鴨が行く ver.BLOG

鴨と師匠(ベルツノガエル似)と志ん鳥のヲタク全開趣味まみれな日々

とんでもないけど面白い話

2010年01月30日 17時04分12秒 | ゲーム・コミック・SF
今月2冊目のSF読破です(-_☆
昨年「禅銃」を読んで気に入ったので、再度バリントン・J・ベイリーに挑戦してみましたよ。長編なのにスゴい勢いで読んでしまいました。それでいいのさだってワイドスクリーン・バロックだもん!(笑)

時間衝突/バリントン・J・ベイリー、大森望訳(創元SF文庫)


謎の異星人との戦闘状態に突入している遠未来の地球。異星人が地球に残した遺跡を調査している考古学者のロンド・ヘシュケは、300年前に撮影された遺跡の写真が現在の遺跡より遥かに古びていることに気づく。まさか、遺跡は年を経るごとに新しくなっているというのか?折しも異星人の時間旅行機が捕獲され、ヘシュケは時間旅行機を使った極秘任務を命ぜられるが・・・

わはははは、すげー!面白い!
何がスゴいって、いきなりブルース・スターリングが序文を寄せてるってところからブッ飛んだんですがヽ( ´ー`)ノそんなのはまだ序の口で、ベイリーなのにちゃんとストーリーがまとまっているところに一番感動しました(笑)いや、だって「禅銃」がヒドかったんだもん(^_^;
さてこのSF、ジャンル的には「時間SF」なわけでして、現代の最新理論物理学においてもその本質が解き明かされていない「時間」をネタに古今東西の大御所SF作家たちが腕をふるってきたジャンルでもあります。時間とは何か?空間とは何か?そんな哲学的ともいえる問いに、奇才・ベイリーが「こんなこと考えちゃったんですけど~」と答えたのがこの作品。ストーリーはタイトルそのもの、時間衝突。これが比喩でもなんでもなくて、何と異なる時間線を持つ世界が正面衝突しちゃうという実にそのままな話なんですねー。・・・どこからそういう発想が出てくるんだろうな、この人は・・・(^_^;
そんなわけで、作中には奇妙奇天烈な時間理論が登場し、これが重要なファクターとなって物語が進んでいきますが、この理論が理解できなくてもハッキリ言って読み進めるのに何ら支障はありません。つーか、理解できる方がおかしい(笑)時間が衝突する瞬間の描写も出てくるんですが、理論と全然噛み合ってないし。この作品の楽しみ方は、そんなトンデモ理論に気持ちよく振り回されつつ、それをネタに展開される一大スペクタクル(ドタバタ劇といった方が正確かもしれないヽ( ´ー`)ノ)で手に汗握る、といったところではないかと思います。絢爛豪華で何でもありのベイリー節は本作でも健在。

それに、「禅銃」でもそうでしたが、この人はユニークな社会構造を描かせたら超一流ですね。とんでもないんだけど妙に説得力があるベイリー流未来社会は、実は人間の現実の歴史を極端にカリカチュアライズして未来に置き換えたもの、と言ってもいいでしょう。本作において未来の地球を支配している軍事政権「タイタン」は、誰がどう見ても某第三帝国以外の何物でもないですしヽ( ´ー`)ノ突き抜けた共産主義的コロニー国家を維持しているのが中国人の末裔という設定は本気なのかシャレなのかヽ( ´ー`)ノこの二つが絡んだら大変なことになるんじゃないの、と思ったら何だかよくわからん自己チューな「超知性」が登場して無理矢理話を纏めちゃう、というヽ( ´ー`)ノよくこんなヤバいネタ使えるよなぁ。と妙なところで感心しつつも、決してハッピーエンドとは言い切れないほろ苦い結末を読むと、ベイリーはちゃんと「わかって書いてる」ということがしみじみ理解できます。現実の歴史の汚点をもネタの一つに昇華してしまうベイリーの力技、恐るべし。

しかも、巻末の解説において、ベイリーのトンデモ理論は最新理論物理学の世界ではあながちトンデモとは言い切れないらしい、ということが明かされ、最後の最後で鮮やかに背負い投げを決められた感じです。大森望氏のあとがきも超名文。ワイドスクリーン・バロックへの愛が溢れています。序文から解説まで丸ごと一冊、無駄なところが全くありません!(笑)やっぱりベイリー面白い!本気で「カエアンの聖衣」も探します、ハイ。
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