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アニメ及び周辺文化に関する雑感

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涼宮ハルヒの迷宮 怪盗キッドへの挑戦(前編)

2006年06月11日 | アニメ
「今度のSOS団の活動はこれよっ!」
 いつものハイテンションでハルヒは新聞の記事を指し示した。そこには、市立美術館で展示中の秘宝《ブルーノア》と呼ばれるサファイアを狙って怪盗キッドが予告状を出して来たという記事が載っていた。
 怪盗キッドというのは宝石を専門に狙う神出鬼没な怪盗として全国的に知られている盗賊だ。しばらく前にも大阪城公園内の近代美術博物館で展示されていたロマノフ王朝ゆかりのイースターエッグを盗み出そうとした事件があって、記憶に新しい。
「そのサファイアを俺たちが盗るというのか?」
 俺はハルヒが何を考え付いたのかおおよそ見当は付いたが、あまり気乗りする話でも無いので、あえてそう聞き返した。
「バカね。あたしたちが泥棒するわけ無いでしょ! 逆よ、逆。SOS団の手で怪盗キッドを捕まえて宝石を守り、世間に名前を知らしめるのよっ!」
 ハルヒは予想通りの思い付きを口にして、いつもながら有無を言わさず実行するような態度を見せた。

 怪盗キッドの予告の当日、ハルヒは俺たちを率いて市立美術館の館長室に設置された怪盗キッド対策本部に詰め掛けていた。
「何だ、おまえたちは? ここは高校生のガキが遊びに来るところじゃないっ!」
 対策本部の指揮を取ってる、警視庁から派遣されてきたというベテランの刑事が俺たちに怒鳴りつけた。そりゃそうだろう。警察がまじめに警備してるところに一介の高校生たちが自分たちで怪盗キッドを捕まえるなんて出て行って、まともに取り合ってもらえるわけが無い。警備の邪魔だと言って追い返されるのが普通だ。
「じゃあ、あの子たちは何で良いの?」
 ハルヒは悪びれもせず、警備モニターに映された展示会場に見える学生服姿の高校生と、そして明らかに小学生の2人を指差した。
「あ、あれは大阪府警本部長の息子と、毛利とこのチビガキ!……」
 刑事は慌てて展示室の方に飛び出して行って、モニターに映ってた2人を引っ張ってきた。
「あのなぁ、中森警部。俺たちやったら、オヤジを通してここの県警本部に話が行ってるはずやで」
 大阪府警本部長の息子らしい色黒の高校生が不服そうにそう言った。
「うるさい。わしが現場を仕切るからには、おまえら素人に手出しはさせん!」
 中森警部とか呼ばれた刑事はかんかんだった。
「せやけどな、おっちゃん。今までずっとキッドを逃がしてばかりやんか。俺たちは大阪でキッドは取り逃がしたけど、イースターエッグは取り返した実績があるからなぁ」
 痛いとこを突かれたのか、中森警部はしばらく黙ってしまった。
「あなた、西の高校生探偵・服部平次ね」
 ハルヒは色黒の高校生のことを知ってるかのようにそう言って近付いた。西の高校生探偵? 何だ、それは?
「知らないの、キョン? 全国に何人かいる高校生探偵のうち、特にその能力を世間から認められてるのが3人いるわ。外国帰りのエリート・白馬探、東の高校生探偵・工藤新一、そして西の高校生探偵・服部平次よ」
 ハルヒはそう言って俺に説明するが、いったいいつの間にそんな知識を身に付けたんだ?
「そうや、俺は服部平次やけど、あんたらは何者や?」
「あたしたちはSOS団。あたしが団長の涼宮ハルヒで、怪盗キッドを捕まえるためにやってきたのよ」
 ハルヒは服部とかいう高校生探偵に挑戦するように言い放った。
「そりゃ、おもろいな。それやったら、俺とこの坊主がキッドを捕まえるか、あんたらSOS団がキッドを捕まえるか勝負しようやんけ」
 服部は連れてる小学生の頭をなでながら、ハルヒにそう言った。しかし、その目は明らかに素人の俺たちなんか相手じゃないって言ってるようだった。
「ほな行くで、工藤」
 小学生にそう言って服部は去っていった。

「ああ、ムカつくわっ! 何よ、勝つのはどうせ自分たちだって、あの態度!」
 ハルヒは服部の態度が気に食わなかったかのようにそう吐き捨てた。気持ちは分からなくも無いが、恐らく真実なのは確かだ。
「しかし、あの一緒にいた小学生は何者なの?」
 おいおい、勝負に負けたら小学生のガキに当り散らすんじゃ無いだろうな。
「工藤とか呼んでましたから、東の高校生探偵・工藤……」
 こんなとこ来るのでもメイド服姿の朝比奈さんが答えようとしたが、途中でハルヒが遮った。
「そんなわけ無いじゃないの。小学生よ、小学生。どう見たって高校生じゃないわ」
「だから、その工藤新一さんの弟さんとかじゃないかって……」
 ハルヒにまくし立てられた朝比奈さんは弁解するようにそう言ったが……
「本人じゃともかく、弟を連れてきても意味が無いでしょ!」
「あの小学生が何者でも、西の高校生探偵・服部くんの助手と思ってれば良いだけだと思いますよ」
 完全にビビってしまった朝比奈さんを庇うように古泉が言った。
「それより、我々も早く、どこでキッドを待ち構えるか方針を立てないと」
 古泉の言葉に、ハルヒの関心は怪盗キッドのことに移り、なんとか朝比奈さんは救われた。

「ターゲットの《ブルーノア》のある展示室はここね。ここを中心にキッドの侵入経路と逃走経路を予測してみたいのだけど……」
 ハルヒはどうやって用意したのか、市立美術館の詳細な見取り図を広げた。
「まず、侵入経路……と言いたいところだけど、すでに侵入してる可能性が高いわ。キッドのこれまでの手口を調べたら、事前に関係者に変装して潜り込んでたってケースが非常に多いの」
「すると、警備してる警官や、美術館の職員、それにあの服部くんも怪しい可能性があるってことですね。さすがに小学生に化けたりは出来ないでしょうけど」
 ハルヒのフォローをするように古泉が言った。それにしてもハルヒは本気でキッドを捕まえるつもりらしく、下調べは念入りって感じだ。
「じゃ、誰がキッドの変装なのか調べて見るか?」
 犯行の前に捕まえてしまえればそれに越したことは無い。
「無駄よ」
 ハルヒはあっさりと否定した。
「理由その1、キッドが化ける相手は変装チェックを受ける可能性が低い人物が多い。理由その2、チェックが済んだ人物に改めて変装してしまえば再びチェックされることは無い。理由その3、私たちだけじゃ多くの関係者を完全に動向を把握しながらチェックするのは無理」
 まるで名探偵にでもなったかのように整然と否定の理由を語るハルヒ。
「ま、我々がチェックするとして、例えばすでにキッドがキョンくんに成り代わってるだなんて思いませんから、キッドが本当にキョンくんに変装した時は見逃してしまうって話ですね」
 古泉のその言葉を聞いてしばらく何か考えていたハルヒだったが……
「その可能性は考えてなかったわ。キョン、まさかあなた、怪盗キッドじゃ無いでしょうねっ!」
 そういうとハルヒは俺に飛び掛ってきて思い切り顔中の皮膚を掴んで引っ張りまわし始めた。
「どうやらキッドの変装じゃないみたいね」
 十分に俺の顔を調べまわってハルヒは安心したようだった。当たり前だ。
「キョンくん、大丈夫ですか?」
 朝比奈さんが気遣ってくれたのが唯一の救いだ。俺はこの様子を見ながら笑ってる古泉をにらみつけた。
「単に可能性を指摘しただけですよ。他意はありません」
 古泉はそう言った後、小声で続けた。
「やっぱり、涼宮さんにとってあなたは特別な存在のようですね。キッドが化けてる可能性があるのは僕や朝比奈さんや長門さんも同じなのに、あえて確かめようとはしませんでした。我々なんかどうでもいいけど、あなたが本物のキョンくんでなければ彼女はとっても不安なんでしょう」

 ハルヒは続けてキッドの逃走経路の検討に入った。
「逃走の手順として2通り考えられるわ。ひとつは最後まで変装がバレなかった場合。その時はキッドは何食わぬ顔で悠々と立ち去っていくから、それまでに正体を暴いていないとお手上げね」
 ハルヒは肩をすくめるジェスチャーをして続けた。
「でも、その可能性は少ないはずよ。なぜなら、犯行の発生の時点で現場付近にいた人間が怪しいってのは犯罪捜査の鉄則だから」
 つまり、犯行時点でキッドの姿を把握できて無い場合は現場にいた関係者を疑えって話らしい。
「そこで、もうひとつの逃走手順に備えるのが最優先ってこと。キッドの逃走パターンで一番多いのは……」
 ハルヒはそのパターンと、それに備えるための作戦を語りだした……

 やがてキッドの犯行予告時刻が近付き、俺たちは持ち場へ分散した。監視モニターのある館長室に長門、ターゲットのある展示室にハルヒ、そして予想されるキッドの逃走経路に古泉、朝比奈さんが順番に配置され、最終的な脱出ルートと予想される場所に俺。言うまでもなくすべてはハルヒの独断による指示である。
「有希はここで情報の収集を頼むわ。そして、現場であたしが犯行に備える。ここでキッドを捕捉できたらいいけど、万が一逃げられた場合の備えが古泉くん、みくるちゃん、それにキョン。特にキョンは最終ラインなんだから絶対に逃がしたらダメよ!」
 最初は俺たちを邪魔そうに嫌味を言っていた中森警部も、予告時刻が近付くにつれて何も言わなくなった。いや、俺たちに構ってる暇なんてなくなってきたと言った方が正確だろう。
 服部とかいう例の西の高校生探偵と連れの小学生もいろいろと動き回ってたようだったが、彼らが何をしてるのか確かめる暇は無かった。きっとハルヒよりは確実な方法でキッドを追い詰めようとしてるのだろうとは想像していたのだが……

 緊張に包まれ息を呑む間にキッドの犯行予告時刻は過ぎていった。しかし、俺の持ち場からは展示室の様子はわからない。何か動きがあればハルヒから連絡があることになっていたのだが……
 突然、館内の全照明が切れ、辺りは真っ暗になった。あちこちで警官たちが怒鳴りあってるのが聞こえる。やがて非常灯が付いて視界が少し戻った。同時に携帯の着信を知らせるマナーモードの振動。
『キョン、聞こえる? 今の停電の間に宝石が消えたわ。キッドはまだこの展示室にいると思うけど、万が一のことがあるからそっちも警戒してなさい!』
「わかった」
 ハルヒの状況報告を聞いて俺は携帯を切ろうとした。
『待って、キョン。いちいち掛け直すのが面倒だから繋いだままにしておいて』
 掛け直すのが面倒というのはハルヒらしいと思ったが、俺と繋いだままじゃ他の3人と連絡が取れないだろ。
『そうよ。携帯があれば良いかと思ってたんだけど、トランシーバーを用意してくるんだったわ。ま、こんなときに備えて、あたしからの連絡が無かったら有希には独自に状況を把握してみんなに指示を出すように言って置いたから大丈夫よ』
 確かに状況の把握に関しては長門が一番適任だろうが、ずいぶん投げやりだな。俺はそう思ってハルヒの話を聞いていたが、突然、携帯の向こうの様子が慌しくなってきた。
『(服部平次、あたしの邪魔しないでくれる?……な、なにをするのよっ!)』
 ハルヒが服部とトラブルを起こしてる様子だ。
「おい、どうした、ハルヒ?」
 俺は携帯の向こうのハルヒに呼び掛けたが、どうもハルヒは返答に出られる状況じゃないらしい。
『(あたしが怪盗キッド? そんなわけ無いじゃないのっ!)』
 ハルヒは怪盗キッドだって疑われてるのか? 確かに展示室にいる人間が警察や美術館関係者と服部たちだけだとしたら、真っ先に疑われる怪しいやつはハルヒだろう。しかし、俺が携帯でやりとりした相手は間違いなくハルヒ本人だ。けっして怪盗キッドなんかじゃない。
 俺はハルヒの無実を証明する手助けが出来ないか、そのことを申し出ようと思ったが、いきなり携帯の通話が切れた。向こうから切ってしまったらしい。
「繋いだままにしろって言ったのはおまえだろ?」
 俺はハルヒが疑いを晴らすのに精一杯になったから通話を切ってきたのかと思った。そして、しばらく思い悩んだ。このままハルヒの指示通りにここで怪盗キッドが逃げてくるのを待っているか、それとも展示室に向かってハルヒがキッドじゃないことを証明してくるか。ただし、後の方は例えそれでハルヒを助けることが出来ても、感謝されるどころか持ち場を離れたってことで思いっきり非難されそうだが。

(続く)

涼宮ハルヒの憂鬱 Episode02 通常版 KABA-1603
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劇場版 名探偵コナン 世紀末の魔術師 UPBV-1003
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