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オバマ氏が広島に来る日 2015/5/17 日経朝刊

2015年05月17日 | 日記
オバマ氏が広島に来る日
2015/5/17 3:30 日経朝刊

 16年前になる。4月29日の朝、沖縄県庁の秘書課の電話が鳴った。

 「あ~、もしもし、オブチですが、知事さんはおられますか」
 受けた職員は動転した。秘書官とかを介さず、いきなり小渕恵三首相本人の声だったからだ。これが翌年7月までよくも悪くも沖縄県を振り回したサミット狂騒曲の始まりだった。
 日本での主要国首脳会議(サミット)はそれまで3回いずれも東京だった。小渕首相は初の地方開催に沖縄を選んだ。4年前に起きた米兵による小学生女児の暴行事件をきっかけに県民の反米感情が高まっていた中での決断だった。
 「沖縄にしたら米大統領は来ないかもしれない」。外務省は首相官邸にそう警告していたが、クリントン大統領は意外にも「よいサミットになると確信する」と歓迎した。
 那覇空港に着いたクリントン氏は沖縄戦のすべての犠牲者の名を刻印した「平和の礎(いしじ)」に直行し、琉歌にある「戦世ん済まち 命どぅ宝(戦争の時代は終わる 命が大事だ)」とのくだりを引いて演説した。以降、米大統領の訪沖はない。サミット会場だった万国津梁館前に小渕首相の銅像ができた。
 そのサミットの順番が来年、また日本に来る。候補地は「震災からの復興を世界に見せたい」と意気込む仙台など8カ所。安倍晋三首相は訪米中の記者懇談で「悩んでいる」と話した。
 決めた場合に最も話題を呼ぶのは広島だろう。「核なき世界」を提唱したオバマ米大統領が被爆地で演説すれば、世界の反核運動にとって大きな一歩となる。
 ただ、被爆者側にはさまざまな声がある。多いのは「謝罪のためでなければ来るな」との意見だ。
 オバマ氏は原爆投下を謝罪しないだろう。側近のブレナン米中央情報局(CIA)長官がまとめた安保政策、通称ブレナン・ドクトリンを読むとわかる。
 核兵器による攻撃抑止力は「米国に手を出すと反撃で自国が壊滅する」と思わせることで生まれる。ところが国際テロ組織には守るべき領土はないので、テロ抑止効果はない。テロリストに核兵器を奪われないように守る手間を考えれば廃棄した方が安上がりだ、というものだ。悪事だからやめるのではない。
 ロシアが核削減合意を破棄し、中国が軍拡姿勢を強めるなど古典的な国家対立が復活しつつある昨今、オバマ氏は「核なき世界」を口にしなくなった。
 「まず被爆地の土を踏んでもらうことが大事だ」。先日、秋葉忠利前広島市長と話す機会があったので聞くとこんな答えだった。米国に長く住み、原爆投下を正しかったと思う米国民が多数であることはよく知っている。しかし、米国人の知り合いを広島に招くと多くが涙を流した。謝罪でなくとも、サミットのついでだろうと来てもらえば必ず何かを生むとの考えだ。
 現職市長だった5年前、ホワイトハウスでオバマ氏に「広島に来ていただきたい」とじかに要請した。そのときの「ぜひ行きたい(I’d love to)」との答えが耳に残っているそうだ。
 共同通信でワシントン支局長などを務めた松尾文夫氏は長年、米大統領が広島で、日本の首相がハワイの真珠湾で献花をするよう両政府に働きかけてきた。日米同盟がときに揺らぐのは両国が真の和解をなし遂げていないからだという。
 「世界中の政治指導者が広島と長崎を訪問し、被爆の実相を知っていただきたい」。安倍首相は先月、国会でこんな答弁をした。本当にそう思うのであれば踏み切るのはいまである。

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