で見えなくなった。大平山か中倉山にでも行ったのか。例によって退屈な道をしばらく歩き、ヘリポート先のゲート前に着いたのが6時5分。ここからは崩壊地。松木川の水量は夏に来た時に比べると減っている。足尾グランドキャニオンの風景も、もう3回目になれば、たいした感動も薄れている。ここいらは岩登りのメッカという話を聞くが、登っているのを見たことはない。六号ダム手前で地下足袋に履き代え、軽くコンビニムスビを食べる。小さいザックにしたためか、それまで履いていた靴がザックの中に収まらない。失敗だった。外に結わえると中央に固定せず、動くと左右から顔を出してうっとうしい。腹の前に括りつける。非常に歩きづらいが我慢。水はかなり冷たい。足を入れた瞬間、声を上げてしまった。これがしばらく続くのを考えるとうんざりする。夏の時は、川漕ぎも一種の楽しみのようなものがあったが、今日は苦痛。ズボンを膝上にたくし上げるが、結果的に、ズボンは完全に濡れた。

 右手に石垣が見えた。ここから山腹の道を行けば、ニゴリ沢に合流するという話を聞いたことがあり、登ってみた。ところが道らしいものはなく、ヤブも多そうで、早々に、川歩きに戻ってしまった。紅葉が気になったが、赤や黄色はまばらながら映えているものの、全体としては終わっていて、皇海山を見上げた時には、山に色は付いていなかった。紅葉は期待しないほうがいい。ニゴリ沢出合いは8時15分。2時間45分。前回は2時間50分くらいだったから、ほぼ同じペースか。ここから先渡渉はない。地下足袋を広げ、木の幹に置く。天気がいいから、戻る頃には乾いているかもしれない。乾かしても意味のないことではあるが気持ちの問題。少なくとも、その時点では、「ここに戻る」ということについて自然な感覚でいた。皇海山から別のルートをとって下山する考えはまったくなかった。

 30分程で、もみじ尾根取り付き。夏に比べて何か様相が変わっている。尾根全体が明るくなっている。この変化は国境平まで続く。夏の時は、薄暗い灌木の中を歩いたのだが、見事に葉が落ち、明るくなっているのだ。勝手が違うといった感じを抱きながら取り付くが、つらさは同じだ。ジグザグに急登が続く。何度も休む。明るい分、前回は見えていなかったところも見えるから、歩きやすい。むしろ、迷う要素も少なくなるのではなかろうか。ただ、尾根が広く見え出すとやばい部分もなきにしもあらずか。国境平を迂回し、先の1636mピークに到着。9時44分。国境平方面を見下ろすと、テントが一張。前で2人組が談笑している気配。久しぶりに人に会った感じでびっくりした。ああやって好天が続く日にゆっくり県境尾根を楽しむのもいいものだろうな。

 さてここから「国境平から500mの登り。時間は2~3時間」のコースが始まる。気を引き締めて、か。心なしか緊張する。踏み跡は明瞭なものではないが、辿ることはできる。木々には多くの赤、黄プレートが打ち付けられてもいる。ここも、もみじ尾根に劣らずの急登。頻繁に休んでは呼吸を整える。ふくらはぎのケイレンが気になる。もみじ尾根から続いている。思いっきり、足を上げて大幅で前に出るとズキンとする。小足で進むしかない。松木川の渡渉で、足を水で冷やし過ぎたせいだろうか。ちょっとやばそう。あたりはうす暗い。木の葉は落ちていない。ジトジトして、根にはコケがついている。腐った木々。いや~な雰囲気。よく「うっそうとした樹林帯」という表現があるが、まさにそれ。北からの尾根に入り進行方向は南になる。同時に、コメツガとシャクナゲに囲まれた細い路地風の道になる。西側、北側の展望が開け、武尊が見える。そして、白根と錫ケ岳。路地は終わり、山頂が見えてくる。尾根が広がり出し、どこを通っても、山頂に行きつけるようだ。しかしまだ急登は収まらない。そこにかすかな便臭。これまでの獣の臭いとは違った、明確に人間のもの。こちら側は登る人もめったにいず、キジ場になっているせいだろう。頂上は近い。かすかに人の声。

 ロープを乗り越えて皇海山。11時15分。標準コースタイムの1時間30分。本当に、これだったら夏に来られた。2人いた。帰るところ。写真を撮ってもらう。てっきり不動沢経由かと思っていたら、庚申山から来たそうだ。ちょうど20年前、庚申山荘に泊まって歩いたコースだ。青銅の剣を見た記憶がある。後になってから、そういえばと思ったが、その時点では気にも留めなかったため、確認すらしなかった。2人が下山したのと入れ替わりに青年が登って来た。こちらは不動沢ルート。栗原林道が土砂崩れで、ほとんどの車が土砂崩れの現場から次々とUターンして行く中、登山口まで2時間、12キロは歩いたそうだ。そういえば、その林道歩きで転落死した人の記事を最近新聞で読んだ。栗原林道が通行止めでなかったら、この山頂はもっと賑やかだったろうし、歩いて転落死することもなかったろう。考えてみれば、不動沢コースは2~3時間も歩けば皇海山に至る楽々コースだからこそ意義があるのであって、これに2時間余計にかかるとなれば、情況も変わり、コースそのもののメリットがなくなる。オレもやはりUターンするだろうな。


 下りは、元を戻るのも何だし、せっかくここまで来たのだから、鋸山方面にまずは行ってみよう。ただこう記せば、さもきれい事になるのだが、実際は、そう決めるまでに相当の体力消耗と試行錯誤を繰り返した。青年と別れ、ロープをまたいで国境平方面に下りる。斜面を下るが、どうも左寄りに進んでいる。軌道修正はするものの、例の露地風の踏み跡に出くわさない。しばらくウロウロしたが分らなくなってしまった。完全に、方向音痴の機能が働いている。そうしているうちにズキンとケイレンが始まった。しばしうずくまり、一旦、また山頂に戻ろうとしたものの、まだあの青年がいるんじゃ、みっともねぇなぁと、休憩。その間、こうなったら、干している地下足袋はもうあきらめて、とりあえず反対方向の鋸山を目指し、そこから先は後で決めた方が正解じゃねぇかと安易な方向で結論づけてしまった。しかし、あの足袋は惜しい。クッション付きの高いもので、まだ2回しか使っていなかった。

 40分ほどの時間をロスして、山頂には向かわずに、鋸山に向かう登山道に直接出る。12時10分。青年はもう先を下りているようだ。40分もあんな山頂にいても仕方がないだろうが。下りがきつい。足をかばいながら歩くと、木の切り株に向う脛をしたたかに打ち付けた。見ると血が滲んでいる。4人程登ってきた。この人たちは通行止めから歩いたのだろうか。庚申山経由だとしても、今日の皇海山は本当の山好きだけの世界。不動沢ルートの合流点12時25分。ここから100m程の上りで鋸山。ロープがあって、結構つらい。高度が上がるに連れて、背後の皇海山が大きく見えてくる。13時5分、山頂。ここで休憩。鋸山から庚申山を臨むが、期待した紅葉は終わっている。ここからどうしようか。庚申山ルートで行くにせよ、六林班峠経由にせよ、かじか荘から駐車場までは延々と歩くか、タクシーを呼ばなきゃいけない。昭文社の地図を広げると、まだ六林班経由がアップダウンも少なくていいようだ。鋸山十一峰はかかる時間が少ない割には痛めた足に負担がかかり、最悪、途中でビバークしかねない。ただ心配なのは、六林班峠ルートが整備されていないのではという危惧。以前、このルートを下った時の印象はかすかに残るが「薄暗く、歩きづらい道」だったと記憶している。

 天気が崩れる心配はないし、明るいうちに林道に出ていればいいやと六林班峠を目指す。道はしっかりしているが、倒木があちこちにあって、迂回するのに手間がかかる。迂回の踏み跡はしっかり固められている。笹もきれいに刈られ、迷うこともない。出だし以外は確かにアップダウンが少なくて気持ちの良い山道。六林班峠には14時着。意外にあっさりと到着した。法師岳方面にうっすらとして踏み跡が続いていたが、これも、どこまではっきりしているのやら。年間通じて、100人も通らないルートじゃないだろうか。

 ここから庚申山荘に向かうが、いきなり笹ヤブがひどくなり、一時は背丈になったが、踏み跡は確認できる。笹ヤブが低くなり、途中に沢があり、沢を渡ってカーブする。この繰り返し。沢は7か所程あって、同じところを何度も歩いている錯覚に陥る。以前もそんな感じを受けたことを思い出した。ここも倒木が多く、笹に隠れて見えないから、ボーっとして歩いているとつまずいてしまう。要注意。山荘までの半分を過ぎると紅葉が見事な風景が続く。庚申山周辺も山頂付近は終わりで、1500m付近から下が盛りのようだ。霧が次第に上から下りてくる。庚申山は隠れてしまった。次第に今までになかった上りが始まり、きつい歩きになる。天下の見晴らしを過ぎ、大きな岩がゴロゴロ目に付く。この大岩はこの山域の特徴で、山荘もそろそろかなと思っていたら、やはりひょこっり山荘前に出た。15時50分。峠からおよそ2時間。山荘には4~5人泊まっているようだ。ここで大休止。足の痛みが再発せずに良かった。

 一の鳥居に向かう。薄暗くなり始めてはいたが、紅葉がきれいで、あちこちにある小滝をバックにすれば、いい写真が撮れそうだ。もっと早い時間、明るいうちなら、随分と楽しめる光景だが、何せ、暗くなるまで時間がない。先を急ぐ。山荘に向かう3人と出会ったが、道を譲って挨拶をしたものの、3人とも返事が返ってこない。愛想の無い中高年ハイカーが増えている。明日は雨になってくれりゃいいとすら思う。個人的な感想だが、オレはいわゆる団塊の世代なる人たちが嫌いだ。自己主張が強い。悪く言えば自分勝手。いろいろ話を交えても、相手のことは考慮せず、価値観を自分の基準でしか計れない人が多いように見える。行動も同じようなもの。この方々が育てた子供たちも推して知るべしだろう。皆がそうだとは言えないが、自分の周辺の方々にはその傾向が共通している。

 一の鳥居16時30分。もう薄暗くなっている。しかし明るいうちに林道に出られてほっとした。この近くにある庚申渓谷の紅葉は、今日明日が最高だろうな。林道歩きが始まる。次第に暗くなり、舗装道だからそのままでも歩けるが、熊に出くわしたら怖いので17時15分にはヘッデンをつけた。かじか荘からどうしよう。銅親水公園までは舟石峠を越えて歩けなくもないが、3時間はプラスされる。かじか荘付近で携帯が通じたらタクシーにしよう。通じなかったら歩きか。かじか荘着18時。着替えを持っていたら入浴したいところ。賑わっている。「小滝会」という、今は無い下の小滝に住んでいた方々がたまに出会いの場を設けているようだ。さて、どうしよう。携帯はつながらないが、もう歩くのは嫌になっていて、かじか荘に入って、タクシーを呼ぶ。15分程でタクシーが来たが、舟石峠の方から来たので、営業所を聞いたら間藤だと言う。メーターは750円分倒していた。

 運転手さんと話をしていたら、熊の話が出た。足尾は熊が多くなっていて、早朝、夕暮れ時には、道路を横切る熊によく出くわすそうだ。暖冬だった昨年は熊が冬眠せずにウロウロしていたとか。巣神山で熊に出遭った話をしたら、巣神山そのものを知らない。場所をいろいろ聞くので、教えたら「ああ、草刈山ね。年寄りに話を聞くと、昔はスキーをかついでよく行ったらしいよ」。庚申山も皇海山も近年、すっかり登山客は減ったとこぼしていたが、気軽な沼田ルートから入るのがほとんどなのだ。

 タクシー代は2,970円。痛い出費だが致し方ない。今日は地下足袋も含め、失うモノも多い山行だった。あの地下足袋も、にごり沢入口の目印になるだろう。歩いた時間は12時間半。距離も30キロは優に超え35キロ近かったのではないだろうか。帰りがけ、高校の同級生で、もう10年前、木とともにちょっと悪ふざけをして出入り禁止処分を受け、最近、解除された大間々の麹屋薬局に寄って、木と同様に、バンテリンを買おうと思ったが、まだ在庫があったことを思い出し、素通りした。いずれ、改めて詫びに来よう。

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8 コメント

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Unknown (俺だ)
2007-11-04 19:47:27
地下足袋がもったいねーなあ。冬、沢が凍結したら取りに行くか?
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地下足袋 (mailaddress-1234)
2007-11-05 05:50:04
やめとくよ。沢が氷結しても、川が凍ることはないから渡渉は避けられない。しばらくは松木川も歩きたくはないのだが、県境尾根も、三俣山から国境平にかけては未踏区間だから、いずれは松木川も通らざるを得ない。ニゴリ沢の出合いには、地下足袋が一足、釘で木に打ちつけられて、ワラジとともに、目印になっていた。オレの地下足袋も同じ運命だろうな。ところで、石鎚山に行くのはいつだっけ?

※オレのこのブログにえげつないコメントを書き込んだヤツがいる。すぐに削除したが、とんでもないアホだ。こんどやったら許さないからな。この場で抗議しておく。
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Various Climbing (Yossy)
2007-11-05 23:47:40
紅葉の第2弾と思って開いてみましたが、山の高い所ではもうお終いなのですね。下界の私たちとはやはり温度差があると改めて思い知らされました。でも、13時間かけて、一人で色々と難所を通り抜けられた時にはこちらもほっとして、また葉が散って、視界が開けたなんて、季節の変わりを感じさせられました。
地下足袋は名前が書いてあったら、記念でもっと良かったかもね。
取りに行ってあげたいけど無理だな~~何年後かも??
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Unknown (俺だ)
2007-11-07 00:08:41
四国へは9日に行くが、石鎚、剣山は10日~11日に登る。10日朝にレンタカーを予約した。剣山登頂後、祖谷渓、かずら橋、大歩危、小歩危を周る。11日は、土小屋から石鎚山を往復し、帰路に瓶ヶ森林道を通る。時間があれば瓶ヶ森や東黒森か、伊予富士にでも寄って来る。慣れない土地なので、帰りの飛行機に遅れないように早めに松山に戻り、温泉で汗を流して帰るよ。
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今頃 (mailaddress-1234)
2007-11-10 09:34:35
俺ださん、今頃は剣山を歩いている頃か。こちらは雨だが、四国の天気は晴天みたいだな。うらやましいよ。これで百名山も○が二つ増えるか。この間まで長野、松本の出張に出ていた。松本はもう底冷えの寒さだった。冬も近づき、行動範囲も狭くなるなぁ。いずれまた、四国アルプスの報告を聞きたいところだ。オタクのブログは更新もせず閑古鳥が鳴いているが、いい写真でも載せてくれ。
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どうもです (sinn)
2007-11-12 22:14:53
遅くなりましたが、予定通り皇海山に行かれたようですね。下山ルート変更は大変だったようですが、無事に終えられたようなので歩ききった気分はひとしおだったのでは? 自分も来年は紅葉時期の月の明るい日に国境平でテント泊して、鋸岳方面へ周回できたらいいなぁと思っています。
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鋸岳 (sinn)
2007-11-12 22:17:21
“鋸山”でしたね。間違えました、すいません。
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shinさんへ (mailaddress-1234)
2007-11-13 05:56:40
どうせ行かれるのでしたら、私の徘徊ルートではなく、大平山~黒檜~三俣山~国境平経由がいいと思いますよ。かもしか平か国境平にはゆっくりテントを張るだけの時間的な余裕はあるでしょうし。ただ時期を選ばないと。展望に恵まれたエリアではありませんし、新緑か紅葉の時期がいいでしょうね。
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