フルート吹きの物思い

趣味のフルートと、それに関わるもろもろのこと。

楽器の個性

2011-03-22 | フルート本体
被災地の方々のことを思うと、今時趣味の音楽活動について考えているなんてちょっとどうかなと思わなくはないものの。テレビで被災者の方?が避難している場所でトランペットを演奏しているシーンを見て、やっぱり、音楽にはみんなを力づける効果があるのだな、などと思ってみたりした。

幸い私個人的には、親戚とか、家とか物とかに損失はなくすんだ。
帰宅難民となり約20km歩いて帰ったことなど、今回の災害の規模を思えば不幸の範疇にもはいらないだろう。

3月4月で、大小4つあったの本番はすべて中止。
ホールは、天井が落ちたとか、スプリンクラーが落ちて水浸しになったとか。練習会場の公民館などは液状化とか計画停電のあおりで使えなくなったりとか。

外出するにも、練習はない、ガソリンはない、余震は恐い、電車はいつ停電で止まるか不安、雨が降れば放射能が怖い?、パンや水は見かけるようになったものの牛乳はない。


そんな中、ふと立ち寄った楽器店でフルート無料調整会があるのを見つけ、突然申し込んで行ってみた。
普通なら当日申し込みはほとんど無理だと思うのだが、こういう時節柄キャンセルなどあったらしく、比較的自由に時間を選べ、だいぶすいているようであった。
計画停電でいろいろと音楽活動が休止となってしまった人は、この機会に楽器の点検調整に出すのは良いのではないかと思った次第。ついでに修理屋さんと少し雑談などできれば、少しは気分も晴れるというもの。

私の調整の後の時間は空いていたので、そのまま楽器店の店員さん含めて3人で雑談モードに入った。

今日の調整会の職人さんは、鳴く子も歌う?日本の誇る大楽器メーカーヤ○ハの人である。
さすがは大企業の人らしく? 中小メーカーや個人職人さんと違って、個人的本音や個人的好みで話をしない雰囲気がある。
このあたりは、いろいろ個人的にはあって言いたくても社内でいろいろあって、短時間では言い切れない部分があるのでなかなかコメントとしてまとめずらいだろうという想像は容易にできるので、特に悪い事とは思わない。
ま、下手な話をしてブログにでも書かれたら(笑)、とんでもないことになりかねないこともあるだろうし??


雑談がてら、ご存知ヤマハファンを自称する私は、普段からヤマハフルートに関して疑問に思っていたことなどを、無礼を顧みずに彼にぶつけてみた。(メーカーの正式見解ではないし、質問の相手はメカの人で開発ではない。また私の受けとり違いもある可能性があり、ま、そういう噂もあるかな程度で読んでください。)

Q:ストロビンガーみたいな、新型パッドは採用しないのか?
A:たくさん研究している。現時点では、楽器の設計思想に合うのが従来型のパッドである。採用を拒んでいるわけでなない。実際、イデアルGというモデル(クラリネット)では、皮パッドを採用している。

Q:ヤマハの楽器は、個性がないのではないか?
A:ヤマハのフルートは個性的と言われている。フレンチ寄りと言われる事が多い。
Q:ビジューとかのコンセプトモデルではなく、ヤマハオリジナルのラインナップのことを聞いている。
A:演奏する人の個性を出してもらう方針で、コンセプトモデルを除いて強く個性を出す事はしていない。そういう設計思想である。

Q:フレンチ寄りも無個性もわかった。しかし私は日本人なのだから、竹の笛みたいな音が出るフルートを作ってほしい。篠笛の音色は日本人の心だ。
A:。。。。。。。。。

Q:修理職人さんの中には、ヤマハの楽器をよく言わない人が多いが?
A:それはヤマハの楽器をよく知らない人が言うのだと思う。精度などが劣るということなない。いろいろなメーカーの楽器を調整しているが、一部の格安のものを除き、少なくとも国産ならばメーカーによって個性はあるが良い悪いというものはない。他の国産メーカーについて、悪く言った事もないし、言うつもりもない。皆よい楽器を作っている。

Q:クラリネオ(イギリス製子供向けプラスチックのクラリネット)や、グオブラザースのプラスチックのフルートは面白いし、とてもよくできている。特にクラリネオは素晴らしい。ああいったものを、是非ヤマハで安価に出してほしい。日本ではヤマハしか作れないと思う。フルートの裾野を広げることで、それが少子化に対応したメーカーの対応になるのではないか。
A:数が出る見込みがない特殊なものは作る見込みはほとんどない。今後もないとは断言はできないが。。。。

Q:最近流行の、リッププレートの前側をざっくり切り落としたような、流行の頭部管は出さないのか?
A:今はないが、既に20年位前に出していた。流行は行ったり来たりするものなので、今後どうなるかはなんとも言えない。

Q:最近流行の純度の高い銀や、巻き管などは出さないのか。
A:それらは、やればできることではある。やらないわけではなく、今やっていないだけ。ヤマハには音響焼鈍という技術があり、金属の固さ?をコントロールできる。これによって上位機種では響きを最適化している。


感想:
サンキョウには、サンキョウ。村松には村松の音がある。
私は小学校の時に聞いた天理教教会や、祭り囃子が横笛の音の原体験であるし、高校から大学で聞いたサンキョウフルートの音がどこか私にとってのフルートの音色の原点であると思っている。一時期はマテキに行ったが、結局原体験には逆らえず、サンキョウに戻ってきた。戻ってきてしまう楽器には、それぞれの個性があり、それがずっと体の中に残ってしまうものだと思う。
残念ながら、中学生の時に使っていたヤマハ(クラリネットやフルート)の楽器には、大人になってからも継続する「これでなければ」という個性があったという記憶がない。私以外のクラリネット吹きは、みんなクランポンかセルマーに行っている。ある意味、それでもヤマハを選ぶのは、経済的理由でなければ、単なる偏屈者かもしれない? フルートも同様。スクールモデルを卒業したら、それぞれの個性的なメーカーの製品にほとんど迷わず行ってしまう。魅力的な音色であったならば、私がサンキョウに戻ったように、より多くの人が学生時代に使った楽器に一度は触れたであろうメーカーの楽器に戻るはず。

今回は調整のついでに、ヤマハフルートのオリジナルのモデルとコンセプトモデル双方を吹かせてもらったが、オリジナルのモデルの方は個性豊かなメーカーひしめくフルート業界の中で、拒む理由はないが積極的に選ぶ理由もないな、と思った。万人受けするものというのは、反面、積極的に選ぶ理由もない。白物家電ならいいが、趣味のものなのだから、万人向けにするという設計思想は何か違うのではないかと思った。

是非、聞いた瞬間、あれはヤマハだ! とわかる楽器を作ってほしい。~風、ではなくて。
一人のヤマハファンとして。

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1 コメント

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音響焼鈍 (長妻 宏)
2015-10-19 14:46:45
多分、楽器本体を冷凍する技術ではないかと思います。それだけやっているところもあります。ヤマハはトランペットはシルキーの真似から入った。クラリネットはクランポンの真似からでは?職人さんと言っても国立音大卒等の人も多いようですが、フルートの場合は歌口課等、分業制がはなはだしい。一人の職人んが全部作る腕を持たせるような環境にないのでは?また真似するのではなく、本当のオタク的な職人を厚遇しないのでは、と思ってしまう。川上源一郎さんの息子さんはヨーロッパに楽器製造法を勉強に行かされたが、オートバイの作り方を勉強してかえって来たそうだが、そういう精神は大切にすべきではと思います。

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