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「キネマの神様」 原田マハ 文春文庫

2015-05-14 | 読書



自他(主に家族)ともに許す子供時代からの映画好きなので、この本ははずせないと思っていた。題名が嬉しい。出てくる名画がいい。
まず「カッコーの巣の上で」「ニューシネマパラダイス」「ライフイズビューティフル」抵抗がないラインナップから。
だが単に映画礼賛の小説ではない。そこのは映画好きの魂、映画を愛する人たちの熱い思いが溢れている。

生活者としては落第に近い父、ギャンブルにのめりこみ借金を作っている。そしてしっかり物の母、そこに前途洋々に見えた会社を辞めた私が、ビルの管理室で両親と同居を始める。
名画を守り、儲からない映画館を二本立てにして、細々と経営する館主。
始まりはこういうところから。

父が心臓病で入院、バイパス手術をした。
父は強運である。たまたま名医にあたり無事退院した。

管理人室で仕事を手伝っていて、父親のノートを見つける、ビル管理の日誌だったか、映画の感想も書いていた。
素朴な映画日誌は難しい評論ではなく、映画好きの心に響くような、映画への愛が溢れたものだった。
私もちょっとした感想を書いてそのノートに挟んで隠しておいた。

求職活動も巧くいかなかったところに電話が来た。映画雑誌のサイトにあるブログに投稿した記事が、目に留まったのだそうだ。
映画界で功績を残したその会社は今では少人数で発刊する売れない映画雑誌にわずかな足跡を残していた。
そこに採用された。

ブログが認められたのはいいが、ちょっとした感想だったので、投稿人は父の名前から「ゴウ」になっていた。
ところがそれでアクセスが飛躍的に伸びたと言う。
退院後も,ギャンブル、映画を止めない父の「再生改革」に利用することにした。
父はサイト名「キネマの神様」に「ゴウ」と言うニックネームで投稿を開始した。
父はs喜び勇んで書き始めた。
予想外にブロガーの反響が大きく、雑誌の売り上げが、伸びてきた。
そこに退職前の会社でアシスタントをしていた後輩がアメリカで結婚していたが、英語版もどうかといって来た。
彼女の協力で英語版が世界に広がった。
突然、アメリカから辛口の投稿が来た、ニックネームは「ローズバット」と言う。
父は張り切った。それが実に的を得た心に響く記事で、PV数がうなぎのぼり。
本は売れスポンサーがつき大騒ぎになった。

映画を愛する人たちの心温まるてんやわんやは、ちょっとジンとくる。投稿記事は「ゴウ」はもとより「ローズバット」の映画愛が人々の心を動かし、二人の意見は異なることもあったが、それも受けた。
二人は顔を見ないままに心が通うようになる。


面白かった、半日も繋らず読んでしまった。
出てくる映画は、サービスなのかよく知っている物ばかり。

時間があればちょこっと読むにふさわしい、楽しい暖かい本でした。  




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