ママ、もっと自信をもって | |
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日経BP社 |
・中川李枝子
本書は、「ぐりとぐら」や「となりのトトロ」の主題歌「さんぽ」なとで知られる著者が歩んできた道を自ら描いたものだ。
数多くの児童文学で知られる著者だが、初めからこの道を目指していた訳ではない。元々なりたかったのは、「日本一の保育士」。「東京都立高等保母学院」を卒業し、「みどり保育園」という無認可保育園で17年間保母を務めてきた。この時の経験が、児童文学者としての現在に大きく役立っているようだ。
この保育園がなかなかユニークだ。余計な規則や遊具は邪魔という考えで、ずっと無認可のまま。親にも園にも余分な負担をかけないという方針から、特別なことは最小限に抑える。その一方では、子供たちの健康や食事、特に弁当にはこだわっていたという。
「私たちが楽しくなくては、子どもも楽しくない。この仕事はもうからないから、楽しまなくては損。私たちも大いに楽しみましょう」(p18)という設立者の考えの下、ガキ大将となって子供たちと保育園生活を楽しんでいた著者だが、在職中から子供向けのお話を書き始め、最初に出版された「いやいやえん」は、厚生大臣賞などを受賞することになる。
著者が児童文学者になる萌芽は子供のころからあったようだ。両親とも読者家で、著者も、小さいころから父親の蔵書を手あたり次第に読んでいたのだが、中学校の図書室で岩波少年文庫と出会った。彼女がまず児童福祉の道に進んだのも、あの「花子とアン」で有名な村岡花子さんが訳して同文庫に収められた「ジェーン・アダムスの生涯」(ジャッドソン)を読んだからだという。
本書を読めば、著者が小さな子どもたちが大好きだということがよく分かる。本書で著者が一番言いたいのは、お母さんが自信を持って子供と向き合うということだろう。子供たちはみんなお母さんが大好きなのだ。教科書通りにならないなどと悩んだりせず、自然に素直な子育てをすればいいのである。
本書は、著者の歩んできた道を描いているだけでなく、お母さんたちへの応援歌という性格も有している。子育てに悩んでいるお母さんは、一読してみれば、悩みが解消することもあるだろう。巻末には、お母さんたちの悩み事についてのQ&Aが納められており、まさに至れりつくせりの内容だ。
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※本記事は、書評専門の拙ブログ「風竜胆の書評」に掲載したものです。