文理両道

専門は電気工学。経営学、経済学、内部監査等にも詳しい。
90以上の資格試験に合格。
執筆依頼、献本等歓迎。

書評:星間商事株式会社社史編集室

2016-08-21 08:39:54 | 書評:小説(その他)
星間商事株式会社社史編纂室
クリエーター情報なし
筑摩書房

・三浦しをん

 本書は、タイトルの通り星間商事株式会社社史編集室を舞台とした物語だ。この社史編集室というのは、いつまでたっても完成しない社史を作リ続けている部署で、究極の左遷先のようなところである。だから、所属員も変な人たち。

 主人公は川田幸代という女性だが、オタクで腐女子。友人2人と同人活動をしている。みっこちゃんは、無駄に元気な女子だ。ボーッとした言動だが、元営業部で海外での交渉にも同行したことがあるらしい。みっこちゃんから、ヤリチン先輩と呼ばれている矢田信平。専務の愛人に手を出したためにここに飛ばされてきたとか。しかし、みっこちゃんは、彼に気があるようだ。

 社史編集室の本間課長は、定年まで1年の窓際でゆるゆるな人物。なぜ、首にならないか不思議に思われている。極めつけは、ここの室長。なんと、課長以外は、誰も見たことがなく、幽霊部長と呼ばれている。

 幸代が腐女子で同人誌を作っていると知った本間課長が、社史編集室でも、同人誌をつくろうと変なことを言い出す。自分の若い頃の情熱が蘇ったというのである。

 全体を流れる、ゆるゆるした雰囲気。挿入される、幸代のホモ小説と、課長のなんだかよく分からない小説。ところが、編集室の面々は、社史を作る過程で、サリメ二での黒歴史に行き当たる。この会社、女子社員に枕営業をさせようとしたり、専務が女子社員と不倫をしたりと、かなりとんでもないことをしていたのだ。これが明らかになっては困る専務一派が露骨に圧力をかけてくる。

 正確な社史をつくろうと、社史編集室の面々がとった、起死回生の方法とは。あれだけゆるゆるとしていた編集室のメンバーが、一致団結して専務一派を出し抜くところは、なんとも痛快だ。

☆☆☆☆

※本記事は、書評専門の拙ブログ、「風竜胆の書評」に掲載したものです。



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