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アニメ及び周辺文化に関する雑感

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動物耳と妖精の羽、天使の翼

2005年06月03日 | 雑記
 現在、深夜放送で『LOVELESS』とかいう高河ゆん原作のアニメが放映されていますが、この作品の登場人物たちの動物耳にすごく違和感を感じてしまって馴染むことが出来ないのです。
 動物耳をもったアニメキャラは何もこの作品が最初では無いし、別に動物の擬人化キャラじゃなくてもたいていの場合は許容範囲です。しかし、この作品に関しては大いに違和感を覚えてしまいます。原因は、その動物耳以外に人間の耳をちゃんと持ってるということです。
 そんなこといえば、でじこの猫耳だってうさだのうさ耳だって、他に人間の耳が付いてるという人がいるかもしれませんが、でじこの猫耳やうさだのうさ耳は作り物の偽物であるのが明確です。別にコスプレで猫耳付けた女の子やうさ耳付けたバニーちゃんに違和感を覚えるというわけではないのです。
 この作品のキャラはそんな作り物でもない本物の動物耳を、本来の人間の耳とは別に持ってる……つまり耳が4個あるということです。しかも、この動物耳は大人になると取れてしまうものだとされています。

 では、この作品での動物耳とはどういうものなんでしょうか? 大人になったらなくなってしまうものというと人の場合、乳歯を思い出しますが、乳歯は明確に永久歯と交代するものであって、同じ歯の乳歯と永久歯が共存することは(歯並びが悪くて永久歯が乳歯を押し出さずに別の場所から生えてきた場合を除けば)ありません。
 しかし、この作品のキャラクターの動物耳と人間耳は明らかに共存しています。人間耳が動物耳と生え変わるというわけではありません。それじゃ、他に動物耳としての生物学的な存在意味があるのかというと、疑わしいとしかいえません。
 そもそも人間の耳と動物の耳とでは機能が違います。動物の耳は(多少は仲間とのコミュニケーションに使う場合があるとしても)ほとんど危険や獲物の察知のための聴覚レーダーとしての役割がほとんどです。ウサギの耳やゾウの耳くらいに大きくなると体温調整の機能もありますが、それはあくまで副次的なものです。
 一方、人間の耳の一番重要な機能はコミュニケーションであり、耳は言語機能と密接に繋がっています。動物の耳は頭頂部近くにあるものが多いですが、これは4本足歩行の動物が少しでも遠くの物音を聞き分けるために必要なことです。
 人間の場合は直立歩行をしているため、頭部は十分な高さにあって特に耳が頭頂部に近い必要はありません。それよりも脳の言語中枢や発声器官との関連から、耳は頭部の低い位置にあった方が便利です。そこで人間の耳は顔の横についています。この位置に耳がある結果、左右の耳がある程度分断されているため、左右の識別が容易になっています。ただ、言語機能によるコミュニケーションが一番の重要性をもってるため、近くの物音を聞き分ける能力が発達する代わりに聴覚レーダーとして特に遠方の物音の聞き分け能力は落ちていると言って良いでしょう。

 この動物耳と人間耳の違いを踏まえたうえで『LOVELESS』の動物耳を考えてみても、別にこの世界の未成年キャラは四足で這いつくばって野生生活を送ってるわけでもなく普通に文明社会での生活を享受しています。人間耳以外に動物耳を持つ必要はありません。
 ま、これは別に他の動物耳を使った作品でも人間耳じゃなく動物耳である生物学的理由が無いという点では同じなんですが、一組しか無い耳が動物耳と入れ替わってるくらいで気にしたりするほど野暮ではありません。でも、余計に耳が付いてると気になってしまうものです。

 この『LOVELESS』の動物耳みたいに余計に付いてるキャラクターの体の部品として、もっともメジャーな部類が妖精(フェアリー)の羽でしょう。もっとも、こちらは多くの場合、『LOVELESS』の動物耳と違って飛ぶという機能は使われているのですが、生物学的にその羽が有効なものなのかといえば、疑問の残るところです。
 現実世界には妖精という生物は実在が確認されていないので、どういう生物として扱うかということが問題となりますが、多くの場合は人間のミニチュアとしての外観を持ち、言語能力を持ってる等のことから、霊長目それもホモ属の生物の一種(つまり種の違うヒト)として扱うことにします。

 さて、妖精の羽として多くの場合描かれるのは、トンボや蝶といった昆虫の羽根を模したものです。しかし、昆虫の羽根は外骨格の一部が変化したものであり、人間と同じ脊椎動物として考えた妖精には相当するものがありません。また、昆虫の体組織は硬い外骨格に覆われた空洞構造なので比重は軽いのであの程度の羽で飛ぶことが出来るのですが、妖精の場合は人間と同じく骨格の周りに筋肉組織が詰まった体構造を持つとすると比重は重く、しかもたいていの妖精は昆虫よりも大きいということを考えると、昆虫タイプの羽ではとても自由に飛べるものとは思えません。
 じゃ、一歩譲って鳥のような翼の可能性を考えてみましょう。鳥類の翼は爬虫類の前足が進化したものであり、いわば人間の腕に相当する器官です。前足が翼になったので鳥類の脚は2本だけになってしまって、別に減った分の足の数が補充されてはいません。これを妖精に当てはめると、妖精にはちゃんと両腕両足が付いているので翼になるための器官はありません。

 でも、それじゃつまらないから、もう一つ可能性を考えて見ましょう。人間の指の間にはもともと膜が張っていて、両生類だった頃の痕跡が残ってるのですが、逆に腕と胴の間に膜を張って腕を翼の代用品として使うことです。ま、蝙蝠とかムササビとかの飛行タイプの哺乳類と同じような発想です。
 人間がこれをやろうとしても、人間サイズ(註1)になると体が重すぎて飛ぶことは不可能かと思いますが、妖精ぐらいの大きさならむしろ蝙蝠やムササビなどより小さかったりするので十分可能かと思います。でも、さすがに蝙蝠形態だと適応するのに人間と同じ外観を保つことは無理かと思うので、ムササビタイプでしかもそれより薄いタイプの膜を張って飛ぶことにします。これだと空中を滑空することは出来ても羽ばたいて飛び上がることはやはり不可能だから、飛行能力は大きく制限されてしまいます。

 手と胴の間、つまり脇の部分に腰辺りまで飛行用の膜を持ち、飛行時にそれを広げれば妖精ぐらいのサイズだと滑空飛行は可能かと思います。でも、羽ばたいて飛び上がれないんじゃ自由に飛んでるというイメージはありません。また、この形態の場合、服装は貫頭衣で腰の部分を結ぶタイプの素朴なファッションしかありえませんが、背中に羽が生えてる場合ほど不自由ではないので、それは問題ではないでしょう。ただ、飛行用の膜が邪魔になって腕を自由に使えなくなるのは否めません。

 妖精と同じように羽を持った人間型の生物としては、天使とか有翼人とかいうものがあります。近いところでは『Air』の翼人や『アクエリオン』の堕天翅族が挙げられます。こちらはサイズ的にも人間と同じくらいに想定されているため、端っから昆虫型の羽は考えられず、鳥のような翼がイメージされています。
 元々、原始的な鳥人のイメージは『アクエリオン』の堕天翅族のように人間の腕がそのまま翼になったものだったのですが、現在では『Air』の翼人のように両腕とは別に翼が生えてるイメージが支配的です。それも背中に直接翼が生えてるというイメージなのですが、これは人間の肩甲骨を翼の痕跡か何かだと誤解されていた時代の名残でしょう。しかし、肩甲骨は肩を支え、腕の動きを支える役割を持った骨格なので、翼の痕跡というわけではありません。そもそも人間の進化の源流には翼を持った生物などありませんから。
 実際問題、背中に翼の骨格構造があったとしてもそれだけでは翼を支え、その動きを支えるための力学的な構造が無いので、それで空を飛んだりすることはできません。鳥でさえ翼だけで羽ばたいてるわけじゃなく、全身で羽ばたいて空を飛んでいるのです。背中にとって付けただけの翼で人間サイズの生物が飛べるわけはありません。あくまで全身で羽ばたく構造が必要です。人間は泳ぐ時に腕を動かすだけじゃなく、全身を使って泳ぎますが、それと同じことです。
 『灰羽連盟』では繭から生まれてきたラッカという主人公の背中に羽が生えてくる様子が描かれていましたが、肩甲骨よりも背中の中心に近いところから生えていたみたいです。これじゃ全身で羽ばたくどころの話ではありませんが、灰羽の羽は元々飛べない羽なのでこれはこれで良いんでしょう。

 翼の動きと全身の動きをシンクロさせるためにはやはり翼は体側面から生えている必要があります。早い話、腕が翼に変わるのが手っ取り早いのです。しかし、腕が翼に変わってしまっては人間としての生活は出来ません。かといって、妖精で考えたような膜を張っただけでは羽ばたけないし、人間サイズじゃ滑空すら出来ないでしょう。ちゃんとした骨格構造を持った翼が必要なのです。
 現生の陸棲脊椎動物はかなり早い段階で4本足に固定化されてしまってるので、人間段階になって自然に腕とは別の翼のための骨格構造を持った進化生物が発生することはまずありえません。両生類段階で6本足の生物(註2)が残っていて、それが人間段階まで進化して来たとかいうなら別ですが、そういう可能性は無いのです。
 ま、そんなことを言っては続かないので、現実的な進化のことは考えないことにしましょう。人間にさらに2本の足、つまり両翼の骨格構造が付加された進化が起こったとします。全身で羽ばたいて飛ぶためには体側面に付いている必要があります。しかし、これが昆虫の足のように体側に沿った方向に並んだ場合、腕と翼が邪魔しあってどちらも十分に使えません。有効なのは方の構造を前後方向に拡大して、腕と翼を前後に並べることです。この場合、腕も翼も真横から離れすぎると前後の動きに制限が出てしまうのでうまく調整する必要があります。
 こうしてどうにか全身で羽ばたくための翼が用意されたとして、果たして飛べるのでしょうか? 現生の鳥類で人間と同じ大きさで飛んでるものはありません。また、鳥類の骨は中空構造になっていて人間の骨と違って軽量化されています。また、ダチョウのような飛ばない鳥を除けば、羽ばたきに不必要な頭部や足は小さくなっています。つまり、鳥類と同じ程度の羽ばたきでは人間は飛べないものと思われます。
 なら、鳥類と同様の軽量化を図ってみることを考えます。骨格を中空化して軽量化を図った場合、直立歩行で体を支えられる強度が保てる保障はありません。頭部を小さくしたら知能が低下して言語能力にも支障が出てくるだろうし、足を退化させれば直立歩行できなくなります。単純にダイエットで体重の軽量化を図っても、むしろ体力低下によって羽ばたく力を失う可能性が高いでしょう。ちょっとやそっと翼を得て羽ばたいても飛べないことは、鳥人間コンテストが示している通りです。

 結局のところ、羽ばたく翼を持ったからといって天使や有翼人が空を飛べる可能性は低いのです。それなら最初から灰羽みたいに飛べない翼と割り切ってしまったほうがすっきりします。
 いや、絶えず素早く力強く羽ばたき続ければそれなりに飛べないことは無いでしょうが、人間の筋肉は疲労してしまうものなので、すぐに羽ばたけなくなってしまってやっぱりたいして飛ぶことはできないでしょう。



(註1)サイズと飛行能力

 生物が空を飛ぶためには、重力に対して浮力が上回る必要があります。滑空時の自然な浮力にしろ、羽ばたきによる強制的な浮力にしろ、浮力は重力方向に対する断面積に比例します。重力の方は質量に比例しますから、生物の体の比重を一様と考えると体積に比例することになります。
 断面積はサイズの2乗に比例し、体積は3乗に比例しますから、サイズが大きくなるほど浮力に対する重力の比率が大きくなって飛ぶことが困難になってきます。

(註2)6本足の両生類

 現在の構造主義的進化論では、進化はその初期の段階で多様性が極められ、そこから淘汰されなかったものが複雑化していく方向に発展していくと考えられています。つまり現生の陸棲脊椎動物の足が4本(もちろん人間の場合は手、鳥類の場合は翼を含めて)で固定化されているということは、進化の初期に足が発生した時点で多様性の淘汰が行われた結果と考えられます。その時期を両生類の段階だと考えて見たわけですが……脊椎動物の足は魚類の腹鰭が発展したものだとも言われてますから、魚類の段階で腹鰭の数の取捨選択が行われた結果かもしれません。
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Unknown (絵塗師)
2005-06-03 22:36:12
ケモノ耳については私も以前から疑問を抱いていました。頭のてっぺんに耳が付いているということは、脳を保護するべき大事な頭骨に耳管の通る穴が開いているということで、解剖学的に納得いきません。

それと、ケモノ耳キャラはたいてい、本来の耳がある場所が髪の毛などで隠れていますが、そこがどうなっているのか想像が困難です。

それゆえ私の場合、ケモノ耳キャラは人間と同じ位置に耳が付いているほうが受け入れやすいです(天地無用!の魎皇鬼のような)。ま、それでも特にかわいいキャラであれば、許してしまう場合もありますが。



ファンタジーの生物でもうひとつ疑問なのが人魚。人間の姿は水中生活に適しているとはいえません。仮に適応して足がひれのように進化したとしても、上半身がまったく変化しないということはありえないでしょう。おそらくイルカのように、水の抵抗の少ないのっぺりした形になってしまうでしょう。アニメ版『青の6号』のミューティオが比較的イメージに近いですが、あれでもまだ変化の度合いが低いですね。



ケモノ耳と人魚 (結城あすか)
2005-06-04 08:41:34
 実のところ、ケモノ耳自体が気になってたわけじゃなくって人間の耳と一緒にくっついてるのに異常に違和感をおぼえたわけで、そこから機能的な考察をしてみたわけです。



 人魚は「余分なものがくっついてる」というイメージが無いから対象として思い浮かばなかったのですが、人間としての基本的な概観をとどめた段階での水中適応なら、ああいう魚の尾鰭にはなりませんね。

 4足獣ならクジラやイルカのように足が退化して胴が伸びる方向に向かうのでしょうけど、人間の場合は足2本をそのまま尾鰭として活かした方向に向かうでしょうね。もっとも手の方はどんどん退化して短くなるか、長い鰭に変化してしまうかの方向。頭部は首が短くなって胴に固定されてしまう感じですか。

 究極的には細長い尾鰭が2本と、長い腹鰭2本または退化した手の痕跡、人面魚のような顔……胴は魚のように縦長になるより、エイみたいに横長になって行きそうですね。

 それよりも人魚で一番気になるのは生殖機能なんですけど……

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