文理両道

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書評:フラテイの暗号

2014-01-06 19:44:17 | 書評:小説(ミステリー・ホラー)
フラテイの暗号 (創元推理文庫)
クリエーター情報なし
東京創元社


 アイスランドのブレイザフィヨルズル湾に浮かぶフラテイ島を舞台にした、アイスランド・ミステリー、「フラテイの暗号」(ヴィクトル・アルナル・インゴウルフソン/北川和代:創元社文庫)。時は1960年。作中では、ラジオのニュースにソ連のフルシチョフ首相に関することが流れたりと、さりげなくその時代を演出している。

 フラテイ島に住む少年ノンニは、祖父、父と共に、アザラシ猟に訪れた無人島ケーティルセイ島で死体を発見する。死体のポケットには、フラテイの書のオリジナル写本に記せられていた献辞の言葉と意味不明の言葉が記されたメモがあった。一体この人物は、何物なのか。

 島の牧師は、去年、フラテイの書の舞台を旅していた、コペンハーゲン大のロン教授ではないかと言う。教授は、フラテイの暗号と呼ばれる謎を解こうとしていたようだ。彼は、どうやってケーティルセイ島に渡ったのか?更には、レイキャヴィークから来た新聞記者が墓地で異様な死に方をしているのが発見される。

 ここで、フラテイの書とは、北欧に伝わる伝承を集めたもので、実際に存在しているものだ。しかしこの本に何か秘密が隠されていると言う訳ではない。表題の「フラテイの暗号」というのが、この作品のオリジナルの部分で、本の内容から作られたクイズのようなものと思えば良い。二人の男が死んだ事件については、その異様な死に方にも関わらず、真相は意外にあっけないものだった。この暗号を解くことこそが、本作の一番の見せ場になるのだ。

 暗号というのは、クイズを解いていって、出てきた文字を、ある規則に従って並べ替えると詩の一節が出てくるというものだ。元々日本語で書かれているものならともかく、本書は外国語からの翻訳である。訳者のあとがきを読むと、ドイツ語からの翻訳だそうだが、日本語に直してもちゃんと意味が通るようにするのは大変だっただろうと思う。しかし、訳者は、これを見事に成し遂げている。この翻訳の妙を味わうだけでも、本書を読む価値があるだろう。

 また、時代は少し昔にしても、この本からは、日本から遥かに離れたアイスランド社会の様子が色々と窺える。例えば、アイスランドの宗教だが、作中に「牧師」が出てくるので、プロテスタントが主流なんだなということが推察できる。調べてみると、ルター派が多いようだ。その他にも、地区長や教会の会衆代表という社会的な制度があったり、アザラシやウミウを食用としていたり、セグロカモメの卵でケーキを焼いたりと、興味深い事が沢山見られる。こういった民俗的な方面に興味がある方にもお勧めである。

☆☆☆☆

※本記事は、「本の宇宙」と共通掲載です。
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