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音楽知識ゼロ、しかし、メトロポリタン・オペラを心から愛する人間の、
独断と偏見によるNYオペラ感想日記。

LINDEMANN OPERA WORKSHOP (Fri, Apr 27, 2007)

2007-04-27 | マスター・クラス
Lindemann Young Artist Development Program
In an Opera Workshop with James Levine and members of Metropolitan Opera Orchestra

リンデマン・ヤング・アーティスト・デベロップメント・プログラムとは、
有能な若いアーティストを発掘する目的で1980年にメトの音楽総監督レヴァインによって始められたプログラムです。
ステファニー・ブライス、ドウェイン・クロフト、アンドレア・グルーバー、
ネイサン・ガン、アプリーレ・ミッロ、ドーン・アップショー、
ソンドラ・ラドヴァノフスキといった、今メトをはじめとするアメリカの主要歌劇場で活躍しているアメリカ人アーティストたちが、このプログラムの出身だそうです。
プログラムは最長で三年間、音楽様式、違った国の言葉で歌うスキル、
舞台上での動きや演技などをメトのスタッフや外部の講師の先生にコーチングしてもらえるというシステム。
こういうところから歌手の層を厚くしていくという試みは素晴らしいことだと思います。

今日はそのプログラム生のための、レヴァインによるオペラ・ワークショップが
アッパーイーストサイドにあるディカーポ・オペラの劇場を借りて開催されました。今日はメトのオケ伴奏つきです。(前回はピアノ伴奏。)

まず、レヴァインによるワークショップということで、
往年(現役でもよいのですが)の歌手がコーチングする歌唱が主体のワークショップとは一味違って、
オケと一緒に音楽を作っていく、と言う観点からのアドヴァイスが多くて大変興味深かった。

もちろんレヴァインは歌手でもなければ歌のコーチでもないので、
当然といえば当然なのですが、ほとんど、歌唱のテクニックとか発声についての指摘はなし。
オケの指導も入っていたので、歌手のためのワークショップというよりは、
全体のワークショップという雰囲気でした。
でも、間の取り方やリズムについては、参加者にも、かなり細かいアドヴァイスが出ました。
特に、あるアリアで、オケが全停止、歌手の声だけになる場があったのですが、
つい急いで歌いがちな歌手を制して、
”オケの音が止まったとき感情がもっとも高まっているはずで、
その間こそ大切”と言う指摘には、そうそう!!と同感。
またアンサンブルのプログラムで、つい4人全員の声がわれがちに!と
場面に不釣合いなほど大きくなってしまったのですが、
”もうちょっと4人でかたまって顔を寄せてみて!”という指摘が。
すると、つい自然にひそひそ話をするかのような雰囲気になって、
丁度その場にふさわしい声量に。
これらはほんの氷山の一角ですが、
ほんのちょっとのアドバイスで、がらっと歌の雰囲気が変わるのが本当に面白かったです。

プログラムで歌われた曲は、
ナクソス島のアリアドネから "Schlaft Sie?"
ラ・ボエームからミミのアリア "さようなら、あなたの愛の呼ぶ声に Donde lieta"
ランメルモールのルチアから ルチアのアリア "あたりは沈黙に閉ざされ Regnava nel silenzio"
セビリアの理髪師から フィガロのアリア "町の何でも屋に Largo al factotum"
皇帝ティトの慈悲から セストのアリア "ああこの瞬間だけは Deh, per questo istante solo"、ヴィテッリアのアリア "もはや皇后の座は望めない Non piu di fiori"
シモン・ボッカネグラから アメーリアのアリア "暁に星と海は微笑み Come in quest'ora bruna"
ばらの騎士から 三重唱と二重唱”私が誓ったことは、彼を正しいやり方で愛することでした Marie Therese... 夢なのかしら Ist ein Traum"

参加者の人数がわりと少ないために、重唱などでは役が持ち回りになっていて、
はからず合わない役、あまり練習したことのない役がまわってきたせいか、
重唱ではいまいちぱっとしなかった人が、突然ぴんのアリアでは
水を得た魚のように素晴らしい歌を繰り出したり、と、
いかに自分に合った役選びが大切か、ということ、
またこのようなブログを書いている身では、一回歌唱を聴いたきりで判断を下すことの危険さ、など、
数々の発見があり、大変に勉強になりました。

まだブレークする前の若手といえ、かなりレベルが高く、
”どうですか?こんなにこのプログラム、成果が出てます!”と、
ほとんどメトのパトロンで埋められた客席に向かって発表する様子は、
なんだか株主総会をも思わせました。

それぞれの歌手とも、それぞれ大変良いところがあって甲乙つけがたいのですが、
私がマークしたのは、音楽性の豊かなSasha Cooke(声のテクスチャーは素晴らしいのですが、ほっそりした体型のせいか、
少しボリュームが足りないのが残念。しかし、それを補ってあまりある音楽性が強み!)と、
Wendy Bryn Harmer(まだ荒削りなところはありますが、絹のようなきれいな声質にボリュームも十分。しかも、高音から低音まで、声質に切れ目がなく、
メゾも歌えそうな低音の美しさ。)の二人。
これからどんどん活躍の場を増やしていってほしい!!

やはり、各人のアリアでは、それぞれの人が私の技を見よ!と言う感じで、
丁々発止の力比べで、それはそれで楽しかったのですが、
最後のばらの騎士がとてもよかった。
他のプログラムは全部、歌手の歌を聴く、という雰囲気でしたが、
唯一このばらの騎士で、オペラの舞台が目の前に広がるのを感じました。

株主の期待に沿って、皆さんどんどん活躍されることを祈ります!!



Jennifer Black (Soprano)
Sasha Cooke (Mezzo Soprano)
Wendy Bryn Harmer (Soprano)
Courtney Ann Mills (Soprano)
John Michael Moore (Baritone)
Lisette Oropesa (Soprano)
Dicapo Opera Theatre open seat
***リンデマン・オペラ・ワークショップ Lindemann Opera Workshop***

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