オペラ公演を観るのが目的の奈良旅行だが、「どうせ行くんなら散策し、地元の美味いものを食べる」がうちの旅行スタイル。振り返れば奈良に行くのは中学の修学旅行依頼の50年ぶりだ。京都は何度も行ってるのにだ。
オペラ公演は平城宮跡の大極殿前で開催されるので宿はその地に最も近い大和西大寺に取った。会場まで歩いて10分だから、おそらくオペラを観に行った観客の中で寝床がもっとも近い客じゃなかったろうか。雨で公演が中止になり、逃げ帰ることになったのだが、あの時ばかりは「ここに宿を取ってよかった」と思ったね。
奈良を散策するにあたり、宿を中心にどこにどのお寺、文化財があるかを調べた。知っているようで全く土地勘のない「有名な古都」だということに気づいて、驚いた。
調べてみると宿はなかなかいい位置にある。東は平城宮に面してる。さらに東に電車で2駅行くと奈良の町で興福寺、東大寺がある。南に2駅行くと、薬師寺、唐招提寺がある。いいじゃないですか、これだけあれば今回は十分楽しめる。
21日 京都から奈良に近鉄で南下、西大寺で下りず、真っすぐ近鉄奈良駅まで。興福寺が目的。今ちょうど五重塔と三重塔が特別公開されてるのと国宝館が目的。
荷物をロッカーにいれて、ぶらぶら開始。猿沢池に出て、そのほとりにある「衣掛茶屋」で軽い昼食。
お寺の金堂、講堂に仏様が祀られてるのは当然のこととして理解してたが、五重塔にも仏像が安置されてて、拝む対象だったとは勉強した。国宝館ではやはり「阿修羅像」が圧巻かな。展示されてる仏像、奈良のお寺だから奈良時代作のものかというとそうでないことも勉強した。平安時代の作、鎌倉時代の作 その時代その時代に作った仏像を寺に寄進してきた、あるいは何かを願って奉納したということが代々行われてきたんだろう。ただ奈良、平安、鎌倉と進む中で間違いなく変化してるのは見て取れる。古いほど素直、素朴、時代が進むとはで、芸術的、人の欲が感じられるように見えた。僕は古い方が好きかな。建築物としてのお寺も奈良時代のものが素朴でバランスがよくて優しい形だと思えたが。
時間があったのでぶらぶら東大寺まで足をのばした。大仏も見たいとは思ってなかったが、「せっかくだから」で中まで入ってきた。でかくて、りっぱな建築物ですね。バランスもいい。世界に誇れる木造建築だとあらためて見直した。
あいにくの小雨、そんな中あの鹿の群れには閉口した。外人、特に中国系が多いのにも閉口、修学旅行でいっぱいにもうんざりした。静けさがない。
夕方猿沢池まで戻って来て、「ならまち」の「平宗」で「柿の葉ずし」の夕食をいただく。なかなか美味。量も老人には優しい。
22日 雨は降ってないが、曇天。いつ降り出すかって空。ともかくきょう夕方からは降らんでもらいた。
朝食前に平城宮跡を散策。オペラ会場の仮設をした調べに行く。
これを見て期待を膨らませた。
それにしても平城宮跡とはなんと広い野っぱらなのか。そこに大極殿と朱雀門が7,800m離れてポツーンと建ってる。そこらじゅうに「宮内庁管理」であることの掲示があったが、この広場をどうしようとしてるんだろう。昔の平城宮を再現しようとしてるのだろうか。今のペースじゃ作ったものが傷んでいくことへの対応で手いっぱいになり、次の建物の新築になどいけないんじゃないかと思う。「第二のもんじゅ」になりかねないのでは。
今日は3時頃旅館に帰って、オペラ鑑賞スタイルに着替えて出かければいい。それまでは薬師寺、唐招提寺、西大寺と散策してこよう。まず電車で2駅。「西の京」駅を下りればそこは薬師寺の入り口。50年前の修学旅行でのかすかな思い出にここの「東塔」は残ってる。「美しい」と思ったのかね? その東塔が今は修理中ですっぽりと覆いがかけられてた。ちょっとがっかり。そのかわり、50年前にはなかった西塔が再建されてた。でも薬師寺と言ったら「東塔」でしょうでテンションが上がらんのがおもしろい。金堂の薬師三尊像はさすがに圧巻。この前でちょうど赤ちゃんの100日法要をやってた。如来さんの横でお坊さんの美声をしばし堪能。いい声だね。オペラに通ずるね。
次に北隣の「玄奘三蔵院伽藍」を観に行った。なぜここに「玄奘三蔵」かのうさんくさい歴史を説明され、平山郁夫さんが描いた壁画を見せてもらった。
そこからさらに北に歩き、唐招提寺へ。
理由は定かではないのだが、以前から1度ゆっくり訪ねたいと気になってたお寺。金堂の建物としての美しさが未了してるのかもしれない。ほんとに落ち着てるお寺ですね。鑑真和上のお墓もあるんですね。拝んできました。レプリカなのだが和上の座像も拝見。
そこから初めて見る前方後円墳 「垂仁天皇陵」を見て西大寺まで歩く。奈良時代を満喫できた散策になったかな。
とりあえずお店に入って軽い昼食とお茶。オペラ会場に落ち込むパンと飲み物を買って宿に3時に戻る。風呂で汗を流し、しばらくゆっくりした後、会場へ。ここから先は「オペラ編」にて。結局降雨で中止、宿に逃げ帰ってきた。
23日 昨夜の主目的のオペラがなんとも中途半端。でもこんなこともある。しょうがない。今日は今日で散策しよう。
西大寺駅から北西方向に「秋篠寺」がある。ここには有名な「芸の守護神」である伎芸天の立像がある。僕は知らなかった。かみさんは前から写真では見てたようで、見たいとの希望があったようだ。今日は歩きはやめた。疲れと昨夕のショックからか。
いかにも奈良時代のを思わせるひっそりとたたずむお寺です。
素朴な仏像が10体ほどうす暗い中に安置されてました。さすがでした、そんな中でも伎芸天立像は光がありましたね。頭部が奈良時代の本来の物で首から下は鎌倉時代に作られたものらしいです。こういう仏像が多いこともしりました。
総じて、奈良は、奈良時代はいいです。好きです。素朴なのがいい。京都の(お公家さんの)きらびやかな、派手な、力を見せびらかすような美よりしっとりしてるな。また行ってもいいな。