マドリーの恋人

ヤマダトミオ。 画家。 在スペイン45年。

アンヘル・ニエトが死んだ

2017-08-09 14:30:00 | スペイン日記

アンヘル・ニエトとデルビィ

 60年代、70年代のスペインで 青春をすごした日本人なら、ロードレーサー・アンヘル・ニエト(Angel Nieto)の「12+1」を覚えていると思います。日本でもモータースポーツの世界の人なら思い出す名前だと思います。70年代のオートバイレースで大活躍をしたのがスペイン人・アンヘル・ニエトでした。彼が“イビサ島で交通事故に遭って病院に運ばれた”とテレビ番組の下に速報テープが流れました。それを見てなぜか、ダメだなぁ、と僕は思いました。トランプ大統領と同い年の70歳でした。


 僕はモータースポーツに詳しくないので、専門用語に間違いがあると思いますが、大目に見て下さい。今はサッカーからバスケット、テニスもF1でもスペイン選手が活躍しています。特に、モーターサイクルの世界ではスーパーバイク・クラスのシト・ポンズ(Sito Pons)、ダニー・ペドロサ(Dani Pedrosa)、マルク・マルケス(Marc Marquez)などがチャンピオンです。その基を築いたのがアンヘル・ニエトです。小柄な彼が世界チャンピンになったのは一番小さいクラスの50㏄(のちに125㏄)でした。

 

 騎手ではありませんが、50㏄クラスには最適だったようです。バイクはスペインのデルビィ(Derbi)でした。世界チャンピオンには13回、主だった世界レースの入賞は90回でうち23回はスペインチャンピオンでした。1969年~1984年は輝いていたアンヘル・ニエトでした。怪物みたいなアンヘル・ニエトですが、彼を嫌うスペイン人はいません。誰からも好かれる人柄でした。13回も世界チャンピオンになったのに、いつも下町の兄ちゃんでした。ともかくあけっぴろげの性格で、ジョークが大好きでした。1970年代の初め頃の僕はまだスペイン語が良く分かりませんでしたが、白黒テレビのニュースでアンヘル・ニエトをよく見ました。世界の舞台で活躍しているスペイン人はほとんどいなかった暗い時代のスペインで一番輝いていました。


 貧しい生い立ちを隠すわけではなく、外国人記者のインタビューに「家にはシャワーもなかったよ」と笑って答えていました。スペインの貧しい時代は各地からマドリードへ職を求めて上京するのが当たり前でした。彼の両親もその例にもれずサモーラ(Zamora /スペイン中央部の北西、マドリードから250キロ足らず)から食べるために出てきました。子供の頃からガソリンとオイルの臭いが好きで、これに持って生まれたスピード感覚がプラスされてバルセロナでロードレーサーデビューをしました。初めてのレーサーバイクはイタリアのドゥカティ(Ducati)でしたが、スペインのデルビィに乗り換えてからチャンピオンタイトルを獲得しました。


 デルビィはチャリンコ屋のオヤジが製造を始めたバイクです。スペイン語「自転車(BIcicleta)のバリエーション(DERivado)」の頭文字を合わせたのがDERBI(デルビィ)でした。日本ではホンダのスーパーカブが流行ったように、49㏄のデルビィは労働者の脚でした。アンヘル・ニエトと生まれて死んだのもデルビィでした。彼が250㏄や500㏄クラスではタイトルが取れなかったように、デルビィは中型・大型バイクではライバルのモンテッサ(Montesa)、ブルタコ(Bultaco)、オッサ(Ossa)には負けました。とどめはフィアットのチンクエチェント(500㏄の軽自動車)のバルセロナ製造でした。


 そうそう、何故? 「12+1」です。西欧人が不吉とする数字が13です。アンヘル・ニエトも縁起を担ぐ性格で、19771113日のスペイン・ベニドーム(Benidorm)のレースで大事故に遭いました。九死に一生を得ましたが、それ以来以前にもまして13を嫌うようになりました。13回目の世界チャンピオンからは「12+1」と呼ぶようになりました。それと僕がアンヘル・ニエトの交通事故のニュースを聞いて、ダメだなぁ、と感じたのは誰にでもツキがあるからです。オートバイ・レースでは転倒は日常茶飯事で、いつも死と向かい合っています。それでも生き抜いてこれたのは運もあったのでしょう。プロの世界では自分の仕事場ではツキが我が身を守ってくれます。闘牛士が闘牛場ではツキに守られるように、アンヘル・ニエトの強運はサーキットにありました。歩道や一般道路にはありませんでした。

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