石油の内外情報を読み解く

内外の石油・天然ガス関連のニュースをウォッチしその影響を探ります。(元ジェトロリヤド事務所長 前田高行)

OPEC・非OPECの協調減産は守られているか?【2017年4月現在】

2017年05月12日 | 産油国・OPECの動向

2017.5.12

前田 高行

 

 OPEC加盟11か国(リビア、ナイジェリアを除く)と非OPEC11か国(ロシア、メキシコ、カザフスタンなど)により今年1月から6か月間の予定で180万B/D(内訳、OPEC:120万B/D、非OPEC60万B/D)の協調減産を実行中であり、実施状況を毎月検証するJMMC(閣僚級合同モニタリング委員会)の4月会合が28日に開催され、その結果についてOPEC事務局からプレスリリースとして発表された[]

 

 これによると前月(3月)の協調減産の達成度は2月を4%上回る98%とほぼ目標を達成した数値になっている。但し減産幅は各国によってばらつきがあり、サウジアラビアおよびイランが目標を上回る減産を行っていることによりOPEC全体としては120万B/Dを上回る減産を行う一方、非OPECはロシアが30万B/D減産の約束を最近ようやく果たしたと見られるなど未だ目標を達成していない模様である(JMMCは各国別の詳細な生産量とその達成度を公表していない)。

 

 イランはそもそも米国の経済制裁による輸出不振を理由に唯一増産を認められたのであるが、輸出増加が思うに任せず、許された生産目標を達成できないにすぎない。したがって協調減産の達成率が100%に近いのはひとえにサウジアラビアによるものと言って良いであろう。

 

 ともかくも協調減産により石油の供給が引き締まったことは間違いなく、原油価格は年初から55ドル/バレル前後で堅調に推移してきた。しかしここにきて変調の兆しが見え、5月第1週末には北海Brent原油、米国WTI原油が共に50ドルを割る状況である[]

 

 OPEC・非OPECの協調減産にもかかわらず原油価格が上昇しない要因は何といっても米国のシェールオイルの増産圧力である。シェールオイルが本格的に生産されるようになった2012年以降、それまで500万B/D台で推移していた米国の石油生産量は急激に上昇、2014年後半から2015年にかけては900万B/Dを超えている。その後供給過剰により原油価格が暴落、2016年初めに30ドルを割ると、後発でコスト競争力の低いシェールオイルは生産を停止する油田が続出した。

 

 しかしシェールオイルは市場から退場することなく、技術開発によりコスト競争力を高め、一部企業はバレル30ドルでも利益を出せる筋肉体質となり現在もしぶとく生き残っている。サウジアラビアなど既存の産油国はシェールオイルの締め出しを狙って昨年前半までは低価格による我慢比べ(チキンレース)を続けたが、国家財政に赤信号がともるようになり、背に腹は代えられずOPEC・非OPEC産油国は協調減産に踏み切った。その結果、原油価格は回復したが、これはライバル米国のシェールオイルの復活を容認することでもある。一時800万B/Dに落ち込んだ米国の石油生産量は今年2月に入り再び900万B/Dを記録している。

(図「米国の石油生産量(IEA資料)」参照。http://menadabase.maeda1.jp/2-D-2-03.pdf

 

 

 米国内のリグ(掘削機)の稼働台数は上昇傾向にあり、今後50ドル/バレル以上の価格が持続すれば米国のシェールオイルは本格的な増産体制に入ると見られる。「米国第一」を標榜するトランプ新大統領は企業の競争力回復と雇用創出を掲げ保護貿易主義を標榜しており、オバマ前大統領が環境保護を理由に制限していたシェール油田の開発と国内縦断パイプラインKeystone XL pipelineの建設を許可した[]。これによりシェールオイル増産の機運が高まることは間違いない。さらにノルウェー等協調減産に加わらない産油国あるいはExxonMobil、Shell、BPなどの国際石油企業も増産意欲が高まるであろう。

 

 それでもサウジアラビアやロシアなどは原油価格をこれ以上下落させないためにも減産を続ける(あるいは減産の意思を表明し続ける)ほかないのである。イランの石油相は当面の価格は55ドル程度が望ましいと語っており[]、他の産油国にとっても同じ意見であろう。しかし市場では45―50ドルが妥当な線であるとの厳しい見方も出ている[]

 

  状況を憂慮した各国からは今年7月以降の協調減産継続を求める声が続出、それは今や既定路線となりつつある。4月29日のOPECプレスリリースは5月24日に開く次回のJMMC会合とそれに続くOPEC-非OPEC合同会合で協調減産の期間延長が決定されるとの見通しを示している(なおOPEC定例総会は翌25日に開催される)。

 

 これに呼応するかのようにOPECの雄サウジアラビアのFalih石油相と非OPECの雄ロシアのNovak石油相は共に供給削減を来年まで延長する可能性すらほのめかしているのである[]。二人が延長問題に言及したのはNovakがモスクワで声明を、他方Falihは訪問先のマレーシア・クアラルンプールでの報道インタビューと、場所や発表方法は異なったものの、同じ5月8日のことであった。両石油相の間で緊密なすり合わせがあったことは想像に難くない。そして二人の胸中にあったのは共通の敵米国のシェールオイルに対する戦略であったろう。

 

以上

 

(参考):OPEC・非OPECの協調減産は守られているか?【2017年3月現在】

http://mylibrary.maeda1.jp/0403OpecNonOpecProductionCutMar2019.pdf

 

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        前田 高行

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        E-mail; maeda1@jcom.home.ne.jp



[] OPEC Press Release on 2017/4/28, ‘JMMC reports yet another high level of conformity’

http://www.opec.org/opec_web/en/press_room/4259.htm

[] Arab News on 2017/5/6, ‘Oil rebounds from 5-month lows on Saudi assurances’

http://www.arabnews.com/node/1095166/business-economy

[] Arab Times on 2017/3/27, ‘Keystone XL pipeline: A threat to OPEC?’

http://www.arabnews.com/node/1074466/business-economy

[] Arab News on 2017/5/8, ‘Iran says $55 oil price suitable’

http://www.arabnews.com/node/1096071/business-economy

[] Arab News on 2017/5/10, ‘Oil buckles as concern grows over battle of OPEC vs. shale’

http://www.arabnews.com/node/1097171/business-economy

[] Muscat Daily on 2017/5/8, ‘Saudi Arabia and Russia signal oil cuts extension into 2018’

http://www.muscatdaily.com/Archive/Business/Saudi-Arabia-and-Russia-signal-oil-cuts-extension-into-2018-50lw

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