鴨が行く ver.BLOG

鴨と師匠(ベルツノガエル似)と志ん鳥のヲタク全開趣味まみれな日々

巨匠のエッセンス

2012年01月10日 21時03分05秒 | ゲーム・コミック・SF
2012年初のSF読了。
昨年のご逝去以来、敬意を持って読みまくっております巨匠・小松左京の短編集です。

結晶星団/小松左京(ハルキ文庫)

ハルキ文庫からはたくさんの小松左京短編集が発刊されていますが、この「結晶星団」は数ある小松短編SFの中でも宇宙を舞台にしたものを集めた作品集。70~80年代のパワー漲っていた頃の作品ばかりで、良く言えば瑞々しい、悪く言えば青臭いとも言える独特の世界観を包含した小松ワールドが繰り広げられています。この独特の「若さ」って、良くも悪くも初期の小松作品最大の特徴ですよね。
何分にも初期の作品が中心なので、小説として熟れていないものも正直ありますし、飛び道具系の反則オチもあったりしますヽ( ´ー`)ノ「飢えた宇宙」のオチは反則でしょヽ( ´ー`)ノ。表題作「結晶星団」も、”理性や科学では割り切れない原初的なパワー”をSFとして描くことに挑戦したアグレッシブなストーリーで、鴨的には「ゴルディアスの結び目」と同様のケイオティックな凄みを感じましたね。

何よりも印象的なのは、「結晶星団」「神への長い道」「氷の下の暗い顔」等の作品に共通してみられる、滅びゆく文明を描く筆致の美しさ。宵闇の中で忘れられた恋歌を奏でる物静かな原住民族・・・幾何学的に設計された未来都市の道の果てに屹立する、宇宙への知を集積した壮麗な神殿・・・地殻変動が末期を迎えなだらかな平原だけが荒漠と広がる惑星の地上に唯一残った、天を衝く巨木・・・そんな滅びゆく文明に限りない敬意と憧憬を抱きつつ、成すすべもなく立ち尽くすだけの地球人類。とても静かで、そして温かみのある、不思議と心に残る「滅びの風景」が目の前に広がります。
「滅び」を描くSF作家と言えば鴨的にはJ・G・バラードですが、バラードの筆致はもっと冷たくエッジが利いています。小松左京の「滅び」の風景は、バラードほどエッジィではないしSFとして詰めが甘い部分もあるけれど、それを補って余りある人間性を感じます。やっぱり、東洋のSFだから、なんでしょうかねぇ。SFから見る比較文化論って、面白いかもしれない(-_☆きらーん
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