文理両道

専門は電気工学。経営学、経済学、内部監査等にも詳しい。
90以上の資格試験に合格。
執筆依頼、献本等歓迎。

電力システム工学

2017-03-20 11:14:37 | 書評:学術教養(科学・工学)
電力システム工学 (新インターユニバーシティ)
クリエーター情報なし
オーム社

・大久保仁編著

 本書は「新インターユニバーシティ」と銘打たれたシリーズの一冊であり、大学において電気工学を学ぼうとする学生たちのための教科書である。内容としては、2年次から3年次あたりの半期の授業2単位分くらいに当たるのかなといったところだ。

 内容はタイトルの通り、電力システム全般にわたる内容を網羅したものだ。ただし、電力システムには当然発電設備も含まれており、本書でも多少は触れられているのではあるが、そちらは通常「発電工学」のような科目で詳しく学ぶことになるので、この本では主として送電、変電、配電といった電力流通設備についての話が主体となっている。

 もっとも、具体的な機器の話については、送電工学、変電工学、配電工学といったような、もっと詳しい科目で学ぶことが多い。本書では、個別の機器についての常識的な話は解説されているが、一番学ばなければならないのは、電力システムが全体としてどのような特性を持っているかということだろう。例えば、電力システムの運用や制御に関する事項、事故時における電流・電圧の挙動、絶縁協調といったようなところだ。これらについても本格的に学びだすときりがないようなところもあるのだが、本書には電気技術者としては当然知っておきたいような内容がコンパクトに説明されている。

 本書において特筆すべきところを一つ挙げるとすれば、遮断機や断路器の開閉時における現象が1章を割いて解説されているところだろうか。雑誌などでは、こういった内容を読んだ覚えはあるのだが、教科書に掲載されている例はあまりないだろう。

 最初に本書を大学の教科書と書いたが、現場の電気技術者の方も、この程度の内容は知っておいた方が良いだろう。昔と違って、最近は電気工学はあまり人気がないと聞く。おそらく電気のことをあまり勉強しないまま、電気の現場に入った人も多いのではないかと思う。そのような人にもお勧めの一冊だろう。

 最後に一つ言いたいのは、電気の事をろくに知らずに、噴飯ものの議論を行っている経済学者と呼ばれる連中を見ることがあるが、ぜひ最低限の電力システムに関する知識をつけてから出直してきて欲しいと思うのだが。

☆☆☆☆☆

※初出は、「風竜胆の書評」です。
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