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遅すぎた決断が招いた米中対立

2015年10月28日 | 中国関連
米「航行の自由」譲らず 人工島12カイリ内哨戒
対応後手、問題深刻に
2015/10/28 3:30 日経朝刊

 【ワシントン=吉野直也】米海軍が27日、中国が「領海」と主張する南シナ海の人工島12カイリ(約22キロ)以内の海域で哨戒活動に入ったことで、米中の対立は新たな段階を迎えた。どちらも譲歩する気配がなく、緊張は高まる。オバマ米大統領の遅すぎた決断が中国の増長を招き、周辺海域を不安定にした面は否めない。


米海軍のイージス駆逐艦「ラッセン」=ロイター






大統領「待った」
 27日に南沙(英語名スプラトリー)諸島のスービ(中国名・渚碧)礁などを航行したのは、米海軍横須賀基地配備のイージス駆逐艦「ラッセン」だ。通常の駆逐艦より戦闘能力が高い。

 米国防総省や米軍は5月に、艦船と航空機を人工島の12カイリ以内に派遣する方針を中国に通告していた。「航行の自由」を掲げ、領海とは認めない立場を鮮明にするのが狙いだった。
 これに待ったを掛けたのがオバマ氏だ。アフリカを専門とする側近のライス米大統領補佐官らの進言を聞き入れた。
 その間、中国は人工島に3本の滑走路を建設。長さは、ほとんどの軍用機が着陸できる約3千メートル級だ。複数の港湾施設も確認されており、中国が軍事施設として使うのは明らかだった。8月の米国防総省の報告書では、南沙諸島の埋め立て面積が今年6月時点で2900エーカー(約12平方キロメートル)に急拡大したと推定した。
 オバマ氏の傍観が問題を広げた。同盟国や友好国には「アジア重視は看板倒れ」との声も漏れ始めた。米国務省と国防総省は9月下旬の習近平国家主席との会談前の艦船派遣を主張した。それでもオバマ氏は了承せず、習主席との会談での説得に賭けた。しかし習主席にあっさり断られ、ようやく派遣を認めた。
 米共和党のマケイン上院軍事委員長は27日、中国が造る人工島12カイリ以内への駆逐艦派遣を評価する半面、オバマ氏の決断を「遅きに失した」と非難する声明を発表した。
 なぜ27日の派遣だったのか。一つはメンツを重んじる中国を揺さぶるためだ。中国共産党は29日まで第18期中央委員会第5回全体会議(5中全会)を開いている。政治日程にぶつけることで対決姿勢を打ち出せると読んだ。オバマ氏への不満がくすぶる米軍の留飲を下げる効果も計算した。
 もう一つは同盟国・友好国の不安を和らげる目的だ。11月上旬には日中韓首脳会談やアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議などを控える。艦船派遣に言及しながらの中国への無策は、オバマ氏の国際的な信用を疑わせかねなかった。
 同盟国や友好国は相次いで支持を表明している。菅義偉官房長官は27日、「一方的な現状変更は国際社会の共通の懸念事項だ」と中国を批判した。一方、韓国外務省の報道官は直接的な評価を避けた。経済を中心に関係を深める中国に配慮したとみられる。
対話の余地残す
 今後、米中の全面的な軍事衝突の予想は少ない。米中の相互依存が深まるなかで軍事衝突は両国だけでなく、世界経済に悪影響を与える。中国はそれを逆手に瀬戸際戦術を繰り出すが、経済の減速に苦しむいま、事を構えたくないのはむしろ中国のほうだ。
 米側も中国の本音は見透かしている。米軍はフィリピンやベトナムに近い南沙諸島の岩礁周辺への軍艦派遣も検討中。「特定国を標的にしていない」という政府の建前と辻つまを合わせ、対話による解決の余地も残す。
 国際通貨基金(IMF)が11月中にも特別引き出し権(SDR)と呼ぶ準備通貨に中国の通貨・人民元の採用を決める見通しとなったのも、同様の文脈だ。南シナ海など安保での対立を前提に経済では中国が望む方向にIMFのかじを切り、米中関係を決定的に悪くはしないとの仕掛けだ。
 ただ、南シナ海の問題が深刻なのは、両国の政治指導者らが描くパワーゲームの構図を前線で対峙する軍隊は理解していないという点だ。瞬時の判断が生死を分ける前線においては反射神経が最も重視される。そこに政治を動かす「貸し」「借り」の原理は関係ない。偶発的な衝突の危険が増したのは確かだ。
 米中両国がこの問題の着地点を見据えたうえで米側が米駆逐艦を派遣し、中国が反発しているふうはない。米中のシナリオなきパワーゲームは、同盟国や友好国を巻き込みながら新たな幕を開けた。世界各国は米中関係の推移にしばらく目を凝らすことになる。

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