今日は、この街にいます。

昨日の街は、懐かしい記憶になった。そして・・

747 北の丸(東京都)憧れのトラモンティが帰ってきた

2016-12-12 08:19:43 | 東京(区部)
トラモンティが帰ってきた。私が敬愛するイタリアの陶芸家、グェッリーノ・トラモンティの、紛失した展覧会図録が手元に戻ってきたのだ。失くしたのは5年前、見つけてくれたのは妻。彼女は、図録紛失の顛末は忘れていたけれど、吉祥寺の古書店でそれを見かけるや、ひと目で私好みのティストだと見抜き、手に入れてくれたのだ。私は小躍りし、いったいこれは何事かと考えた。一言で言えば「私は愛されている」ということだろう。



もちろん紛失した図録そのものではないだろうが、まさに「それ」なのだ。以下に私の落胆を綴った当時のブログを再掲載する。2011年11月8日のことだ。

     *  *  *  *  *

久しぶりに九段に出かけ、北の丸公園に建つ東京国立近代美術館の工芸館で《グェッリーノ・トラモンティ》の陶磁器や絵画を堪能した。イタリアの色の魔術師・トラモンティ(1915-1992)は、猫や魚、野菜、海藻、瓶といった身近なモチーフを、陶板に分厚く焼き付けた釉薬やガラスを使ってデザイン化している。油画も絵の具に砂を混ぜているそうで独特のざらつき感がある。



トラモンティはイタリア・マヨリカ焼きの産地であるファエンツァで生まれ、陶芸学校で作陶を学んだが、彫刻や絵画にもジャンルを広げた。ファエンツァはイタリア中部の小さな街ながら、その名がフランス語の「陶器」の基になったというほどの焼物の街であるらしい。



久しぶりに全身で堪能できた展覧会だった。旧近衛師団司令部であった工芸館を、隅から隅まで3巡した。日本初の本格的回顧展だ。参考展示してあったルーシー・リーやハンス・コパーの作品より、トラモンティのテラコッタを含めた作品の方が日本の陶磁器に通じ、親しみが持てた。こんな造形を生み出せる才能が羨ましい。



この日私は、痛恨の失策を犯した。会場で購入した図録を、どこかで紛失してしまったのだ。ついでに立ち寄った本館のロッカーに置き忘れたのか、皇居東御苑のベンチに置き忘れたか、次に向かった六本木のサントリー美術館(この日は休館日で、これも失策だった)への途中の地下鉄の車内か、昼食を摂った店か‥。帰りの地下鉄ホームで、ようやく「ない」ことに気が付いた。



諦めきれず、道順を遡って問い合わせたのだが発見できなかった。家でじっくり鑑賞し直そうという目論見がはずれた悔しさと、これまではミスに縁遠い、しっかり者の私がこんな失策をしてしまったショックで、落ち込んだ。暮れにはローマに行く予定がある。こうなったからには、彼の地でトラモンティを探すことにしよう。

     *  *  *  *  *

その年のイタリア旅行はローマとフィレンツェだったが、2013年の冬にはファエンツァまで足を延ばし、彼の地の国際陶芸美術館でトラモンティに再会したのだった。そのころには私も陶芸の真似事を始めており、トラモンティはいっそう憧れの存在になっていた。

(イタリア・ファエンツァの国際陶芸美術館)

陶芸は私の場合も、まずは器や皿など「用の美」作りから始めた。だがそこを卒業できたわけでもないのに、3年ほどして「用の美」では物足りなくなってしまった。最近は土をカンバスに見立てて絵を描くように、あるいは彫像を作る気持ちで立体に取り組むといった「無用の美」へと向かっている。その行く手には、トラモンティが刺激的な作品を並べ、聳え立っている。(2016.11.26)

(国際陶芸美術館に展示されているトラモンティ)








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