石油と中東

石油(含、天然ガス)と中東関連のニュースをウォッチしその影響を探ります。

BPエネルギー統計2016年版解説シリーズ:石油+天然ガス篇(1)

2016-09-15 | BP統計

(注)本レポートは「マイライブラリー(前田高行論稿集)」で一括してご覧いただけます。

http://members3.jcom.home.ne.jp/3632asdm/0389BpOilGas2016.pdf

 

(石油と天然ガスは一体として考えるべきである!)

はじめに

 BPの「BP Statistical Report of World Energy 2016」をもとに本シリーズで石油及び天然ガスの埋蔵量、生産量及び消費量(天然ガスについては貿易量も含む)のデータを抜粋して解説したが、最後に石油と天然ガスを合わせた形でその埋蔵量、生産量及び消費量についての解説を試みる。

 

 石油と天然ガスは常温常圧の状態で前者が液体、後者が気体の違いはあるものの本来は同じ炭化水素資源である。石油は運搬・貯蔵等の利便性に優れ、また用途としては燃料用のほか、石油化学原料にもなるため古くから広く利用されてきた。

 

 これに対して天然ガスは主成分がメタン単体であるため燃料として使用されることがほとんどであり、石油化学原料(メタノール、エチレンなど)としての利用は広く普及していない。加えて天然ガスは大気中への拡散を防ぐため密閉状態で運搬しなければならない。このため従来は生産地から消費地までのパイプラインが必要であった。しかし運搬・貯蔵方法としてガスを極低温で液化するLNGの製法が普及した結果、遠く離れた消費地に大量のガスを供給するLNG貿易が確立した。世界的なエネルギー消費の増大に対して天然ガスは石油の代替エネルギーとして需要が拡大している。さらに天然ガスは石油に比較してCO2の発生量が少ないため環境問題の観点からも強い需要がある。

 

 石油と天然ガスはそれぞれの発展度合いの違いにより現在も別々に取り扱われることが多いが、エネルギーとして見れば両者は殆ど変わらないのである。石油生産国の多くは天然ガス生産国でもあり、また石油消費国も同時に天然ガスの消費国である。生産国と消費国はそれぞれが石油と天然ガスのベストミックスを探っている。

 

 本稿では石油と天然ガスを合わせた埋蔵量、生産量及び消費量についてBPのデータをもとに解説を試みることとする。なお天然ガスから石油への換算率は10億立方メートル(以下㎥)=629万バレル(1兆㎥=62.9億バレル)として計算した。

 

 

1.世界の石油と天然ガスの埋蔵量

(2015年末の石油・天然ガスの合計可採埋蔵量は石油換算で2.9兆バレル!)

(1)2015年末の石油と天然ガスの合計埋蔵量

(図http://members3.jcom.home.ne.jp/maedaa/3-1-G01.pdf参照)

 2015年末の世界の石油埋蔵量は1兆7千億バレルであるが、これに対して天然ガスの埋蔵量は187兆㎥であり、これは石油に換算すると1兆1,750億バレルである。石油の埋蔵量が天然ガスより約5千億バレル多く、両者を合わせた合計埋蔵量は2兆8,730億バレルとなる。

 

 埋蔵量を地域別に見ると、中東は1兆3,069億バレルであり、世界全体の埋蔵量の45%を占めている。続く欧州・ユーラシアは5,124億バレル(18%)であり、この両地域で世界の埋蔵量の63%を占めている。その他の地域については中南米3,774億バレル(13%)、北米3,182億バレル(11%)、アフリカ2,175億バレル(8%)、アジア・大洋州1,410億バレル(5%)である。

 

 本シリーズの石油篇及び天然ガス篇で触れたそれぞれの地域別埋蔵量と比較すると、中東は石油埋蔵量が全世界の47%を占めているが、天然ガスのそれは43%であり、石油の比率が高い。これに対して欧州・ユーラシアの石油と天然ガスの埋蔵量はそれぞれ全世界の9%及び30%であり、天然ガスの比率が3倍以上である。

 

(続く)

 

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        前田 高行         〒183-0027東京都府中市本町2-31-13-601

                               Tel/Fax; 042-360-1284, 携帯; 090-9157-3642

                               E-mail; maeda1@jcom.home.ne.jp

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