鴨が行く ver.BLOG

鴨と師匠(ベルツノガエル似)と志ん鳥のヲタク全開趣味まみれな日々

最近読んだSF 2012/10/7

2012年10月07日 17時25分48秒 | ゲーム・コミック・SF
秋の夜長、という言葉が相応しい季節に、ようやくなりましたねー。読書もサクサク進みます(って、読んでるのは相変わらず朝晩の電車の中ですがヽ( ´ー`)ノ)。というわけで、前回レビューから1ヶ月足らずでの読了SFレビュー、2冊まとめてどうぞ。

地球の長い午後/ブライアン・W・オールディス、伊藤典夫訳(ハヤカワ文庫SF)

遥かな未来、赤色巨星と化した太陽を周回する地球はとうに自転を止め、永遠に片面を太陽に向けて回り続けていた。陽光が当たる側は常に午後のような赤色巨星の光と高湿度の環境の下、異様に進化した植物が地上を支配している。人類文明は遥か昔に崩壊し、いまや知能すら退化してしまった人類は植物に捕食される数少ない動物のひとつとして、細々と生き延びている。知能が退化したためにそんな生き方にも疑問を持たない彼らだったが、ある日変わり者の少年・グレンが、とある事件をきっかけに仲間とはぐれ、植物の王国と化した地球を巡る冒険の旅に出る。グレンが見た地球の姿とは、そして彼の旅の結末は?

原題は「Hothouse(温室)」。「地球の長い午後」とは巧い意訳だなぁと前から思ってたんですが、米国版原題の直訳だったのねヽ( ´ー`)ノ
日本ではとても人気のある作品ですが、でも、同時にとても読む人を選ぶ作品でもあります。選ばれる基準は、「世界観に浸り切って一冊読み通せる忍耐力があるか否か」。
この作品で描かれる世界観は本当に圧倒的かつワン・アンド・オンリーで、SFというより一昔前の幻想小説(ステープルドンとかね)とでも言った方が相応しいクラシカルな美学が感じられます。想像力の極北とも言うべきこのユニークさは、一度味わっておいて損はないと思います。が、SFを読む上でそれ以上の要素を作品に求める人には、この作品は全く不向きです。この作品には、魅力的な登場人物もスリリングな冒険も美しい科学考証もありません。登場人物は知能が低いが故にほとんど感情移入できませんし、ごく僅かに登場する知能の高い生き物は社会を形成するだけの個体数がいないために独りよがりの傲慢な暴君と化し、やっぱり感情移入できません。主人公のグレンは一応冒険めいた旅を続けますが、彼が主体的に問題を解決することはほとんどなく、周囲の環境に流されているうちに何となく冒険っぽくなっているだけで、手に汗握るハラハラドキドキのエンターテインメントを期待して読むとかなりがっかりします。

最後の最後に、人類を含めた地球生物の存在意義と今後の進化を示唆するイメージが挿入されて、物語は幕を閉じます。ここで「壮大なSFだ!」とまとめることも可能ですが、鴨にはどうもそれまでのストーリー展開のメリハリのなさの方が印象に残ってしまい、取って付けたようなラストシーンに思えて仕方ありませんでした。ただし、SFは本当にいろんなスタンスでの物語展開が可能な文学ジャンルだと鴨は思っていますので、「世界観一発!」なこの作品も、SFとして当然アリだと評価します。

無常の月/ラリイ・ニーヴン、小隅黎他訳(ハヤカワ文庫SF:絶版)

最近「リングワールド」以外ではトンと名前を聞かないニーヴンの絶版短編集。ブック○フの105円コーナーでゲットしました(-_☆
収録されている作品は「オーソドックスSF系」「ファンタジー系」「論文系」の3種類に大別されます。「オーソドックスSF系」は、さすがに若干の古さは否めませんが、短編SFの醍醐味であるアイディア・ストーリーの楽しさを満喫できる秀作揃いです。表題作「無常の月」は、古典的な終末ものではありますが、最後のどんでん返しが小気味良い快作。他の作品も、現代でも通用するキレのあるアイディア満載で読み応え十分。「ファンタジー系」も、ファンタジーの体裁を取りつつ実はSFな作品がほとんどです。
侮れないのが「論文系」。ここまでバカバカしいSFを読んだのは久しぶりのような気がヽ( ´ー`)ノ最近、この手の「論理と考察に裏打ちされたバカバカしさ」を味わえるSFって、なかなかないですよね。最近のSF作家はマジメ過ぎるのか?斬新なアイディアはSFの命。この「論文系」を楽しめるか否かで、SF者の素質が測れるような気がします、ハイ。

さて、次はあのシリーズを〆るか・・・(.. )φ
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