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【DCSS】初音島桜前線注意報(22) ……そして、Fine~フィーネ~

2006年01月20日 | アニメ
 ……ということで、『D.C.S.S.』の総括です。解決された問題、解決されなかった問題、土壇場で逃げ隠れしながらラストでちゃっかり出て来てる卑怯なヤツ等々、いろいろと残してくれた作品でしたが、とりあえず最後の取りまとめです。

(1)主人公はアイシア

 『D.C.』の続編だから主人公は純一だとか、今回はことりがヒロインの物語だとか考えていたら物語の展開がわからなくなります。
 ま、最終回を見たらアイシアが初音島にやってきて、魔法の何たるかを学んで、そして旅立っていく物語だったとわかりますが、ラストの土壇場になってわかっても途中の物語の理解が中途半端になってしまいます。
 実際のところ、音夢が帰って来るまでは実際のところ誰が本当の主人公なのかは判然としませんでした。ところが、音夢が帰って来てからはことりが完全に他のサブキャラと同列のところまで引っ込んでしまいます。
 一方、純一と音夢の間は当初は危機的な状況かと思わせながら、実のところどうでもなかったってところに落ち着いてしまいます。音夢の立場が不動であると確定した次点で、これは純一を中心にした恋愛ドラマでは無くなっています。
 自ら引っ込んだことり、新たな物語を作らない純一。この次点でどちらも主人公でないことが明らかになります。そして2つ象徴的なことがあります。1つは美咲がアイシアの前にしか現れていないということです(ラスト除く)。美咲との接触は主人公としての必要条件ではありませんが、十分条件です。そもそも主人公でも無いキャラに唯一美咲が接点を持つ意味はありません。
 もう1つは、環、ななこ、アリスの3人の紹介エピソードをアイシアの目で描いていることです。純一が主人公なら3人の本来のエピソードが何らかの形でフォローされるべきなのですが、アイシア同様、視聴者も冷たく突き放されてしまってます。思えば、この3人以外の本来のヒロインたちのエピソードも作品中では触れられていません。それは視聴者が知ってることだから省いてるんじゃなくて、アイシアが知らないことだから説明してないってことなんですね。
 でも、正直なところ、アイシアが放っとかれるエピソードがかなりあったのが主人公としての存在感を失わせていたのは否めません。

(2)アイシアの遍歴

 それでは、アイシアを中心に物語がどう進んできたのか、おさらいしてみましょう。

 祖母を亡くして天涯孤独となったアイシアは祖母の友人であった芳乃のおばあさんを訪ねて初音島にやってくるも、すでに故人になっていて叶わず、孫の純一の家に厄介になります。純一が魔法を使えると知ると、その弟子になって魔法を教わろうとしますが、和菓子を出すしか能力の無いことを知ると諦めます。
 いきなり純一の家に音夢という少女がやってきます。純一との関係はわからないのだけど、何か喧嘩をしてる様子。音夢が純一の妹だと知ると何とか仲直りさせようと思います。そんな時に知り合った女の子(美咲)に願いが叶う桜の木の話を聞き、その桜の木に2人を呼んで仲直りさせることに成功。桜の木の魔法を信じるようになります。
 環の予知能力を魔法と勘違いしたり、魔法を信じたいというななこの夢を応援したり、魔法と同じように人を幸せにするサーカスに共感を覚え、アリスの人命救助を手伝ったり……こつこつと自分自身の魔法を見付ける修行をしながら夏休みを迎えます。
 一方、音夢が帰って来てから純一のそばから離れていったことりに違和感を覚えてきます。どこか無理をしてるようなことりは不幸のように思えます。また、美咲も自分の気持ちをこっそりしまいこんで満足してることが信じられなくなります。
 何とかことりを元気付けようと、音夢が不在だと偽って純一のサポートを復活させようとしますが、嘘がばれてことりの怒りを買ってしまい、人間不信に陥りそうな感じになります。そんな中でいつしか純一に好意を持ち、音夢に嫉妬してる自分に気付いて来るのですが……
 夏休みも半ばを過ぎた頃、芳乃のおばあさんのもう1人の孫であるさくらが帰ってきました。さっそく弟子入りを申し込むのですが、さくらにはなぜか冷たく拒絶されます。そこで意固地になり、さくらを見返そうと枯れない桜の木を復活させて、純一を思うみんなを幸せにしようとするのですが……
 桜の花が咲き乱れ、誰もが純一を好きでいられる世界。しかし、その世界ではなぜか純一と音夢が苦しんでいます。例え魔法で記憶を消すことが出来ても、2人の魂はそれを受け入れられないのです。苦しむ2人を見て、元の世界に戻そうとするアイシアは、祖母が転々と旅をしていた理由に気付き、自らも初音島から去って行きます……

 ま、要するに恋を知り魔法を知ったが旅立っていくという展開なのですが、それに至る経緯はストレートではありません。そして、それには様々なキャラクターの影響を受けています。

(3)アイシアと朝倉純一

 純一は初音島にやって来たアイシアが最初に出会った人物。アイシアにとっては保護者のような立場です。
 はっきり言って、こいつの悪いところは物事を言うべき時にはっきり言わないってところですね。自分が和菓子しか出せないダメ魔法使いだということ、音夢が妹だということ、さくらが魔法使いだということ……
 すぐに純一が言えば済んでたことを、アイシアが知るまでに時間を浪費してしまってることが多いのです。ま、それでドラマを盛り上げてるんでしょうけど、実生活でそんなことしてたら人間失格の烙印を押されてしまいます。
 音夢が帰って来てからの純一はアイシアから見てもだらしなさを露呈してたようで、これでは「かったりぃ」の頃と変わりません。
 そんな純一をアイシアも好きになってしまうのですが、そこはお約束なのでどうこう言っても仕方が無いでしょう。そして、枯れない桜の木によって変えられた世界で、自分も純一をめぐるヒロインの1人になれたことを喜んでいたのも事実です。
 ですが、さくらが指摘したような、自分が選ばれるまで何度でも同じことを繰り返すというのは穿ち過ぎでしょう。そんなこと何度も繰り返すまでも無くアイシアにだって問題がわかってくるはずです。
 自分が純一を好きになりたいから世界を変えたのではけっして無いことを信じてあげたいです。

(4)アイシアと白河ことり

 アイシアが初音島で最初に出会った「純一のことが好きな」女の子、それがことりでした。
 音夢の不在を良いことに、ちゃっかり後釜に居座ろうとしてたと言えば聞こえが悪いですが、実際ことり自身もチャンスだと思っていたことは確かでしょう。
 2年前、ことりは純一に告白してふられました。当時のことりは他人を信じることに脅えていて、唯一心を許せる純一に告白してみたのですが、実際のところ本当に純一のことが好きだったのかどうかわかりません。
 しかし、それから2年の間に彼女は純一への恋を育んできました。もう他人の心を読むことなんか出来ない普通の女の子として。ことりにとっては2年前じゃなく、今回が本番だったわけです。
 アイシアがやって来た時、傍目にはことりが純一の彼女であると認識されるようになってた感じですが、肝心の純一の心の中には音夢のことしかなく、ことりの気持ちも空振りしてる状態でした。
 でも、アイシアの目にはことりが純一の彼女として焼き付いていました。

 音夢の帰島によって状況は一変します。ことりは完全に純一のそばから離れてしまい、純一が好きだということも意思表示しようとはしません。アイシアにとってはそれは理解できないことでした。
 アイシアはことりのことが好きでした。純一のことを想うことりにある意味、憧れていたのでしょう。でも、音夢が帰って来て純一への気持ちを押しとどめてしまったことりを好きにはなれませんでした。ことりは無理をして苦しんでるように見えたのです。
 実際、ことりも純一のことはしばらく諦め切れませんでした。他のヒロインたちが2年前に直面したこと、純一が音夢を選んだということを素直に受け入れることが出来なかったのです。いや、他のヒロインたちだって一朝一夕で受け入れたわけでは無いでしょう。ただその過程が描かれてないだけです。(さくらを除く)
 2年遅れのことりの恋は2年遅れでこの現実を受け止めなければならない状況になったのです。もちろん、ことり自身はそんなこと承知です。でも、アイシアは知りません。ことりが恋を諦めなければならない理由がわからないのです。
 アイシアはそのうち、ことりだけではなく他のヒロインたちも純一のことが好きだということがわかりました。そして彼女たちも自分の気持ちを諦めて、音夢のことを受け入れてることに。
 自分の魔法が人々を幸せにすることを願うアイシアは、ことりが、そして他のヒロインたちが自由に純一を好きになれることが彼女たちの幸せに繋がることだと思ったのです。何か大切なことに気付かないまま……

(5)アイシアと朝倉音夢

 ある日いきなり純一の家にやってきた女の子、それが音夢でした。他人らしからぬ振る舞いと、突然のケンカ腰。よくわからない女の子というのがアイシアの印象だったはずです。ケンカの一因が自分にもあるってことはわかってなかった感じですね。
 音夢が純一の妹だと知ったアイシアは何とか2人を仲直りさせようと努力し、枯れない桜の木のことを知って、そこで2人を仲直りさせます。ところが、その後で美咲にも、そしてさくらにも、この2人は放っておいてもいずれ仲直りしたはずだと素っ気無く言われてる辺りが悲惨です。ま、この時のアイシアはまだ純一と音夢の禁断の関係なんか知りませんでしたから、無駄なことをしたと突き放してやるのはかわいそうです。
 ですが、やがてアイシアも2人の関係に気付きます。そして朝倉家に居候しているアイシアは否が応でも幸せそうな2人の光景を目の当たりにします。一方でアイシアはことりが引っ込んだことに疑問を感じてるわけですから、その矛先は音夢に向けられます。
「音夢はずるい」
 それがアイシアが出した結論でした。ついこの前まで純一の恋人のように思えていたことりがいきなり引っ込んでしまい、その後に何の苦労もなく悠々と居座ってる音夢。他の純一を好きなヒロインたちが気持ちを押し殺してるのに、自分だけが幸せを満喫してる音夢。無論、アイシアだって音夢のことが嫌いなわけではないのですが、音夢だけが幸せを独占していることが許せないのです。

 音夢だけが幸せな今の現実と違う世界。みんなが自由に純一を好きになって幸せになる世界。そんな世界を願ってアイシアは枯れない桜の木を蘇らせました。
 しかし、その世界で音夢と純一は苦しみました。魔法は2人の記憶までをも消すことが出来ても心を変えることは出来なかったのです。記憶に無い想いに苦しむ2人……アイシアがそれを望んだわけではありません。新しい世界は音夢も純一を好きでいられる世界だったのですから。しかし、2人の心はそれを受け入れることが出来なかったのです。
 アイシアは気付きました。2人が苦しむ世界なんて、アイシアが望んだ幸せな世界ではない。音夢と一緒の幸せな純一を見ることが自分の幸せだと言ったことりたちの言葉に。好きな人が幸せでいることが本当の幸せなのだということに……

(6)アイシアと鷺澤美咲

 純一は和菓子の魔法しか使えないと知ったアイシアが、純一はあてにならないと1人で早朝の修行を始めた頃、公園で出会った不思議な女の子、それが美咲です。
 なぜか朝倉家の事情や純一をめぐるヒロインのことに詳しいのが怪しげで、下手すればストーカーと疑われかねない感じですが、それ以上に怪しげなのがアイシアに語った自分の恋愛観の数々ですね。
 いや、美咲の立場からすれば口も聞いたことの無い純一をこっそり好きになり、窓辺から姿を見てるだけで十分なのかも知れませんが、他人に言い触らすような話ではありません。本人に知られれば、ストーカー扱いとは言われないまでも気味悪がられるのは確かでしょう。
 傍目にはもっともらしくアイシアにアドバイスしてるかのように見えるのですが、その実、ただただアイシアを混乱させているだけのように思います。
 ことりの件はただことり自身の問題に過ぎなかったわけですが、美咲がみんな純一のことが好きだと吹き込んだばかりに、ことりだけじゃなくみんなの問題になってしまいました。
 いくら美咲が自分は「音夢と幸せそうな純一を見ているだけで幸せだ」と言ったとしても、アイシアがそれを言葉通りに受け取るわけがありません。
「美咲も音夢みたいに幸せになりたいんだ」
「ことりも音夢みたいに幸せになりたいんだ」
「みんなも音夢みたいに幸せになりたいんだ」
 みんなを幸せにすることが自分の使命とばかりに思ってるアイシアが、これで暴走しないわけはありません。
 美咲がアイシアの暴走の要因になったとしても、それはそれで構わないでしょう。酷いのは途中から美咲が現れなくなって、そのまま何のフォローもしてないことです。せめて最後にアイシアが本当に大切なことに気付くためのきっかけぐらいは作ってやってほしかったところです。
 いや、確かに最初から答えを口にしてはいるんですけど、それを美咲の口から聞かされたって誰も実感を持って受け取らないでしょ。

(7)アイシアと芳乃さくら

 アイシアが待ちに待っていた本物の魔法使いのさくら。しかし、さくらはアイシアに魔法を教えてくれようとはしません。
 みんなを魔法で幸せにしたいというアイシアに「だから君には教えられない」、人知れず転々として魔法を使っていたアイシアの祖母を「君のおばあさんは立派だったんだね」……技術論云々じゃなく心構えの問題なのですが、いきなりこれじゃ、ただの禅問答。アイシアに分かれと言う方が無理な話です。
 それなりに話せば方向性のヒントぐらいは与えられるだろうに、話すべきことを話さずにトラブルを呼び込んでるという点では、純一によく似ています。さすが従兄妹同士というわけでも無いでしょうけど。
 どうでもいいことかもしれませんが、そもそもさくら自身が偉そうなこと言えるほど立派な魔法使いなのかどうか疑問があります。なぜなら、枯れない桜の木を枯らせたということ以外にさくらが魔法を使ってる様子を見たことがないからです。むしろ、和菓子しか出せなくても空腹な相手にそれを出してやれる純一の方が立派かとも思えますが。ま、軽々しい魔法なんか使わない辺りが大魔法使いなのかもしれませんが。
 みんなを幸せにしたいという自分の魔法の理想をさくらに否定されたアイシアは、もう誰の言葉も聞かないほど意固地になり、さくらがけっして蘇らないと言った枯れない桜の木を虚仮の一念で蘇らせてしまいます。
 しかし、枯れない桜の木がもたらした誰もが純一を好きになれる世界は、アイシアが望んだみんなが幸せになれる世界ではありませんでした。
 誰かを幸せにするということは誰かの幸せを犠牲にするということ。みんなを幸せに出来る魔法なんて存在しない。だから、誰かを幸せにする魔法はこっそり、誰にも知られることなく使われなくてはならない……それを知ったアイシアは初音島から姿を消していきました。
 でもねぇ、そんなこと事前にアイシアに教えてやることは出来なかったのでしょうか? 確かに口で言ってもわからないってことはあります。でも、言わなければわかるかどうかという以前の問題でしょう。ま、さくらはアイシアが物事を起こす前に自分で気付いてくれることを期待してたのでしょうけど。

(8)残された課題

 案の定というか、以前にことりと美咲について指摘した問題点は解決されないままに終わってしまいました。「他人を傷付けずに恋は奪えない」ということと「相手と向き合わない限り恋は始まらない」ということです。
 ことりに関して言えば、この作品が終わってからの課題と言ってしまえばそうなのですが、せめて音夢相手に果敢な挑戦を試みて(そして玉砕)してほしかったところです。
 美咲は秋の光景で屋上の昼食会に参加してる様子が描かれ、純一と音夢の結婚式にも参列していますから、かつてアイシアに語った決心を実践したようなのですが、いかんせん作品本編で描かれないままに終わってるというのは乱暴すぎます。
 せっかくアイシアの魔法で純一と音夢の関係がリセットされて、次期も都合よく夏休みが終わったところなんだから、美咲が純一の前にデビューする絶好のチャンスだったのに、これを活かさない手は無いでしょうに。
 ま、純一と音夢の結婚式までやってしまったら『D.C.T.S.』とかの可能性は無いかと思いますが、美咲の件は番外編ででもフォローしてくれないでしょうかねぇ。

   ---------------

 ……というところで、半年間続けてきた《初音島桜前線注意報》の連載も今回で終了とさせていただきます。ま、期待してた人なんていないと思うけど、長々とお付き合いいただいてありがとうございました。
 まったくの新作だとこういう遊びの出来る要素は無いし、かといって原作付きのストーリーだと原作知らないとバカみたいだし、知ってれば知ってるだけ虚しい感じがします。今回は前作『D.C.~ダ・カーポ~』の基本知識がある上で、ストーリーはまったく新作。それも半年間かけてじっくり描かれるという作品だったので、十分遊ばせてもらえました。
 おっかけるだけで精一杯の新作ラッシュや、新キャラ続々でレギュラー交代の続編も良いですけど、こういう既成のキャラ+αでじっくり見せてくれる作品の方が愛着がわくことは確かですね。

 それでは夏公開予定の『劇場版D.C.~ダ・カーポ~ 紫和泉子の逆襲』を期待しましょう。(嘘だってばっ)
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