南風北風―ぱいかじにすかじ―  by  松原敏夫

沖縄、島、ことば、声、感じ、思い、考え、幻を、書き込んで、鳥の声、海の音、聴いている。

近作詩  「あなたを探して Ⅲ」  

2016-10-17 | 沖縄の詩

あなたを探して Ⅲ        松原敏夫

 

市場から仏具通りの坂を下る。香炉の前を語りたげな影が通過する。
過ごした時間が立ち上がる。便箋の向こうにいるひと。哀愁が好きな
襤褸の精神。あなたが手紙を向日葵で埋めたとき、沈黙は生のほう
に向かった。あなたは書いた、気まぐれな暗さに乾杯しよう、と。

那覇は青春を放つのに格好の街だった。無謀と希望。抵抗と反逆。生
の破滅とトタン屋根のはしゃぎ。アルコールと愛と「青い影」。薄汚れた
風のような浪費。

瞼を開くようにマンションのカーテンを開ける。光線。広場。ビル。路上。
三線。この街で喪失した物語が運命をひきつれて流れている。空っぽ
の部屋は腐食しはじめている。わずかな夢をここで生きなければなら
ない。

記憶が隠れた旋律を採譜した。邂逅のあとの誤算は惨憺たる楽しさ。
夢は曲がり角だらけでおかしかったからコーヒーカップや玄関ドアでさ
え歌にした。

時は背中をむけて夜のベランダから去った。青春も生も死も淡い鈍色
にかがやく。仏具通り。あなたの幻影。あなたの歌が薔薇のように突き
刺さって消えていった。

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