そもそも教育改革が必要かどうかも疑問だが,改革好きな人たちは,よく「これからの教育はこうあるべきだ」というような論議を好まれるようである。そのとき,決まって,今までの教育を全面的に否定するようなレトリックを好まれるようである。「これからの教育は,Aでなく,Bでなければならない」といった具合にレトリックを展開されるのである。この種の言説は,ほぼ誤りであると断じてよい。なぜならば,検証可能性がなく,科学的でなく,論理的でないからである。つまり,知的でないということである。常識的な知性をもつものならば,この言説が危ういということはすぐに分かる。AにはAのよさがあり,BにはBの,Aにはないよさがあるであろう。それと同時に,AにはAの欠点があり,BにはBの,Aにはない欠点があると考えるのが妥当であろう。そればかりではなく,よく見ていると,意図的にAを貶めようとするかのような言説が目立つのである。例えば,近頃はやりのOECDのキーコンピテンシーの説明などで用いられる「単なる知識や技術だけではなく」などという言い方である。よく考えてみてほしい。「単なる知識」や「単なる技術」などというものがどこにあるのであろうか。「知識」や「技術」は,それがどんなものであっても,「知識」や「技術」と呼ぶに値するものである限り,意味のあるものである。それに「単なる」などという形容をつけるということからして,知的な謙虚さを欠いているのである。文部科学省や中央教育審議会自らがこのような言説を何とも思わず用いるようになっていることが,実は,我が国の教育を危うくさせているのである。小学校における外国語教育にせよ,中学校における武道必修化にせよ,キャリア教育にせよ,どうしてもやらなければやらないほど大切なものではなかろう。やってよいこともあろうが,やらないときのほうがよかったことも多々生じるような類のものである。こんなことを言うと,それらによって,儲かったり,立場がよくなる人々からは猛反発を受けるであろうが,現場にいる方々の多くは,同意してくださるのではないか。おおもとをたどれば,「生きる力」などと言いだしたころから,おかしくなりだしたのではないか。知育・徳育・体育と言っていた時代のほうが実質的であったという主張もまた可能なのである。ともあれ,バランスを欠いた,「AではなくB」の議論にはもう飽き飽きしているのである。
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- 教師生活25年め。 教育改革の名のもとで学校教育が根っこのない浮き草のようになっていくのを悲しく思っている一教師です。
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