石油と中東

石油(含、天然ガス)と中東関連のニュースをウォッチしその影響を探ります。

ガスOPEC(天然ガス輸出国カルテル)は生まれるのか?(第3回)

2007-03-29 | 今週のエネルギー関連新聞発表

(注)HP「中東と石油」「ガスOPECは生まれるのか?」全文(第1回~第6回)を一括ご覧いただけます。

(第3回)天然ガスの消費と輸出の拡大

 世界の天然ガスの消費は過去40年間拡大基調を続けている。1965年に年間7千億立方米であった消費量は、2005年には2.7兆立方米(石油換算:日量47百万バレル強)に達し、40年間で4倍近くも増加している。この間、前年より消費が減退したのは1997年のみであり、それ以外は一貫して増加している。

  これを石油の消費傾向と比べると顕著な違いが見られる。即ち、同じ期間の全世界の石油の消費量の増加率は2.6倍であり、天然ガスの増加率よりかなり低い。しかも石油の場合は対前年の増減にいくつかの波があり、第一次オイルショック直後(1973-74年)、80年代初頭(1980-83年)及び90年代初頭(1991-93年)の3度にわたり石油の消費量が前年度を下回っている。これに対して天然ガスの場合は上に述べた通り前年を下回ったのは1997年のみである。

  このように天然ガスが石油よりも安定して拡大したことにはいくつかの理由が考えられる。その一つの理由は、天然ガスが生産者(国)と消費者(国)間の長期契約により安定した需給関係が保たれていることである。さらに近年、天然ガスはCO2排出量が少なく、亜硫酸ガスや窒素酸化物を排出しないクリーンなエネルギーとして需要が高まっていることも指摘できる。

  こうして天然ガスの輸出は急速に拡大している。BP統計(BP Statistical Review of World Energy)では輸出量そのもののまとまった資料はないが、1997年から2005年までの「パイプライン及びLNGによる天然ガスの貿易動向(Natural Gas Trade Movements)」によれば、1997年の貿易量はパイプラインによるものが3,217億立方米、LNGが1,113億立方米、合計4,330億立方米であった。2005年のそれはパイプライン5,327億立方米、LNG1,888億立方米、合計7,215億立方米に増加している。97年から05年までの9年間で天然ガスの貿易量は約1.7倍に拡大しており、年平均の増加率は6.6%に達している。この間、世界全体の消費量の増加は1.2倍(97年:2兆2,500億立方米→ 05年2兆7,500億立方米)であり、年平均増加率は2.5%であった。このことから天然ガスの国際間貿易が急速に拡大していることがわかる。

  さらに天然ガスの貿易量に占めるパイプラインとLNGの比率を見ると、1997年はパイプライン74.3%、LNG25.7%、2007年はパイプライン73.8%、LNG26.2%であった。全貿易量のほぼ4分の3がパイプライン、残る4分の1がLNGという構成に大きな変化は無いが、年平均の増加率はパイプラインが6.5%、LNGが6.9%となっており、天然ガス貿易に占めるLNGの比率が徐々に高まっている。このことから、世界の天然ガス貿易はパイプライン輸出からLNG輸出にシフトしている、と言えよう。

(これまでの内容)

 (第2回)世界の天然ガスを独占する三つの国:ロシア、イラン、カタル

 (第1回)プロローグ:ロシアとウクライナの紛争が西欧にもたらした悪夢

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