prisoner's BLOG

私、小暮宏が見た映画のノートが主です。
時折、創作も載ります。

「英雄 HERO」

2003年08月30日 | 映画
始皇帝が暗殺されなかったことは初めから割れているので、どう暗殺が失敗するのかが興味になる。その理屈が反権力ではなく、権力の効用を認めたものになっているのが、案外新鮮。
続けて見たせいもあるが、「踊る大捜査線2」がエリートの存在意義を認めているのとつながって見えた。チェン・カイコーの「始皇帝暗殺」がテロリストの美学に向かったのと逆をいったよう。

一応「無名」の回想形式だが、当人がその場にいなかった場面まで入っている。あまりバランス良くないが、強いて解釈すれば、他の刺客たちの集団の意思が「無名」一人に乗り移ってやってきたということだろう。回想の数々の鮮やかなカラーが、現在の宮廷では黒にまとまる、というカラー設計。同じワダエミ衣装デザインの「乱」で、子供たちが三原色で、父王が白にまとまっていくのと逆。

大群集シーンが圧倒的。共産国の閲兵式みたいでもあるが。
剣劇シーンは勝ち負けがあまり意味を持たないので、舞踊的というより舞踊そのもの。しかし、武侠ものというのは、体技以上にやれワイヤーワークだ、CGだと装飾を多くしたから魅力的になるというものでもない。体技そのものが見えにくくなる。

ラストで皇帝に服従するはずの軍隊が、皇帝に“(刺客を)殺せ、殺せ”と迫るあたりは、何かギリシャ悲劇のコロスのよう。
(☆☆☆★)


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