prisoner's BLOG

私、小暮宏が見た映画のノートが主です。
時折、創作も載ります。

「四畳半神話大系」

2017年11月22日 | アニメ
劇場で「夜は短し恋せよ乙女」を見て面白かったので、TSUTAYAにできていた同じ湯浅政明監督のDVDの棚からこの旧作テレビシリーズを借りて見た。

で、まず「夜は…」と同じキャラクターが出てきたのにびっくり。のんきな話で、原作が同じ人(森見登美彦)と知らなかったのです。
一種のシリーズものと考えていいのだろうか、全部同じではなく一部だぶっているのが実はこのシリーズの内部の構造ともつながっているところ。

非常に奇妙な気分になるのはこのテレビアニメの中で「夜は短し恋せよ乙女」の原作本が紹介されるシーンがあること。アニメ化の前に出版されていたのだろうけれど、何やら因果関係がねじれた、クラインの壺にはまったような感じ。

舞台設定も同じで、見ていて明らかに京都大学周辺だなとあまり京都について知らない人間でもわかるので調べてみたら案の定、原作者は京大の農学部出身。すごくデフォルメしているようで、設定は周到綿密です。

30分枠×全11話なのだが、連続ものとも一話完結ものとも違う独特の構成。
第一話で主人公が大学一回生から二回生にかけて映研で青春をムダにするエピソードが描かれるので、第二話ではその続きになると思いきややはり一回生から二回生にかけてで青春をムダにするエピソードになる。第三話以降も同じ調子で時間がループしそのたびに違う部活その他でキャンパスライフを謳歌しようとしてことごとく惨憺たる結果になるのが繰り返される。

それを仕掛ける半魚人ともぬらりひょんともさまざまに形容される面妖なキャラクターの名前が小津、というのだから人を食っている。

後半に入って、雪隠詰めになった状態で三人の女性のうち誰を選ぶのかというところから始まって三通りの展開を見せる「羅生門」みたいなエピソード群を経て、「私」が平行世界式にえんえんと連なっている(セリフでも暗示しているが明らかに筒井康隆の「平行世界」が元)四畳半を渡り歩く一話まるまる一人のモノローグで通す(だからエンドタイトルで浅沼晋太郎一人しかクレジットされない)大胆な作りのクライマックスを迎え、小津と「私」の立場が逆転するエピローグに至る。

毎回のメインタイトルが実はこの平行世界を渡り歩くクライマックスをすでに暗示していて、最終話だけメインタイトルのデザインがエンドタイトルのアレンジになり、エンドタイトルがいつものメインタイトルになるという具合に、シリーズ全体のデザインがまことに大胆にして緻密。

大胆な画のデフォルメの仕方、色彩の使い方の魅力を挙げていけばきりがない。





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